All Chapters of お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。: Chapter 61 - Chapter 70

101 Chapters

グラディエイター予選

  第一競技として、最初の一週目に行われる《グラディエーター・アリーナ》。 学園都市の様々な場所で、参加した者たちが1対1の決闘を行って競い合う。 反則として、以下のものがある。 ・多勢での襲撃(戦いは1対1であること) ・決闘中の横槍(妨害行為と見做された場合は即失格) ・審判のいない場所での決闘は無効(誰もいない場所での決闘は禁止) 反則や無効となる判断はいくつか存在するが、この競技の見どころは単なる力比べではなく、種族ごとの異なる「個性」をどう生かすか、そこに尽きる。 観客となる学園都市にやってきた者たちに自分の力をアピールする。 それは今後の就職や選びたい道に繋がることになる。 勝負に負けたとしても目立った者には注目が集まり、祭りは大いに盛り上がる。 予選では三勝した者が勝ち上がりとなり、誰が勝ち上がれるのか予想する。 予選の予想と、決勝の予想の二つが賭け事として行われる。 グラディエーター・アリーナの開始日を迎え、学園都市全体が異様な熱気に包まれていた。「決闘の勝者を予想するのって、面白いね」 僕はジュリアとエリザベート、アイリーン、そしてレンナと共にアリーナの観客席で、予選の様子を見守っていた。 グラディエーター・アリーナは、参加者が1対1の決闘を通じて自らの力を示し、勝者だけが栄光を手にする競技だ。しかし、ただの力比べではない。 魔道具の使用や、魔法の使用も認められている。 戦闘スタイルや種族特有の能力が勝敗を大きく左右するため、観客にとっては驚きと感動の連続だ。「さぁ、フライ様。今回の優勝候補は誰だと思いますの?」 エリザベートが興味津々の表情で尋ねてくる。「うーん、僕としては予想するのは難しいな。参加者の中には、全く知らない実力者もいるからね。強さだけならロガン王子だろうし、魔法を使って戦略を組み立てれば、アイス王子なども候補に入るかな。それにまだ力を見せていない強者もたくさんいるからね」 僕がそう言うと、ジュリアが少し不満げに口を挟んだ。「ボクはご主人様が参加していたら、間違いなく優勝だと思うのです!」「いやいや、僕は平凡だから無理だよ。それに、こういうのは見る方が楽しいんだ。賭け事は参加してしまうとフェアじゃないからね」 ジュリアがプンプンと頬を膨らませる一方で、レンナが肩をすくめた。「でも
last updateLast Updated : 2026-08-19
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下剋上

  グラディエーター・アリーナの予選も終盤に差し掛かり、学園都市は大いに盛り上がっていた。「キンキンに冷やすと飲みやすいのですね」「アリーナ内は暑いからね」 僕は、みんなに飲み物を提供して、キンキンに冷やしてあげた。僕はもちろん、エールに、今日はフランクフルトを片手に持ってモニターを見ていた。 戦いの模様は学園都市中に設置されたモニターに映し出され、多くの観客が次の勝者を予想して賭けに熱中していた。 エリザベートやジュリア、アイリーン、レンナたちも、それぞれの戦いに熱が入り、観客席に陣取り、応援しながら試合の行方を見守っていた。「次の試合は、三年次のレオポルド・シュトラウス選手と、一年次のノクス選手です!」 実況者の声が響き渡り、会場がざわつく。「レオポルド選手は過去の大会で決勝進出を果たした実力者です。正統派の剣術の使い手であり、一方でノクス選手は、ここまで勝ち上がるだけでも奇跡とされる無名の一年生剣士だ!!!」 剣士同士の戦いではあるが、筋骨隆々な体格を持つレオポルド選手。 それに対して、発展途上の体格をしたノクス選手。「さすがにレオポルド選手の圧勝でしょうね。ノクス選手が勝てるとは思えませんわ」 エリザベートが予想を述べると、ジュリアは少し眉をひそめた。「でも、ノクス選手もここまで勝ち上がってきたのです。実力があるからじゃないですか?」「ジュリア、それはただの偶然よ。一年次が三年次の実力者に勝つことは難しいわ。この年代の一年や二年の差は凄く大きいもの。あり得ませんわ」 エリザベートがきっぱりと言い切る中、僕は賭け票を見せながら微笑んだ。「僕はノクスに賭けたよ」「えっ!?」 エリザベートが驚いた様子で僕を見る。ジュリアは嬉しそうに微笑んだ。「フライ様、本気ですの?」「もちろん、波乱が起きる方が面白いからね。それに、ノクスはここまでの試合でかなりいい動きをしてたよ」「フライ様……それ、それは勘ですか?」 アイリーンが不思議そうに問いかけてきた。「う〜ん、どうだろう? だけど、こっちの方が面白いと思ってね」「ご主人様、大丈夫?」 ジュリアが不安そうに問いかけてくる。「私は、いい勝負だと思うぞ」 レンナは僕の判断に賛同してくれる。獣人や竜人である彼女たちの方が、戦闘面では敏感にノクスの強さに反応を示すのだろう。
last updateLast Updated : 2026-08-20
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地下の顔役さんたちって怖くない?

  夜の学園都市は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返り、時折吹く冷たい風が肌に刺さる。どこからか聞こえる酒場のざわめきや馬車の音が、静寂の中にかすかな命を感じさせる。「フライよ、今夜は特別な集まりだ。美しい女性を連れてこいと言った意味が分かるだろう?」 フィル爺さんに呼び出された僕は、夢魔族のメムと精霊族のシーバを連れて夜の街を歩く。 二人とも綺麗に着飾って、いつもの雰囲気とは全くの別人のようだ。夢魔のメムは、生まれ持った魅力が溢れている。 精霊族のシーバもエルフと呼ばれる整った容姿の種族なので、黙っているだけでとても美しい。 フィル爺さんから面白い者たちを紹介してやると言われて、今日は夜に呼び出しを受けた。「まぁ、フィル爺さんの友達だから、美人が好きなんでしょ? メム、シーバ、緊張しないで。僕がいるから大丈夫だよ」「はいなのです、ご主人様。でも……なんだか怖い雰囲気なのです」 臆病なメムは珍しく声を小さくして答えた。彼女の目が何かを捉えたのか、街の空気にはどこか異様なものが漂っている。 フィル爺さんが連れてきたのは、薄暗いながらも高級感を感じさせる広いパーティー会場だった。 シーバも雰囲気に呑まれながらも、無表情で周囲を警戒して耳をぴくりと動かしていた。 フィル爺さんに案内されたのは、学園都市の繁華街の奥まった一角にある、ひっそりとした建物だった。 外観は古びた倉庫のようで、特に目立つところはない。だが、重厚な鉄の扉と、それを守るように立つ無骨な大男たちが、この場所がただの倉庫ではないことを示している。「フライ、ワシの後についてまいれ」 扉の前で待っていたフィル爺さんが低い声で言う。彼の表情にはいつものような軽さはなく、むしろその目にはどこか冷たさすら感じられた。「フィル爺さん、ここは……?」「いいから入れ。面白い者たちを紹介してやるからな」 重厚な扉の向こうにある広い倉庫から階段を降りると、地下空間が広がっていた。 薄暗い明かりが空間全体を照らし、どこか湿った空気が漂っている。床は磨き抜かれた石畳で、その中央には重厚な木製のテーブルが置かれていた。 そこに座る男たちは、一目でただ者ではないと分かる。豪奢な衣服を身にまとい、堂々とした体格を持つ者もいれば、細身で鋭い目つきをした者もいる。だが、全員に共通しているのは、その場を
last updateLast Updated : 2026-08-20
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男友達ができた。

 うん。やっちゃったよね。勢いに任せて暴れたのは、火龍の時以来かな。領地を干上がらせていたから、ブチギレて尻尾を切っちゃって以来だよ。 ギャンブルを取り仕切る顔役のお爺さんたちを黙らせたのは、やりすぎだったなぁ〜。だけど、メムのことを物扱いするのがダメなんだよ。「ご主人様〜メムは嬉しいです」 先ほどから、メムがフェロモンムンムンでスリスリと頬を擦り寄せている。まぁ、夢魔としてメチャクチャ可愛いから嫌ではないんだけど、たくさんの人たちに見られながらは恥ずかしいかな。「いっ、意外にやるじゃない」 シーバは来た時とは違って、何やらオドオドとしながら、僕に視線を向けては頬を染めている。まぁ、綺麗な女性に向けられる視線としては悪くないですね。 それにしても、地下会合の雰囲気は一変してしまった。 先ほどまで僕を値踏みしていた視線や、敵意を感じさせる態度は消え去り、代わりに全員が好意的で、どこか親しみを感じさせる空気に変わってくれたのは楽でいいね。「フライ・エルトール殿、お若いのに見事な腕前じゃった。さぁ、こちらへどうぞ。ぜひ上座にお座りください」 先ほどまで威圧感を放っていた頭に傷のあるオジさん。名前はオルバスさんで、深々と頭を下げて言った。 周囲の顔役たちも次々と口々に賛辞を述べながら、僕をテーブルの上座へと案内する。「まぁ、みんなが言うなら座らせてもらうよ」 僕は少し困惑しながらも、椅子に腰を下ろした。メムとシーバは、僕の両脇に控えて、じっと周囲を警戒しているのが分かる。 二人とも、本来は強い種族に分類される。 夢魔族のメムが持つ魅了の魔力は人を支配する。 精霊族のシーバが持つ精霊魔法は強力で、属性魔法とは異なる理で魔力が使われることで、強力な魔法を生み出す。「フライ殿、これはワシらの失礼をお詫びする証です。どうかお納めください」 一人の顔役が、金の縁取りが施された豪華な杯を差し出した。その中にはキラキラと輝く琥珀色の液体が注がれている。「ありがとうございます。でも、僕は酒は強くないんですよ。代わりに、メムとシーバに飲ませてあげてください」「ほう、それではこちらのお嬢さん方に……」 周囲の視線が二人に集まる。メムは少し怯えたように身を縮めるが、シーバは毅然とした態度でその場に立っている。「ご主人様、それはメムたちが飲んでもいいので
last updateLast Updated : 2026-08-21
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孫自慢大会 

《sideフィル》 とうとうこの時が来たぞ!!! ワシにもついに後継者ができた。 それはこれまで後継者を決めきれんかったワシにも問題があるが、そのおかげでとびきりの後継者を見つけることに成功したんじゃ。 夜の学園都市は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返り、街の隅々まで灯るランタンの明かりが静かに揺れている。この時間帯は最も落ち着く時間じゃ。 人の目が少なくなり、人の本音が曝け出される。夜にこそワシらは輝き始める。 今夜は特別だ。毎年恒例の「顔役たちの集い」の日。 各国の裏社会のボスたちが一堂に会し、自らが後継者と目する若者を連れてくる。学園都市で行われるフェスティバルの裏で、この集まりは密かに続いてきた。 名目は親睦会だが、実態は「孫自慢大会」じゃ。 どこのボスが、いかに優れた後継者を育てているかを競い合う場でもある。 ワシもこの集いに参加するようになって長い。だが、毎年のことながら、ワシには自慢する「孫」がいなかった。 おかげでいつも、他のボスたちの自慢話を聞かされるだけだ。「あの坊主は将来、国を動かす器だ」「うちの若いのは抗争で百人を屠った猛者だ」 そんな話を横で聞かされるたび、ワシの中には小さな劣等感が募った。 もちろん、ワシは裏社会の中でもそれなりに名の知れた存在じゃ。じゃが、後継者となる若者がいなかったことに、心のどこかで引け目を感じていた。 だからこそ、今年は違う。 ワシは「フライ・エルトール」という孫を見つけた。 若いが、ギャンブラーとしての度胸と抜け目のなさ、どこか掴みどころのない性格。しかも、公爵家の子息とは感じさせない余裕と、堂々とした態度。 何よりも、あの少年には不思議なカリスマ性がある。見た目は呆然としておるが、人を惹きつけ、どんな場でも一歩も引かない強さを持っておる。 何よりも赤龍王の娘をあしらう実力まで兼ね備えておるのは、予想外じゃった。「今年こそ、自慢できるぞ!」 ワシは集いの会場に向かう道すがら、胸を高鳴らせていた。これまで何度も屈辱を味わってきたこの場で、ついにワシも孫自慢を披露する番が回ってきたのじゃ。 会場に着くと、そこにはいつもの顔ぶれが揃っておった。 鬼人族で地下闘技場の総元締めであり、奴自身もかなりの強さを誇る、禿頭に傷が走るオルバス。 冷たい目つきで、闇の武器商人と呼ばれる
last updateLast Updated : 2026-08-21
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世界の広さを知る

 《sideバクザン》 俺の名前はバクザン。 鬼人族の中でも強者として、これまで数多の戦場を渡り歩いてきた。 俺たち鬼人族は、誇り高き血を引く。  刀と呼ばれる東方特有の武器と武術を使って戦いを行う。 生まれつき持っていた桁外れの力で、同胞からも「将来は鬼神の名を継ぐだろう」と期待されてきた。 獣人や竜人が変化の能力を持つのに対して、鬼人族は鬼神への進化を遂げると言われている。 戦いに明け暮れる日々。力こそが正義であり、力を持つ者が尊敬され、弱き者が淘汰される。それが鬼人族の掟だ。 そして俺もまた、その掟を信じ、疑うことなく己の力を誇って生きてきた。 いつかは最強の鬼人として、鬼神への進化を遂げ、最強の名を継ぐ。「バクザン、そろそろ顔役の集まりに参加する時だ。貴様を連れていくが、良いな?」「オルバス様、ありがとうございます」 先代の鬼神である祖父にそう言われた時、俺は少しばかりの高揚感を覚えていた。 顔役の集まり。 それは、各種族の実力者や裏社会の権力者たちが一堂に会する特別な場だ。そこに若き俺が出席することは、鬼人族の未来を担う存在として認められた証でもある。「分かった。俺の力を見せつけてやる」 そう返事をした俺には、自信しかなかった。 鬼人族最強と呼ばれる俺の力を見れば、誰もが俺を称賛し、恐れを抱くだろう。そんな期待を胸に秘めて、学園都市の地下にある集会場へ向かった。 国を出て西方にある帝国に行くだけで、俺にとっては興奮する出来事だった。♢ 到着した帝国は、鬼人族の街よりも遥かに発展しており、王国から乗った列車は、物凄いスピードだった。 まだまだ発展途上ではあるが、鬼人族に取り入れたい技術が溢れていた。 学園都市と呼ばれる街に着いて、地下に続く階段を降りる。 広い空間に各種族の顔役たちが集まっていた。そこには人間、エルフ、ドワーフ、獣人族といった多種多様な顔ぶれが揃っており、俺を出迎える視線が集まる。「おお、バクザンか。鬼人族の若き猛者がやって来たな」 ドワーフのトーマスの声が響く。彼は俺の存在を知っていてくれたようで、満足そうに頷いてくれた。 俺は胸を張り、自信に満ちた態度でその場を見渡す。 だが、その自信は次第に揺らぎ始めた。 各種族の顔役たちは、見ただけでただ者ではないと分かるような威圧感を放っ
last updateLast Updated : 2026-08-22
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暴力と武力は使いよう

 《sideノクス》 学園都市に来てから、毎日が新鮮だった。 広大な敷地に異種族たちが行き交い、それぞれが自分の目標に向かって努力を重ねている。 貴族もいれば平民もいる。強い者も弱い者もいる。 しかし、平民出身の俺にとって、この場所は平等なようでそうではなかった。 貴族たちの集う華やかな社交場には近寄ることすらできず、彼らが見下すような視線を向けてくることも珍しくない。 だが、それでも俺はここに来たことを後悔していない。 俺は「自分の力」を証明するために、学園都市に来たのだから。 《グラディエーター・アリーナ》 それは、そんな俺にとって絶好の機会だった。 学園都市全体を巻き込むこの競技で、俺は自分の剣術と努力が通用するのか、試してみたかった。 初戦、相手は筋骨隆々の獣人だった。 彼は身体能力に絶対の自信を持ち、俺を一瞬でねじ伏せるつもりだったのだろう。 だが、俺は速さで勝負した。 相手の動きの癖を見抜き、わずかな隙を突いて剣を振るう。何度か相手の攻撃をかわし、反撃を加えた結果、獣人の剣を弾き飛ばし、勝利を収めた。「勝者、ノクス!」 審判の声が響くと、観客席からは少しばかりの拍手が聞こえた。 しかし、俺にとってその拍手は何よりも大きく聞こえた。戦いの中でなら俺は胸を張っていられる。あまり頭が良い方ではない。だけど、自由を求める気持ちは変わらない。 二戦目の相手は、魔法使いだった。 派手な呪文を使う魔法使いが相手。遠距離から俺を攻撃してくるのに対して、どうやって距離を詰めるのか。 魔法使いの相手は初めてではなかったが、やはり剣士にとっては不利な相手だと思う。だけど、それを承知で受けた戦いだから、乗り越えたい。 何よりも、俺は負けるつもりはない。「足元がお留守だぞ!」 障害物を使って魔法を避けながら、なんとか距離を詰めた。 魔法使いは魔力量に限りがあるから、無駄に魔法を撃たせれば、隙が狙える。 障害物と魔法の消費によって接近戦に持ち込むことができたので、剣を振るって、魔法を放つ触媒を破壊することで勝利を手にした。「勝者、ノクス!」 この試合の後、俺の名前は少しずつ観客たちの間で話題になり始めた。 無敗で二勝した者は、俺を含めて数名だけ。そこに自分の名前があることが誇らしい。 そして迎えた三戦目、相手は三年次のレ
last updateLast Updated : 2026-08-22
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未来の話しをしよう

 《sideフライ・エルトール》 改めて、僕はフィル爺さんから呼び出しを受けた。今回は従者を連れることなく、二人で飲もうと声をかけられた。 場所は、前にフィル爺さんが連れて行ってくれたボートレース場の奥にある地下闘技場だった。 地下闘技場は、学園都市の昼間の賑やかさとは異なる、静かで冷たい熱気に包まれていた。 広大な空間の中央に設けられた闘技場では、闘士たちが剣や槍を手に、互いの技と力をぶつけ合っている。 観客席には様々な種族の人々が集まり、それぞれが応援する闘士に声援を送る。 フィル爺さんと僕は、地下闘技場を見下ろせる個室に座っていた。 特等席で、お酒を注いでくれる美しい女性や、専用の給仕担当までいるVIPルームのような場所だった。 普段ならこういう場所に座るのは気が引けるけれど、今日はフィル爺さんに誘われてここにいる。「フライよ、どうじゃ? これが地下闘技場の醍醐味じゃ」 フィル爺さんが楽しそうに笑う。その目は、闘技場で剣を交える剣闘士たちを楽しそうに見つめている。「いや、爺さんがこんなに真剣な顔で闘技を見てるのも珍しいね。戦いって、そんなに面白いの? 僕はあまり戦うのは好きじゃないんだよ」「くくく、あれほどのことをしておいて、好きではないか。おぬしは本当に面白いのぅ」 フィル爺さんは僕の言葉の一つ一つを肯定してくれている。本当に祖父がいれば、このような感じなのだろうか? 少しくすぐったい気持ちにさせられて、フィル爺さんのことを好きになっていく自分がいる。「じゃがのう、戦いには生き様が詰まっておる。どんなに口が巧い者でも、戦いの場では嘘はつけん。剣を振るう者のすべてが、その一撃に込められるのじゃ」 爺さんの言葉に、僕は再び闘技場へ視線を向けた。 今、剣を交えているのは獣人の男と人間の男だ。獣人の男は圧倒的な体格と力を誇り、人間の男はそれに対して、身のこなしと剣捌きで応じている。 激しい攻防の中、剣が弾かれ、砂塵が舞い上がる。その中で、二人の眼差しだけが燃え盛る炎のように輝いている。「確かに、なんというか……生きてるなって感じがするよ」「そうじゃ。おぬしも知っておるように、こうやって血湧き肉躍る舞台には、表には出せぬ生き様がある。じゃが、裏でこそ生きられる者たちがおり、世界を動かす力を持っておる。こうした闘技場もその一環よ
last updateLast Updated : 2026-08-23
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決勝進出者が揃った

  学園都市で最大の盛り上がりを見せる《グラディエーター・アリーナ》の決勝戦の日がやってきた。 アリーナは異様な熱気に包まれ、観客たちは開幕を待ちきれない様子だった。 僕もエリザベート、ジュリア、アイリーンと共に、特等席から決勝戦を見守ることにした。それぞれの王族や貴族に与えられた席の一角。「いやぁ、やっぱり決勝ともなると雰囲気が違うね。この熱気、観客の声援、もう本当にすごいよ」 僕は席に座りながら、興奮気味に周囲を見渡す。エリザベートは扇を片手に、優雅に笑いながら頷いた。「当然ですわ。これまで勝ち上がってきた者たちの頂点が競い合う場ですもの。注目を浴びるのも無理はありませんわ」「フライ様、誰が優勝すると思いますか?」 ジュリアが興味津々に聞いてくる。僕は肩をすくめた。「うーん、まだ何とも言えないけど、どの選手もそれぞれ強い個性があるからね。誰が勝つにしても面白い試合になるだろうね」「私は少し裏を調べたけど、どの選手も実力派揃いよ。それに少しだけ怪しい空気も感じるのよね」 アイリーンが意味深な笑みを浮かべながら言った。 アリーナの中央に設置された巨大なスクリーンが点灯し、観客たちの歓声が一段と高まった。いよいよ、決勝戦の幕が上がる。 スクリーンに映し出されたのは、実況を務める少女、ジョウ・キョウだ。「さぁ、お待たせしました! いよいよ《グラディエーター・アリーナ》決勝戦の開幕です! みんなが大好き実況ちゃんですよ〜」 彼女の元気な声がアリーナ全体に響き渡る。「決勝戦に進出したのは、予選を勝ち抜いた八人の猛者たち! それでは、早速選手たちを紹介しましょう!」 実況ちゃんの声に合わせて、次々と選手たちがスクリーンに映し出される。そのたびに観客席から大きな歓声が上がった。 決勝進出者の紹介 「一人目は、最速で勝ち上がってこられました獣人王国の獅子王ロガン・ゴルドフェング選手。獣人王国の王子で、圧倒的な筋力と闘志を誇る。金色のたてがみを揺らしながら、堂々とアリーナに立つその姿は、まさに王者の風格です!」「ロガン様ー! がんばれー!」 観客席からは、ひときわ大きな声援が飛ぶ。一年次にして、優勝候補筆頭は伊達ではないね。 「二人目は《蒼炎の魔剣士》セリーナ・シルヴァ選手。精霊族の優雅な戦士で、魔法と剣術を融合させた独自の戦闘スタ
last updateLast Updated : 2026-08-24
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彼が参加しているってことは、裏があるよね?

  グラディエーター・アリーナの決勝戦を控えた熱気の中、僕はどうしても気になることがあって席を外しました。 控え室に向かうと、そこで待っていたのは鬼人族のバクザンです。彼は鬼人族が纏うという覇気を発して拳を握りしめ、準備運動をしています。「これはフライの兄貴! 激励に来てくれたのですか?」「ああ、それに気になることがあってね」「はは、さすがですね!」「やっぱり何かあるのかい?」 バクザンの明るい声ながらも、グラディエーター・アリーナに参加したことには、何か意味があるようです。「いや、君が決勝戦に出るなんて知らなかったからね。ちょっと挨拶に来ただけだよ。でも、期待してるよ、バクザン」「はは、嬉しいぜ。フライの兄貴が見てくれるなら、全力で戦うしかねぇな」 そう言いながらも、彼の表情にはどこか緊張が見えた。それが気になった僕は、一歩近づいて問いかけた。「それで、何か心配事でもあるのかい?」 バクザンは一瞬だけ視線を逸らし、周囲を確認するように見渡した後、僕に小声で話しかけてきた。「フライの兄貴、ここだけの話なんだが……」 僕は彼の真剣な様子に驚き、自然と耳を傾けた。「実は、今回のフェスティバル、ただの競技じゃねぇらしいんだ」「どういう意味だい?」 僕は彼の言葉に首をかしげた。バクザンはさらに声を潜めて続けた。「フライの兄貴は知らねぇかもしれねぇが、裏で動いてる連中がいるって話です。学園都市を利用して、何かデカいことを企んでる奴らがな」「裏で動いてる連中? 顔役さんたちが何かしているのかい?」「いえ、俺たちではありません。リベルタス・オルビスって名前を聞いたことはないですか?」 僕はその名前を聞いて、小説の中に何度も登場するその名前を忘れるはずがない。 狂王ブライド・スレイヤー・ハーケンスが悪の覇王だとするなら、リベルタス・オルビスは、自由を訴えながらも世界を掻き回す裏の存在。 世界の影と言ってもいい。
last updateLast Updated : 2026-08-24
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