All Chapters of お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。: Chapter 91 - Chapter 100

101 Chapters

奇襲作戦

  七日間、全くゲームが進行しないのでは、モニターでこちらの戦いを見物している観客からすれば面白くない。  そのため、運営側によって様々な仕掛けが用意されている。  一日目の仕掛けは、領地を手に入れたクラウンが、自分の領地に降りかかる魔物の脅威にどうやって立ち向かうのか?  もちろん、生徒に命の危険が及ぶ場合は助っ人が救出することになっているが、ここに選ばれて参加している選手が簡単に魔物にやられるとは想定されていない。  私がトアやミミのような非戦闘員を選ばなかった理由は、彼女たちに危険が及ぶ可能性があるからです。  バトルロイヤルという競技名に相応しく、クラウンを奪取する場合には、学生同士の戦闘が行われるのです。 「フライ様、ゴブリンがいるの」  偵察に行っていたメムが戻ってきて報告してくれる。夢魔族のメムは、蝙蝠のような黒い羽を持ち、空を飛ぶことができる。 「バクザンとノクスは?」「戦っているの。問題はないと思うの」「そうか。レンナ、一応、応援に向かってくれるか?」「私がゴブリン退治?」「ゴブリンだけで終わらないかもしれないからな」「なるほどね。任せておきな」  メムの案内で、レンナが向かっていく。 「ご主人様、私は?」「ジュリアは、ここで護衛を頼むな。魔物の察知などを頼めるか?」「任せて!」  モフモフのジュリアの頭を撫でてやりながら、魔物の登場にも慌てることはない。セシリアが用意した生徒たちにも、慌てる者は少ない。 「フライ様、ご指示ありがとうございます」「指揮官の務めを果たしただけだよ。セシリアがクラウンなのに、逆
last updateLast Updated : 2026-09-08
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それぞれの動き 1

《side ブライド・スレイヤー・ハーケンス》 与えられた小山を利用して築いた簡易拠点の中央に立ち、我は広げられた地図を見下ろしていた。 眼下に広がる湿地帯と草原。その向こうには岩場や湖、そして森が続いている。 これら全てが敵の陣地として使われている。 運営からの通達によって新たな動きが促され、魔物が出現した。「ブライド様、次の指示をお願いします」 アイクは、今すぐにでも飛び出していきそうな勢いで問いかけてきた。その瞳には忠誠と同時に、この戦場への高揚感が宿っている。「アイク、エドガーが連れてきたゴーレムの視察をしてこい。どの程度使えるのか知りたい」「かしこまりました」「湿地帯のアイスの動きを調べられる奴も派遣しろ」「はっ!」 この戦いにおいて警戒すべき相手は、アイスとフライの二人だ。 それ以外の有象無象などどうでもいい。歯向かうならば倒すまでだ。「アイスが魔物の討伐を行っている間に奇襲できるなら、弓を使える者で奇襲を仕掛けよ。倒せなくても構わない」「なるほど、こちらはゴーレムで攻撃をして、人員はそちらに回すのですね」「そうだ」「かしこまりました」 アイクは鋭い笑みを浮かべて頷いた。「ブライド様、このエドガー、魔物の討伐を喜んで引き受けます!」「ああ、頼むぞ」 今回は、それぞれに与えられた役割がある。エドガーには、傀儡師やテイマーと呼ばれる魔物を使役する役割が与えられている。 自分で戦うことはできないが、ゴーレムに指示を出して戦う特殊な役割であるため、起用してどれだけ使えるのか性能を確認しておきたい。 これは未来に向けた投資だ。「ゴルドフェングが草原からどちらに向かうのかを探るため、偵察も送れ。隣接する二つの派閥には特別に注意を払え。奴は単純だが、奴と兵士たちの力量を考えれば、衝突すると厄介だ。周囲の動きを常に把握しておけ」 我は手元の地図を見つめながら、自らの陣営の動きを整理する。「一番離れた
last updateLast Updated : 2026-09-09
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それぞれの動き 2

《side フリーダム》 オレの名前はフリーダム。 学園都市で自由同盟っていうイカしたチームをまとめてる。 オレたちは束縛が大っ嫌いだ! ってなワケで、今日も好き勝手やらせてもらってるぜ!「おいおい、見ろよ。これがオレの相棒、ラドン様だ!」 オレがドンッと肩を叩いたのは、ラドン――いや、ラドン様って呼ばねえと怒るドラゴンだ。 でっけえドラゴンのくせに、乗り心地は最高なんだぜ! こいつに乗ってるだけで、風がオレを呼んでる気がするってもんだ。「ラドン様、今日も最っ高だなぁ! オレたち自由同盟が、このフィールドで一番目立つ存在だって証明してやろうぜ!」 周りにいる仲間たちが、ゲラゲラ笑いながら頷く。こいつら全員バカだけど、絆だけはマジで強え。なんせ、オレたちは「仲間命」の同盟だからな。「おい、リキヤ! 酒持ってこい! 決起集会だ。ラドン様も喉が渇いてるっつってるから、お前たちのドラゴンにも飲ませてやれよ! エネルギー注入ってな!」「お、おう! 待ってろ、フリーダム兄貴! こいつは新しく仕入れた魔物酒だぜ! ラドン様の喉を潤すにゃ、こいつしかねぇ!」 リキヤが持ってきた樽酒をドバドバ注いでやる。ラドン様は大きな口を開けて、ガバガバと樽ごと飲み干した。その姿に、オレたちは大爆笑だ。 それぞれのドラゴンに酒を注いで、愛情も注ぐ。 オレたち自由同盟は竜騎士っつう、イカした仕事を目指しているからな。相棒は大事にしねぇとな。「やっぱ、ラドン様は飲む量も豪快だよなぁ! んで、ほら見ろ、ラドン様。酒が入ったら気合い入ってきただろ?」 ラドン様は鼻息をブォオオオォッと吹き出し、近くの木を吹っ飛ばす。その勢いに、オレたちはさらに盛り上がる。「ヒュー! 最高だぜ!」「ラドン様がいれば、どんな敵も薙ぎ倒せるっての!」「なぁ、兄貴! クラウン・バトルロイヤルって、何したら勝ちなんだっけ?」「そんなもん簡単だろ! 目の前の奴らをぜーんぶぶっ飛ばして、オレらがこのフィールドの王様になるだけだ! それに、オレらは最
last updateLast Updated : 2026-09-10
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それぞれの動き 3

《side アクアリス・ネプチューナ》 湖の青い水面が朝日を受けて輝き、静かに波を揺らしていた。 湖の周辺には川がいくつも流れ込み、湿度の高い空気が広がっている。この場所は、ブルー・シーの本拠地として理想的な環境ね。「ここが私たちの拠点……悪くないわ」 水が豊富な場所で戦うことで、自分たちの特性を最大限に活かせる。特に、川の流れを利用して敵の動きを制御し、戦局を有利に進めることができるため、我々にとって戦術を展開しやすい。「アクアリス様、全員、配置につきました」 私の側近である戦士が報告に来る。私はゆっくりと頷き、彼らに向き直る。「ありがとう。それじゃあ、作戦を確認しましょう。川の流れを使って敵を誘い込み、分断していくわ。陸に出る場合も、周囲の水源を絶対に見失わないで。ただ、こちらから積極的に動くのではなく、誘い込みなさい」「了解しました!」 仲間たちは力強く頷き、戦場へ向けて動き出す。 彼らの装備は水中戦を前提にしており、私が指揮を執れば、その力を十分に発揮できる。「それにしても……クラウン・バトルロイヤルね」 私は湖の向こうを眺めながら、この戦いには多種多様な思惑が交錯していると感じていた。国からの要請がなければ、参加したくなどなかった。「決着がつくときには、誰か一人の英雄じゃない。手を取り合って、自然と共に生きる道を選びたいものね」 人間や獣人、その他の種族とどのように共存するべきか。それを探るために、私はこの戦いに挑んでいる。「アクアリス様、北の川岸に魔物の気配があります!」 仲間の報告を聞き、私は静かに息を整える。「分かったわ。全員、持ち場を守りつつ慎重に動いて。彼らの動きをよく観察して」 私の指示に従い、部下たちは速やかに配置についた。水の流れを利用した防御と攻撃の準備が整い、私たちのチームは一丸となって敵を迎え撃つ構えを見せた。 ♢《side エスカルーデ》 洞窟の
last updateLast Updated : 2026-09-11
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落とし所を考えるのが大切

 《side フライ・エルトール》 奇襲作戦は成功だね。初日から「ローズガーデン、ここにあり」と、力を示すことはできた。 だが、所詮は最弱の平民同盟を倒しただけと思われるだろう。 平民同盟を率いていたリーダー、セレナーデさんは、三つ編みにメガネをかけた委員長タイプの女性だった。 彼女の采配に無駄がなかったからこそ、奇襲は上手くいった。 平民同盟の陣地を手に入れると同時に、失格になった者以外は、新たな仲間として私たちの陣営に迎え入れることとなった。 これにより、私たちは元々の森に加え、岩場という地形的にも優位な拠点を手に入れることができた。 ただ、少人数で領地を管理することは、あまり得策ではない。 そんなことを考えながら、私は彼らを一つにするための言葉を紡ぐべく、皆を森の広場に集めた。「よく集まってくれた。新たな仲間たちもよろしく頼む。指揮官を務めるフライ・エルトールだ。今後は私の指示に従ってもらうことになる」 私は視線を巡らせながら、柔らかな口調で話し始めた。集まった人々は、元々の仲間と、今回仲間に加わった平民同盟のメンバーたちが入り混じっている。「今後は仲間として協力してもらうつもりだ。ローズガーデンチームは女性が多く、調査や裏方などを務める者も多いため、君たちのような戦える人材には大いに期待している!」 平民同盟のメンバーたちは、まだ少し緊張した様子だったが、期待していると声をかければ、嬉しそうに頬を緩める。「そして、ここにいる皆に伝えたい。僕たちはもう、敵同士ではない。一つの目標を共有する仲間だ。だからこそ、これからの戦いに協力して挑んでほしい。初日を終えて、明日からの戦いに備えよう」 その言葉に、元々の仲間たちの中から賛同の声が上がる。ジュリアが一歩前に出て、モフモフの耳をピンと立てながら言った。「私もそう思うのです! 一緒に戦う仲間が増えるのは嬉しいことなのです!」 ジュリアの明るい声が、場の雰囲気を少しだけ和らげたようだった。「フライの兄貴、あんたについていくぜ!」
last updateLast Updated : 2026-09-12
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面白いやつに会いに行こう

  二日目の朝を迎えた。気持ちのいい朝だ。青空が広がっていて、森の中は静かでいい。魔物の襲撃もなく、穏やかな一日を迎えられた。 お酒を常備するのを忘れたのが悔やまれる。 だが、一週間、もしくはそれより早く決着がつくかもしれないなら、その期間だけでも禁酒としよう。 さて、人数は最も多く、陣地も二倍に増えた。 そして、落とし所は昨日のうちに話し合った。 このままゆるりと待っているだけでも良さそうに思えるが、それではつまらない。「ゲームを運営だけが動かすなんて、つまらないことはしないよね。僕は遊びが好きで、適当にこの世界を謳歌すると決めたんだ」 自分の死が待っているとしても、その時まで楽しく過ごして満足したい。 運営側から、クラウン・バトルロイヤルの二日目の説明が届いた。『参加者各位、これより特別ルールを発動します。代表者戦を実施します。各チームの代表者を選出し、中央エリアにて戦闘を行ってください。勝者は、敗北した代表者が属するチームのメンバーを配下として獲得します』 この発表により、中央エリアに進むための動きが活発化する。「代表者戦か……面白いけど、参加する必要はないよね。バクザン、平民同盟の中から一人を選んで参加させてあげて」「いいんですか?」「ああ、勝つ必要はないからね」「分かりました!」 ノクスが眉をひそめる。「いいんですか? 俺が出ても」「いいんだよ。ただの余興だからね。平民同盟の子に注目を集めさせてあげよう」 ノクスの肩を叩いて、今回は出番がないと伝える。「僕たちが中央に向かって戦うなら、他のチームの注目を集めるだけだよ。みんなが殴り合いを始めている間に、僕たちは別のことをする」「別のこと?」 そう言って、私は地図を広げ、指で自由同盟の陣地を示した。「自由同盟だな。フライの兄貴、いよいよ乗り込むのか? 初日は随分と暴れていたみたいだぜ」 バクザンが嬉しそうに拳を鳴らす。
last updateLast Updated : 2026-09-13
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面白いやつとは友達になろう

  ラドンが咆哮を上げ、フリーダムがその背に立つ。 その手には巨大な槍が握られ、威圧的な視線が私を射抜いていた。自由同盟のメンバーたちは周囲に散らばり、この決闘を固唾を呑んで見守っている。「ラドン様とオレが相手だ。これで勝てると思ったら大間違いだぜ!」 フリーダムが笑いながら槍を振り上げた。その姿には、自信と誇りが滲んでいる。「うん、いいね。やっぱり竜騎士ってかっこいいや。ファンタジーって感じがして楽しいね。やっぱり、こういうのってワクワクするんだよね。さて、どちらにも挨拶をさせてもらうよ」 私は静かに、その辺で拾ってきた木の棒を構え、ラドンの動きを見据えた。 ラドンが太い足で地面を蹴り、戦車が向かってくるような迫力で突進してくる。その巨体が影を作り出し、私たちの周囲を覆い隠すような錯覚を与える。「ラドン! やっちまえ!」 フリーダムの指示で、ラドンがその鋭い爪を振り下ろしてきた。一撃が地面を揺るがし、砂煙が立ち上る。「ふむ、迫力があるね。でも、君たちのリズムは単調すぎるよ」 私は軽やかに動き、爪の一撃をかわす。その間に木の棒を振り、ラドンの前足に軽い傷をつけた。「ぐおおおおお!」 ラドンが痛みを訴えるように叫ぶ。その隙を見逃さず、私は一気に距離を詰める。「フリーダム、君もそろそろ動くべきじゃないかな?」 私は微笑みながら、彼に声をかける。「クソッ!? ラドン様の動きを余裕で躱しやがって! 調子に乗るなよ!! ラドン様の動きにオレの攻撃が加わることで、オレたちは完成するんだ!」 フリーダムがラドンの背から飛び降り、地面に着地する。槍を構え、私に向かって突撃してきた。 その槍を躱していると、ラドンが背後から巨大な尻尾を振って攻撃を仕掛けてきた。「力で証明するってのは、こういうことだろうが!」 フリーダムが槍を振り回し、猛然と襲いかかる。その動きに合わせて、ラドンが荒々しく尻尾や爪を振るう。 それらの一撃一撃が重い。人とドラゴンが共闘
last updateLast Updated : 2026-09-14
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考えてみれば、僕も敗北者

  ローズガーデンの陣地内。  そこには予想外の来訪者が待っていた。 アクアリス・ネプチューナ。 その名前を聞けば、誰もが一目置く存在だ。鯨族の人魚姫であり、蒼海歌《ブルーシー》派閥のリーダーを務める彼女は、その美しさと強大な魔力で知られている。 彼女は、私のクラウンであるセシリアや、護衛を務めるエリザベートと共にお茶を飲んでいた。その光景は、場違いなほど優雅で平和的だった。「お帰りなさいませ、フライ様」 セシリアが微笑みながら立ち上がる。エリザベートも少し笑みを浮かべているが、どこか警戒心を隠しているようだった。「やあ、ただいま。二人とも」「フライ様、お帰りなさいませ」「フライ様」「うん。どうやら来客を待たせてしまったようだね。アクアリス・ネプチューナ様が来ているとは聞いていなかったけれど、これは光栄だ」 私は彼女たちの座るテーブルに近づきながら、軽い調子で言った。アクアリスは立ち上がり、私に向かって小さく礼をする。その仕草は気品に満ちていた。「突然の訪問、無礼をお許しください。少しお話ししたいことがありまして」 彼女の冷静な声は耳に心地よかったが、同時に計算されたような冷ややかさも感じられる。「それは嬉しいね。けれど、貴族や派閥のリーダー同士がこうして会う場合、普通は少し緊張感が伴うものだ。でも、君は随分とリラックスしているみたいだね」 私は彼女の意図を探りながら、笑顔で答えた。「ここに来た時、貴方の陣地を制圧することもできました。でも、それをしなかったのは、貴方と直接話したかったからです」 アクアリスの言葉に、一瞬、周囲の空気が引き締まった。エリザベートの眉がピクリと動き、セシリアが穏やかに微笑みながらも視線を鋭くする。「へえ、つまり意表を突かれたってことか。だけど、なぜ話をしたいなんて思ったんだい?」 私はその言葉の裏にある意図を探るように、彼女を見つめる。アクアリスは一瞬だけ間を置き、再び穏やかな声で答えた。「興味があったの
last updateLast Updated : 2026-09-15
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それぞれの動き

 《side ブライド・スレイヤー・ハーケンス》 二日目の代表者戦でアイクが勝利したことで、捨て駒を手に入れた。「貴様たちは、我のために死ねることを本望に思え! 今から作戦を実行する!」 小高い丘から、我は草原を見ていた。 草原に響く咆哮が風に乗り、戦場に緊張をもたらす。 ロガン王子の金色のたてがみが陽光を受けて輝き、彼の鋭い爪は捨て駒たちを次々と斬り裂いていた。だが、我が顔には冷たい微笑みが浮かんでいる。「獅子の王よ……その誇りが疲弊に変わる様を見届けるとしよう」 先ほどの代表者戦で配下に加えた新たな兵たちは、種族も様々で、その中には凄まじい力を持つ者もいた。 竜人族を配下に持てたことは光栄だ。だが、彼らは元々、平民同盟や弱小派閥の一員だった者たちだ。 実力はまちまちだが、それが問題なのではない。信用できないだけだ。 だからこそ、彼らの役割はただ一つ。ロガンの体力を削る捨て駒となること。 ロガンは戦場の中心で咆哮を上げながら、猛然と敵を薙ぎ払っている。その姿は獅子そのものだ。だが、その動きには徐々に疲労の影が見え始めていた。「エドガー、次の駒を前に出せ」 我が冷たく指示を飛ばすと、側近のエドガー・ヴァンデルガストが動く。エドガーはゴーレム製造の第一人者であり、我が軍の戦略において重要な駒だ。「御意。粗野な獣人相手には、これで十分でしょう」 エドガーが錆びた鉄片を空中に放り投げる。それが瞬時に組み上がり、巨大なゴーレムへと姿を変える。ゴーレムはゆっくりとした動きで前進を始め、地面を揺るがす。「ふん、そんな鉄の塊で俺を止められると思うのか!」 ロガンが咆哮を上げ、前方のゴーレムに突進する。その爪が鋼鉄の腕を一撃で斬り裂き、ゴーレムの体が崩れ落ちる。「思った通りだ。単純な力だけで全てを解決しようとする、愚かな獣だな」 エドガーが冷笑を浮かべる。崩れたゴーレムの背後から、さらに三体のゴーレムが姿を現す。それらは連携して動き、
last updateLast Updated : 2026-09-16
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それぞれの動き 5

《side アイス・ディフェ・ミンティ》 湿地帯の朝はいつも霧が濃い。草葉の露が靴を濡らし、地面から立ち上る湿気が肌にまとわりつく。この場所を拠点にしたときは、守りが容易だと喜んだ。 だが、それが今になって裏目に出るとは思っていなかった。「……まずいな」 僕は地図を広げ、戦況を再度確認する。 隣接するのはブライド皇子の領地。あの男の動きは計算外だった。獣人の陣地を手に入れたことで勢力は増し、次に攻め込む先を選ぶ余裕がある。 彼がこちらに目を向ければ、この湿地帯は戦場として最悪だ。 だが、それ以上に問題なのは……。「自由同盟が、フライ・エルトールに取られた……」 僕は呟き、苛立ちを覚える。 自由同盟のフリーダムは実力者であり、彼を取り込むことでブライドに対抗する戦力となるはずだった。だが、フライが動き、彼らを丸ごと受け入れてしまった。 これでは、僕が使える戦力が限られてしまう。「竜人族か……」 地図上の竜人族の陣地に目をやる。だが、竜人族は強さを何よりも重視する種族だ。彼らに頭を下げて同盟を持ちかけても、見返りを示さなければ何も得られないだろう。戦力を貸すどころか、こちらが試されるだけで終わる可能性が高い。 残された選択肢は一つ。 海人族だ。アクアリス・ネプチューナ。彼女は強力な魔法を操り、知性と義侠心を持つことで知られている。この状況を覆すには、彼女との同盟が必要だ。 僕は湿地帯を抜け、海人族の陣地へ向かう。広がる川辺と湖が静けさをたたえ、その奥に海人族の拠点が見えた。アクアリスの姿を確認すると、僕は心の中で息を整えた。「アイス・ディフェ・ミンティ王子、どういったご用件で?」 アクアリスは湖畔に立ち、静かな微笑みを浮かべながら僕に問いかけた。その落ち着いた態度は、こちらの焦りを見透かしているかのようだ。「あなたと同盟を結びたい」 僕は短
last updateLast Updated : 2026-09-17
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