All Chapters of お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。: Chapter 71 - Chapter 80

101 Chapters

僕もしたいことがある。

  もしも、誰かが悪いことをしようとするときには、常に後ろめたい感情がどこかで生まれてしまう。 僕はあまり人の感情を見ないようにしてきた。それは見ようとしても見えないものであり、それでいて見ようとすると間違うこともあるからです。 だけど、その気持ちを持たないように、たくさんの人たちの感情が介入して入り乱れ、わからないようにしているなら、逆にどんなものなのか見たくなってしまう。 その悪いと思う行動や感情が失われて、わからなくなってしまった答えを追い求める。 では、どうすれば、そのわからない感情を見つけることができるのか? そう考えたとき、一つ一つのピースを揃えて、パズルを組み上げるように、答えを見つけるしかない。 バクザンがもたらしてくれたリベルタス・オルビスという言葉、自分が知り得る小説の知識。そして、フィル爺さんの警戒する表と裏は同じだという思い。 それらのピースを合わせる作業が必要になる。 だから、久しぶりに地下迷宮を訪れました。 鼠人族の生活圏であるこの場所は、以前よりも活気づいているように見えます。 水脈が流れ、薄明るい光が迷宮全体を照らしている。フェスティバルの影響で、学園都市全体の人口が増えて、鼠人族たちが行き交い、仕事も忙しくなっています。 僕は、その中でミミを探しました。 彼女は実家に戻って、お仕事の手伝いをしているからです。 彼女は確かに僕のところに来て、外の世界を知るための努力をしています。ですが、それは迷宮を捨てたわけでも、迷宮の者たちを見捨てたわけでもない。 こうして、忙しいときには手伝いに来る。 そんな可愛らしいミミの姿を見つけるのに時間はかからなかった。「ミミ、ちょっと話があるんだけど、いいかな?」 僕が声をかけると、ミミは驚いたように耳をピクピクと動かしながら振り返った。「フライ様? どうしてこちらに……また、迷宮を見学したいのですか?」 彼女は少し戸惑いながらも微笑む。以前と同じ控えめな様子だが、その目
last updateLast Updated : 2026-08-24
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グラディエーターアリーナ決勝戦 前半

  グラディエーター・アリーナの決勝戦がついに幕を開けた。 アリーナ全体が異様な熱気に包まれ、観客席からは大歓声が湧き上がる。 僕はエリザベート、ジュリア、アイリーンと共に、特等席から試合を見守っていた。「いやぁ、ここまで来ると誰が優勝するか分からないね」 僕は目の前の広大なアリーナに視線を向けながら呟いた。それぞれの選手が入場してくるたびに、観客たちの声援がさらに大きくなる。「そうですわ。これだけの猛者たちが揃うと、どの試合も見応えがありますわね」 エリザベートが優雅に扇を揺らしながら答える。ジュリアは手を握りしめ、緊張した面持ちで選手たちの姿を見つめていた。「ご主人様……王子は強いのですか?」「王子? ロガン王子のことかな? うん、強いよ。でもね、決勝戦ともなると全員が全力を出すから、勝負は最後まで分からないさ。それに勝ち上がりのトーナメント方式だから、一回戦で当たる相手に消耗させられると、準決勝、決勝と勝ち進むうちに消耗してしまうからね」 僕はジュリアの肩を軽く叩いて微笑んだ。「さぁ、いよいよ第一試合の開始です! 最初の組み合わせは《獅子王》ロガン・ゴルドフェング選手対《蒼炎の魔剣士》セリーナ・シルヴァ選手! 王者の風格と精霊族の優雅さが激突する一戦です!」 実況ちゃんの声が響き渡り、観客たちが一斉に沸き立った。 第一試合:ロガン vs セリーナ アリーナ中央で対峙するロガンとセリーナ。 ロガンは獅子のような堂々とした姿勢で立ち、セリーナはその対角線上で剣を構え、冷静にロガンを見据えている。「一年次で優勝候補とは凄いのね。ロガン王子」「精霊族の戦士セリーナだな。本気で俺に勝つつもりか?」「当然よ。あなたが王子だろうと、ここでは全員平等ですもの」 セリーナが剣を振り上げると同時に、鮮やかな青い炎が剣先に宿る。その光景に観客席がどよめく。「きたな……ならば、全力で応じよう!」 ロガンが
last updateLast Updated : 2026-08-25
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グラディエーターアリーナ決勝戦 中編

  アリーナでは試合が進むにつれ、熱気と興奮が最高潮に達していた。それぞれの戦いが繰り広げられる中、観客たちは次に訪れる試合の行方に息を呑む。 準決勝:ロガン vs ドラガ「次の試合は、獣人王国の《獅子王》ロガン・ゴルドフェング選手と、《鉄の竜槍》ドラガ・ヴォルケン選手の対決です! どちらも力と技を兼ね備えた猛者! 一瞬たりとも目が離せませんよ~!」 実況ちゃんの元気な声が響く。 ロガンとドラガがアリーナ中央で対峙した瞬間、観客席からどよめきが起こる。 ロガンは相変わらずの堂々たる姿勢で、ドラガはその豪槍を構えながら闘志をみなぎらせている。「おい、竜人族の兄ちゃん。お前も王族の血筋か?」「いや、ただの戦士だ。だが、勝利のために戦うのは俺たちの誇りだ!」 ドラガが槍を振りかざし、ロガンへと突撃する。その槍さばきは鋭く、獅子王ロガンの素早い動きを封じるような連続攻撃を繰り出した。「ドラガ選手、攻めて攻めて攻めまくる! ロガン選手、どう出るのか!?」「すごい! ドラガ選手、本当に強いっチュ!」 ミミが思わず声を上げる中、ロガンは槍をかわしながら距離を詰める。そして、一瞬の隙を突いてドラガの槍を掴み、全力で振り払った。 僕たちはアリーナの中を下へ下へと降りていた。アリーナの内部では、奥に入らない限りは試合の観戦ができてしまう。「これで終わりだ!」 ロガンの拳が炸裂し、ドラガは地面に叩きつけられる。観客席からは歓声が沸き起こった。「勝者、ロガン・ゴルドフェング選手!」「ロガン王子だな! 力も技も圧倒的だ」 僕は素直に勝利に感心した。 準決勝:ノクス vs バクザン「続いての試合は、《無名の剣士》ノクス選手と、《雷鳴の豪拳》バクザン選手。鬼人族の若き戦士で、豪快な拳闘スタイルを持つ、剣と拳の対決に注目です!」 ノクスは剣を構え、静かにバクザンを見つめる。一方でバクザンは余裕の笑みを浮かべながら、拳を打ちつけた。「小僧、鬼人族と戦うのは初めてか?」「ああ、だけど負けない」「くくく、いいねぇ、その目にそそられる。だが、兄貴からの依頼だ。お前に負けるわけにはいかないんだよ」 バクザンが放った拳がアリーナ会場の床を割る。だが、ノクスは冷静に一つ一つの拳を見極めて、その全てを紙一重でかわしていく。接近戦で繰り広げられる二人の戦いは、準決
last updateLast Updated : 2026-08-25
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グラディエーターアリーナ決勝戦 後半

  怯えるミミに剣を向け続ける彼らを許せるはずがないよね。「ねぇ、彼女は怯えているんだ。武器を下ろしてくれないかい?」「黙れ! 貴様らは目撃したことを不運に思うんだな!」「そうか、交渉は決裂だね」 重力魔法を発動し、目の前の武装した集団を押さえ込む。「頭が高い! 僕に牙を向けるな」 僕は軽く笑いながら、周囲を見渡す。武装集団は、一斉に床に押さえつけられ、動きを封じられていた。彼らの表情には動揺と恐怖が見て取れる。「フライ様、すごいです……! 本当に一瞬で……!」 ミミが驚きと尊敬の入り混じった声を漏らす。僕は彼女に目配せしながら続けた。「ミミ、少し離れていなさい。ここからは僕一人で大丈夫だから」 彼女が頷き、一歩引くと、僕は床に押さえつけられた男たちに近づいた。「さて、君たちがリベルタス・オルビスだと聞いたけど、それで間違いないかな?」 僕の問いに答える者はおらず、沈黙だけが場を支配する。しかし、その一人の肩が微かに震えているのを見逃さなかった。「なるほど、そういうことか」 僕は彼の近くに膝をつき、冷たい声で囁いた。「僕は君たちをここで捕まえて終わりにしたいだけなんだ。でも、それ以上のことを望むなら、そうなるかもしれないよ?」 その瞬間、遠くから駆け寄る足音が聞こえてきた。振り向くと、そこには剣を構えたノクスの姿があった。「どうして君が?」「何をした!?」 こちらの話を聞く気がないようだね。「……お前がやったのか?」「僕の質問には答えないのに、質問かい?」 ノクスの低い声が響き渡る。彼の目は怒りに燃え、その視線は僕を射抜いていた。「うるさい! 貴様は貴族だろ?! 俺たちの邪魔をしやがって!」 どうやら僕の見た目で貴族と判断した上で怒りを覚えたようだ。彼の沸点はよく分からないね。 
last updateLast Updated : 2026-08-26
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グラディエーター決勝戦

 《sideバクザン》 学園都市最大の注目を集める《グラディエーター・アリーナ》の決勝戦。 そこに立つ俺、鬼人族のバクザンは、全身の血が熱く滾るのを感じていた。対する相手は、獣人王国の王子、《獅子王》ロガン・ゴルドフェングだ。 観客席からは歓声が渦巻き、アリーナ全体が震えるような熱気に包まれている。 そんな中、ロガンが悠然と姿を現した。金色のたてがみが光を受けて輝き、その堂々とした立ち姿には威厳がある。だが、俺も負けてはいない。 筋骨隆々とした鬼人の体格で、観客席の視線を一身に集めていた。「やっとお前と戦えるな、バクザン。お前が裏の者であることは分かってんだよ。だけど、今日は純粋な戦いだ。そうだろ?」 ロガンが静かに口を開いた。その声には自信が満ちている。「おう、そうだ。本来なら、俺の目的は決勝戦に出場することだけだった。だが、俺にも優勝しなくちゃいけない事情ができてな。ロガン王子様よ。勝つのは俺だ」「いいだろう。その言葉、最後まで守れるか確かめてやる」 俺たちの視線が交差した瞬間、鐘の音が響き渡り、決勝戦の幕が上がった。 ロガンが一気に間合いを詰めてきた。その動きは獣人らしく俊敏で、鋭い爪が俺の胸元を狙う。「ほぅ、速ぇな!」 だが、俺の拳も負けちゃいない。爪をかわしつつ、一発を叩き込む。拳と爪がぶつかり合い、火花が散った。「お前、ただの鬼人じゃねぇな。戦場でどれだけ腕を振るってきた?」「そういうお前も、ただの王子様じゃねぇようだ。これなら楽しめそうだ!」 一進一退の攻防が続く。 ロガンの動きはまるで獣そのものだ。 爪で斬り裂き、鋭い蹴りを繰り出してくる。一方で俺は、その全てをギリギリで受け流し、反撃の拳を放つ。 どちらも一撃で勝負を決められる自信がある。だが、それを許さない相手同士だ。「お前の動き、キレッキレだな。だが、まだ甘い!」 俺は間合いを詰めると、強烈なアッパーをロガンの腹に叩き込む。だが、奴はそれを耐え抜き、逆
last updateLast Updated : 2026-08-27
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敗北と暴力の果てに

《sideノクス》 重い……体が動かない。 目を開けようとしても、瞼が鉛のように重たくて開かない。肩には鋭い痛みが残り、胸にこみ上げてくるのは、自分が敗北したという屈辱だった。 最後に見たのは、俺の肩を剣で貫いた貴族の顔だ。 切っ先が肉を貫き、全身から力が抜け落ちていく。地面に崩れ落ちた俺は、そのまま意識を手放した。 ゆっくりと目を開ける。 ぼやけた視界が徐々に焦点を結び、見慣れない天井が目に入った。 寝たこともないような高級なベッドだ。 柔らかな寝台の上に横たわり、肩には包帯が巻かれている。あれほど酷かった痛みも、ずいぶん和らいでいた。「治療を受けたのか? それに、ここは……どこだ?」 体を起こしてみると、思っていたよりも軽く動いた。傷が塞がりかけているのだろう。 だが、それ以上に理解できない。 どうして俺が、こんな場所で寝かされている?「目が覚めたみたいだね」 声に反応して顔を上げる。 部屋の扉を開けて入ってきたのは、俺を倒した貴族だった。 あのときと変わらない穏やかな表情で、こちらを見ている。「お前……どうして……?」 言葉が続かなかった。 俺はこいつに牙を向けた。それどころか、本気で命を奪おうとした。 それなのに、どうして俺を治療した?「まずは自己紹介をしておこうか。僕はフライ・エルトール。帝国のエルトール公爵家、その次男だ。君が嫌う貴族として生まれた」 貴族という言葉を聞いただけで、拳に力が入った。「君の名は?」「……」「言いたくないか。まぁ、《グラディエーター・アリーナ》の決勝に残っていたから知っているよ。ノクス」 黙っていても意味がないことくらい分かっている。 それでも、貴族と馴れ合うつもりはなかった。「君たちの計画は失敗した。それと、君があまりにも無防備に倒れていたからね。放っておくのも忍びなかった。敵意を持たれているのは分かっているけど、怪我人を見捨てるのは性に合わないんだ」 その言葉に、無性に腹が立った。 貴族のくせに、善人ぶりやがって。「何が性に合わないだ。貴族のお前が平民を助けるなんて、裏があるに決まってるだろ」「裏か……裏があったのは君の方じゃないかな? リベルタス・オルビス」「っ!?」 どうして、こいつがその名を知っている? 俺たちは秘密裏に動いていた。構成員が誰なの
last updateLast Updated : 2026-08-27
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拷問の時間です

 《side アイリーン》 私は、またフライ様にチャンスをいただくことができました。「アイリーン、実は秘密裏に捕まえた者たちがいてね。そいつらの処遇を任せたいんだ」「私でよろしいのですか?」「うん。ダメだった?」「ダメではありません! お引き受けします」「よかった。よろしく頼むね」 あぁ、フライ様、フライ様、フライ様! あなたこそが至高のお方。 任せられた私はすぐに人を手配して、行動に移りました。 地下迷宮の空気は湿り気を帯び、時折どこからともなく滴る水音が聞こえる。まさに、捕らえた者たちに心理的な圧迫を与えるには最適な場所ですわ。 私は牢の前で足を止め、中にいる二人を見つめました。 一人は若い男、アレン。 そして、もう一人は今回の事件を指示していたリーダー格の男、ダリル。 どちらもリベルタス・オルビスの構成員として動いていた人物です。「ふふ、幸せですね。フライ様にこのような大役をいただけるなんて。さて……これからあなたたちと少しだけお話をする時間よ」 私が扉を軽くノックすると、二人の視線がこちらに向く。私の姿を見て、アレンは怯えた目を向けてきた。失礼な瞳。 ダリルは鋭い視線を投げかけてきた。「俺たちをこんな場所に閉じ込めて、一体何をするつもりだ?」 ダリルが低い声で脅してきた。その声には威圧感があったけれど、私の耳にはただの強がりにしか聞こえない。「何をするつもりかって? フライ様から預かった以上、きちんとした情報を聞き出さなきゃいけないの。だから、あなたたちには協力してもらうわ」 私はにっこりと笑いながら牢の扉を開け、中に足を踏み入れる。二人の間合いに入ると、アレンは息を呑み、ダリルは眉をひそめた。「協力? 俺たちがそんなものに応じるとでも思ってるのか?」「応じるわよ。だって、応じなければどうなるか、教えてあげるから」 私はゆっくりと腰を下ろし、二人を見つめる。「ま、まぁ、お前がその気なら」 私の微笑みに対して、変な勘違いをしたようね。「さぁ、どちらから始めようかしら? アレン、あなたはおとなしく答えてくれるかしら?」「俺は……何も知らない! 本当だ!」 アレンが慌てて声を上げる。その様子に、私は小さく笑った。「そう? じゃあ、試してみましょうか。あなたが何を知っているのか」 私は彼に近づき、彼の顔
last updateLast Updated : 2026-08-28
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酒場を教えよう

 《side フライ・エルトール》 学園都市の喧騒がようやく落ち着き始めた夜。 私はノクスを連れ出した。 他の者たちはアイリーンに任せることにして、聖痕を持つノクスを野放しにできないと判断して、私の近くに置いている。 監視の意味を込めているが、いつまでも閉じこもってばかりでは息が詰まる。 だからこそ、私の従者として、酒を飲みに行くことにした。彼とは地下でのあの一件以来、少し距離が縮まったように思えるけれど、まだまだ彼の心には堅い壁があるようだ。「こんな時間に酒場に行くなんて、貴族の道楽か何かなのか?」 ノクスは少し眉をひそめながら、私の後ろを歩いている。「いやいや、違うよ。僕の道楽はもっと控えめさ。戦場を歩いた後に飲む一杯が、どれだけ美味しいか知ってるかい?」「戦場……」 彼は私の言葉に反応して、一瞬黙り込む。血と汗と泥にまみれた日々を思い出しているのかもしれない。だが、そんな暗い顔をされると、こっちまで気が滅入る。「ノクス、今日は戦場の話は抜きにしよう。酒場は楽しく笑う場所だ。それに、君も楽しむべきだよ。ほら、もうすぐ着く」 私は彼を促しながら、学園都市の外れにある小さな酒場に足を踏み入れた。 扉を開けると、暖かな明かりと賑やかな笑い声が迎えてくれる。木製のテーブルと椅子が並び、様々な種族の人々が酒を飲み交わしていた。 獣人、エルフ、ドワーフ、そして人間……それぞれが楽しげに談笑している。「おい、フライ! いつもの席、空いてるぜ!」 奥から店主が手を振る。私は笑顔で応じて、ノクスを連れてその席へと向かった。「なんで貴族のあんたがこんな場所に?」 普通の平民や旅人が集う酒場に私が行くとは思わないようだ。ノクスが不思議そうに聞いてくる。「酒場に貴族とか平民とか関係ないよ。ここはただ、美味しい酒と料理、そして笑い声がある場所さ」 店主が持ってきたエールを手に、私は一口飲む前にキンキンに冷やす。喉を潤す冷たい感触と共に、体中に活力が満ちていく。「さぁ、ノクス。君も一杯どうだい?」「俺は……そんなに酒に強くない」「関係ないさ。まずは一口飲んでみなよ」 私は彼にエールのジョッキを差し出す。渋々受け取った彼が一口飲むと、眉をひそめた。「冷たい! ……しかも美味い!」「ハハハ! 最初はそうだろう、そうだろう。でも、これが戦い
last updateLast Updated : 2026-08-29
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聖痕持ちは側におきたいよね

 《side フライ・エルトール》 ノクスと酒場巡りを終えた翌日、私は彼の素性を探るため、アイリーンに頼んだ調査の結果を聞いていた。「フライ様、お待たせいたしました。ノクスの素性について、調査が終わりました」 アイリーンが差し出した書簡を受け取り、中を確認する。そこに記されていた内容は、想像以上に重いものだった。「ノクスは、かつて王国の農村で生まれ育ったようです。その村は貴族の厳しい税徴収に苦しみ、結果的に反乱と見なされて滅ぼされたそうです」「……それで、彼の両親は?」「その時には生き残ったようですが……」「そうか、それで貴族を恨むようになったのか」 小説には、辛い過去を持つとしか書かれておらず、ノクスの貴族への嫌悪感を生み出した出来事について知らなかった。「そして、幼かった彼と妹だけが生き残ったようです。妹は教会に預けられ、ノクス自身は放浪の末に、リベルタス・オルビスに参加したようですね。学園都市へやってきたのは、任務の一環なのではないかと思われます」 私は報告書を閉じ、目を閉じて考えた。 貴族というだけで嫌われる理由があるのか……彼にとって、僕もその“敵”の一人に見えていたのだろう。「ありがとう、アイリーン。これで彼の気持ちも少しだけ理解できた気がするよ」「フライ様……彼に対してどうされるおつもりですか?」 アイリーンが問いかける。私は少し考えた後、答えた。「できれば、側に置きたい。だけど、僕は権力を持っていないからね。彼の監視をしながら、仲間に引き入れられたら御の字かな。まずは彼と話をして、友人になれるように頑張るよ。たぶん、彼の過去の出来事があるなら、貴族である僕のことを最初は嫌がるだろうけど……」「フライ様」「うん?」「今回のご褒美をいただきたいです」 アイリーンが私の膝に腰を下ろした。甘い香りが鼻腔をくすぐり、美しい瞳が私を見つめる。私よりも一つ年上のアイリーンは最近、妖艶さを増している。 エリザベートが高潔な貴族令嬢なのに対して、アイリーンは普段はほんわかしている雰囲気から、こうして二人きりになると妖艶さを醸し出す。 彼女から向けられる好意に気づいてはいますが、公爵家次男として、彼女を受け入れることはできません。 彼女にも貴族の令嬢としての立場がある以上は、責任が取れない。「甘やかすだけだよ」「もちろ
last updateLast Updated : 2026-08-29
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第一回人物紹介

  前書き どうも作者のイコです。  登場人物が増えてきたので、この辺りで整理しようと思います。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 登場人物紹介 1. フライ・エルトール 本作の主人公 所属/立場:帝国公爵家の次男 特徴:転生者。かつて読んだ小説の世界に転生し、将来起きるとされる戦争を知っているため、幼少期から自分を鍛え上げるも、飛び抜けたチート能力はなく、自身を「平凡」と感じている。物語の主人公ならもっと凄いはずと思って、自分を凄いとは思っていない。それが様々な勘違いを巻き起こす。 性格:温厚で冷静。どんな相手とも分け隔てなく接する懐の深さを持つが、肝心な場面では芯の強さを見せる。 背景:学園都市に通い、公爵家の次男として自由に振る舞っている。 2. エリック・エルトール フライの兄 所属/立場:帝国公爵家の嫡男、魔塔所属  特徴:魔法の才能を持ち、全属性の魔法を操る秀才。学園を卒業後、魔塔で魔法研究に専念している。 性格:冷静でクールな印象だが、弟であるフライのことが大好きで、フライを自分以上の天才だと思って公爵家を譲ろうと考えている。 3. エリザベート・ユーハイム 帝国伯爵家の令嬢 所属/立場:フライの義姉  特徴:華麗で聡明だが、表裏のある振る舞いをする。姉アイリーンの病気治療のため、エルトール家に嫁ぎ、資金援助を求める。だが、初めてフライに出会った際から淡い恋心を持っている。 性格:強気でプライドが高い反面、家族想いな一面もある。小説の中では悪役令嬢として描かれているが、本質は誠実。 4. アイリーン・ユーハイム エリザベートの姉 所属/立場:フライに心酔する従者  特徴:幼少期から「魔力欠乏症」に苦しんでいたが、フライの治療によって病を克服。彼に絶対的な信頼を寄せている。ユーハイム家は帝国の裏情報を扱う組織を作
last updateLast Updated : 2026-08-30
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