All Chapters of お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。: Chapter 121 - Chapter 130

148 Chapters

外堀が埋められた

 《side フライ・エルトール》 うーん、僕の思惑とは違う方向に動いていますね。 公爵家の次男として、悠々自適なセカンドライフを異世界で楽しみながら、戦争が起こる頃には、フライ・エルトールなんて名前は小説の中には存在しないので、きっと死んでいるんだろうと考えていました。 それなのに、領地に戻ってからというもの、どうも周囲の空気が変です。 街の人々はやたらと歓迎ムードで、挨拶されるたびに「フライ公爵様、よろしくお願いします!」なんて言われる。 いやいや、そんな話、僕の想定にはありませんでしたからね。 その疑問はすぐに解消された。いや、解消というより、混乱が増したというべきか。「フライ、決まったぞ」 公爵家の居間に呼び出された僕は、父上から唐突に告げられた。「……何が決まったの?」「お前が公爵になることだ。公爵位を継承する準備も進めている」 父上が当たり前のように言う。僕は思わず聞き返してしまいます。「えっ、そんなにすんなり決まるものなの?」「何を言っているんだ。エリックから話は聞いていただろう? エリックが辞退すれば、おのずと次男であるフライに公爵家を継ぐ権利が移るだろう。もちろん、当主である僕が認めればの話だが、僕もそれを認めている」「……てっきり、学園を卒業してからの『いつか』の話であって、『今』じゃないと思っていましたよ!」 とりあえず、エリザベートとアイリーンと婚約させられて、いつかは公爵家の当主になると思っていた。公爵位を継がせると言った父上の言葉も、こんなにも早いとは思わなかった。 父上は肩をすくめる。「もう決まったことだ。お前には公爵としての素質がある。領民たちもお前を支持している」「でも、僕、まだ学生だよ?」「それも問題ないさ。当主代行として、しばらくは僕が動く。お前はゆっくり慣れればいい」 どうやら、完全に既成事実を積み上げられていたらしい。「婚約も正式に決まっ
last updateLast Updated : 2026-10-08
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月日は流れ

 《side フライ・エルトール》 二年間の月日が流れた。 学園都市と公爵領を行ったり来たりする日々は、気がつけばあっという間に過ぎ去っていた。 学園では、エリザベートやアイリーン、ジュリア、レンナたちと過ごしながら、勉学や研究、そして何より仲間たちとの冒険に明け暮れた。 学園都市では、フェル爺さんやバクザン、ノクスと交流を持ちながら、僕なりに当たり障りのない楽しい学園生活を送れたと思う。 公爵領では、次期当主としての責務を少しずつ覚えることになった。両親が教師となり、エリザベートが秘書のように色々と助けてくれた。 奴隷たちも学園都市から公爵領へ連れて帰り、それぞれに仕事を任せている。 現状は、領民たちの生活を見守りながら、父から政治のいろはを学んでいるところだ。 この二年で、僕自身がどれだけ変わったのかは分からないけれど、少なくとも周囲の目が変わったのは感じている。 学園都市では、相変わらず慌ただしい日々が続いていた。 ノクスやバクザンは、それぞれの道で成長し、今や学園でも一目置かれる存在となっていた。 ノクスは魔術を無効化する能力を生かして、学園内外の問題解決に奔走している。一方のバクザンは、相変わらず傭兵業を主にしているため、学園に来ることは稀だ。「フライさん、演習で鍛えた剣を見てください」 ノクスが真面目な顔で頼んでくるたび、僕は思わず笑ってしまう。「まぁ、いつも通り気楽にいこうよ。僕らしいやり方でね」 その言葉にノクスが苦笑し、バクザンが大笑いする。そんな日常が、学園では当たり前の光景となっていた。 演習では、ブライド皇子の側近であるアイクと剣を打ち合っても、ノクスが打ち負けることは少なくなっていた。 さすがに勝てるほどではないが、剣術という純粋な部分では通じ合うものがあるのか、二人が訓練する姿を度々目にしている。 エドガーはブライド皇子の支援を受けて、ゴーレムの開発も順調のようだ。実際に、帝国が大陸全土に向けて戦争を仕掛ける際には、多く投入されること
last updateLast Updated : 2026-10-09
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領地経営

 《side フライ・エルトール》 僕は、二年前に公爵へ正式に就任することが決まり、ある覚悟を決めた。 そのために領地を巡って現状を確認し、一つ一つ、やらなければならないことを書き出していった。 仕事は思った以上に多かったが、それでも小説の未来を知る者として、できることをしておきたかったのです。 主に進めているのは、軍備の増強、食糧の確保、そして領地を守る防波堤の設置です。 1. 軍備の増強 まず、戦力の底上げが必要だと考えました。 公爵家の領地は比較的平和な土地だったため、あまり兵士の練度が高くありません。それでも外敵の脅威がゼロとは言えないため、最低限の冒険者や兵士を配置している程度です。 以前から傭兵稼業をしていたバクザンに協力を頼み、領内の若者たちを鍛えてもらうことにしました。「フライの兄貴よ、何か企んでんのか?」「んー? まぁ、将来に備えておきたいんだよね」「ほう、将来に備えてか。フライの兄貴が言うんだ。何かあるんだろ? いいぜ! 俺の指導は鬼がかっているが、ビシバシ鍛えてやるよ!」 バクザンは楽しそうに引き受けてくれた。「ノクスには、将来的に我が領の騎士団長になってもらいたい。妹さんもこちらに来てくれたわけだからね」「はい! ありがたき幸せです」 ブライド皇子にアイクがいるように、僕はノクスに将来も領地にいてもらいたい。そのため、強くなれる環境と妹さんが快適に暮らせる生活環境を整えることで、ノクスを我が領へ引き入れた。 学園都市に通っている間は、バクザンと共に傭兵として経験を積み、学園都市を卒業してからは領内で騎士見習いとして色々と勉強中だ。 バクザンが指導することで、この二年間で戦える人材が増えつつある。さらに、学園都市にいるフェル爺さんの紹介で、魔法戦士や騎士を育成した経験のある剣闘士たちも数名雇い入れた。 彼らには、剣闘士として名を上げたいと思っている者が多い。強さだけでなく、出世を望む者たちを引き入れていった。 傭兵や剣闘士だけではなく、
last updateLast Updated : 2026-10-10
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ある領民の勘違い

 《side 第三者視点・領民》 領民たちは、公爵家の変化に戸惑いを感じていた。フライ・エルトール様が公爵位を正式に継承することが決まってから、公爵領では多くの人々が行き交うようになった。「おい、聞いたか? フライ様が公爵家を正式に継いでから、領地の様子がガラッと変わってきたらしいぞ」 酒場の片隅で、一人の男がひそひそと話し始めた。そこには鍛冶屋の親方、農家の代表、酒場の女将など、領地のあちこちで働く人々が集まっていた。 公爵領にはいくつかの村や町が存在するが、このようにそれぞれの地元の代表が集まるのは稀なことである。「軍の訓練が厳しくなったのは知ってるだろう? 鬼人族の英雄バクザンって人が傭兵団を引き連れて指導に来ているらしいが、若い衆の鍛え方が半端じゃねぇらしいんだよ」 酒場の女将が口を開くと、鍛冶屋の親方も自分の周りで起きた変化を口にする。「それだけじゃないぜ。武器工房も拡大してやがる。ドワーフの職人が続々と集まってきてるんだ。剣や鎧の質も向上してるって話だ。わざわざドワーフのために、街を一から造るほどの力の入れようだ。だからって俺たちの仕事がなくなるんじゃなくて、むしろ忙しくなってやがる。どういうことだ?」 鍛冶屋の親方は、ドワーフに仕事を奪われると思っていた。だが、蓋を開けてみれば、今まで以上に忙しくなり、仕事にてんてこ舞いになっていた。「農地の方もそうだ。エルフを呼び込んで、作物の成長を手助けしてもらっているんだ。森も広げて、自然の要塞みたいにしているらしい。領地内の食糧生産量が一気に増えてるんだろ? 備蓄倉庫もどんどん増えてるし、俺のところでも管理が大変だぜ」 農家の代表は、農民たちからの苦情が多いのかと思えば、そうでもない。フライ様がゴーレムを使って農地をならしてくれるので、体を痛める農家が減り、むしろ時間に余裕ができる者まで現れた。「それだけじゃねぇんだ。聞いた話だと、領境に長い長い防壁を造り始めたらしいぞ。しかも、ただの壁じゃなくて、ゴーレムにもなるらしい」「な、なんだって!? それって……まるで、国を作ろうとし
last updateLast Updated : 2026-10-11
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姉妹妻の決意

 《side エリザベート・ユーハイム》 フライ様が軍備の強化、食糧の確保、防壁の建設を急速に進めていることに、私は以前から疑問を抱いておりました。 もちろん、戦争が起こる可能性を考えているのだろうということは理解できます。それは領地を持つ貴族として、当たり前の考えなのです。 ですが、それにしてもやりすぎではないかと思うほど、準備のペースが速いのです。 まるで、何かを確信しているかのように。だからこそ、私はフライ様に直接問いかけました。「フライ様、どうしてここまで領地の防衛を固めるのですか?」 フライ様は考えるような素振りを見せることもなく、すぐに答えました。「……起こるかもしれない戦争のためさ」 それだけです。 フライ様はいつも飄々としておられますが、時折、何かを見据えているような視線を向けることがあるのです。 きっと今回も、私には理解できない未来を見据えているのでしょう。 私は、その言葉の奥にあるものを知りたいと思ってしまう欲深い人間です。だからこそ、姉であるアイリーン姉様に相談することにしたのです。 ♢♢♢「フライ様が未来を予見している……?」 アイリーン姉様は私の話を聞いた後、静かに呟いた。「ええ、私にはそう思えるのです。まるで、これから起こる戦争をすでに知っているかのように、領地の備えを整えています」 学園都市にいた頃から、フライ様の行動は他の人とは違っているように思えました。常人には理解できないほど、全てが計算されているようでした。 異端者との戦いでも、学園都市が混乱に陥る前から対策を練っていたし、メイギスという異端者の魔神と遭遇した時も、フライ様はすぐに彼を「敵」だと見抜いていました。 普通なら、そんな判断ができるはずはありません。 フライ様は、まるで「未来の出来事を知っている者」のように動くのです。「それに……私には、もう一つの可能
last updateLast Updated : 2026-10-12
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公国公女は動き出す

 《side セシリア・ローズ・アーリントン》 私は公国の未来を守るために、ある決断を下しました。 帝国内部におけるブライド皇子の反乱の兆しを、誰よりも早く情報として手に入れたのは、ほんの数日前のことです。 そしてもう一つ、それに呼応するように、フライ・エルトール公爵の領地において、強化された防衛設備が正式にお披露目されました。 以前から土木工事が進められていましたが、まさか領境に巨大な壁を造るとは考えもしませんでした。 この二つの動きが、今まさに公国を取り巻く環境を大きく変えようとしています。 公国は、帝国と王国の両方に面した中立国です。 商業を中心に発展した小国ではありますが、これまで情報と商売を武器に立ち回ってきました。 人口が少ないため、武力で大国に対抗することは不可能です。 どちらかの大国が戦を始めれば、公国は巻き込まれる運命にあります。 特に帝国が内乱状態に陥る可能性がある今、その影響が公国にも及ぶことは避けられません。 そんな時、帝国の貴族たちの間で、ある噂が広まっていました。「エルトール公爵領が、壁だけでなく急速に軍備を増強しているというのですか?」「はい。フライ・エルトールは、帝国の覇権を狙っているのではないでしょうか? 第一皇子と第二皇子が内乱を始めるタイミングを狙っているのではないかと」 私は、この噂がただの憶測では済まされない可能性を感じています。 指揮官として、フライ・エルトール様の能力を知っているからです。 だからこそ、フライ様の婚約者であるエリザベート・ユーハイム様に接触することを決意しました。彼の真意を確かめるためです。 エリザベート様との会談は、私が公爵領へ赴き、彼女の私室で行われることになりました。 帝国の情報を扱うユーハイム伯爵家。 我が公国とも、何度も諜報戦を繰り広げてきた間柄です。 それに加え、フライ様の正妻という羨ま……いえ、確固たる立場を築いた彼女は、私
last updateLast Updated : 2026-10-13
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僕の思惑と違うよね? 

 《side フライ・エルトール》 領地経営を本格的に始めてから、しばらくが経った。 軍備の増強、食糧の確保、防御策の整備――やるべきことはすべて終わった。 戦争を止めようとは思わない。 世界の流れは変わらないし、僕ごときがどうこうできるものではない。 だけど、大切な人たちを守るための準備はできた。 あとは、気楽に時が流れるのを待つだけだ。時が来たら防備を固め、嵐が過ぎるのを待てばいい。 そんなわけで、僕はいつもの気楽な日々に戻った。やるべき仕事は人に割り振り、僕は自由時間を満喫することにした。 公爵領を巡るという名目で、飲み歩きの旅を再開する。行く先々で、領民たちは歓迎してくれる。「おお、公爵様! またお越しとはありがたい!」「今日もいい酒が入ってますぜ!」「公爵様がこうして気軽に飲みに来てくれるのは、本当にありがたいよ!」 こんな感じで気軽に飲んで、食べて、のんびりする。 ……ただ、一つだけ気になることがあった。それは、領民たちの視線だ。 歓迎はしてくれるのだけれど、どこか決意を秘めた瞳で僕を見ているのだ。(なんだろう、この感じ……?) いつもなら気楽に声をかけてくれる人たちが、妙に敬意を込めた態度を取ってくる。「公爵様……俺たちは、ついていきますぜ!」「何が起きても、公爵様についていく覚悟はできております!」「エルトールの民は、公爵様と共にあります!」(……うん、なんかとんでもない勘違いをされてる気がするぞ) どうやら領民たちは、僕が何かを仕掛けると思っているらしい。(いやいや、そんな面倒くさいこと考えてないからね?) とはいえ、訂正するのも面倒だし、放っておこう。 ♢ そんなある日、エリザベートが真剣な顔で僕のもとを訪れた。「フライ様
last updateLast Updated : 2026-10-14
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決裂の始まり

 《side ブライド・スレイヤー・ハーケンス》 我は思う。人とは愚かな生き物だ。己よりも優れた者を認められない。むしろ、能力のある者たちは嫉妬され、その能力を発揮できないまま潰されてしまう。 そんな理不尽な世の中でよいのか? よいはずがない。 第一皇子である兄は無能だ。それは誰の目から見ても明らかであり、我を皇帝として迎えるのが最善の一手である。 そう進言したが、凡王である父上には理解できないようだ。 我と父上は、決定的に決裂した。 学園に通っている間は我慢した。だが、もうそれも終わる。学園から戻った我を待っていたのは、病に伏した皇帝陛下と、兄である皇太子。 そして、我。 ここに呼び出された時点で、我の立場は決まっていた。いや、もとよりこの道を進むことは決めていた。 我は、この帝国を――そして、この腐りきった王朝を変える。「ブライド……。貴様を、私は信用することができん」 皇帝陛下は、病に侵された顔をしかめながら我を見た。 痩せこけた頬、力のない目。もはや、かつての皇帝の姿はそこにはない。「そもそも、お前は学園へ送った時から危険な存在だった」「……ほう」 我は静かに微笑んだ。「何を根拠に?」「お前が集めた者たちを見ろ……アイク、エドガー、カーミラ、ダリウス、リゼット……」 皇帝陛下は深く息を吐く。「全員、現在の帝国中枢に関わる者ばかりとなった。そして、お前は彼らを学園時代から囲い込んできた」「我は、才能ある者を見極めていただけだ」「違う。お前は帝国を乗っ取るつもりだ」 その言葉に、我はわずかに笑みを深めた。父上の言葉を聞き、隣にいた兄の肩が震える。「面白いことを言う……。では、父上……」 我は一歩前に出て、皇帝のすぐ
last updateLast Updated : 2026-10-15
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これは革命?

 《side ブライド・スレイヤー・ハーケンス》 夜の帝都は静かだった。 だが、その静寂の裏で、帝国の命運を揺るがす嵐が確実に形を成していた。「……時は来た」 我は集まった者たちを前にして、静かに言葉を発した。 彼らは、かつて学園で共に学んだ才ある者たち。 アイク。我の剣にして、帝国最強の剣士として名を馳せる男。 エドガー。帝国技術の粋を集めたゴーレム技師。 カーミラ・ヴェルト。帝国情報局に在籍する才女であり、ユーハイム伯爵家と帝国の情報網を二分するヴェルト伯爵家の令嬢にして、今回の立役者の一人だ。 ダリウス・グレイヴ。帝国軍務軍略課に在籍する指揮官であり、軍の指揮から戦術、戦略の立案までをこなす天才と呼ばれている。 リゼット・ロワイヤル。帝国財務局の影に潜む金融の天才。今回、軍を起こすことができたのは、侯爵家の令嬢である彼女に資金を集める才覚があったからに他ならない。 そして、他にも多くの才ある者たちが我に従ってくれた。 我の覇道に共鳴した者たち。 彼らは、それぞれの分野で帝国の根幹を担う者たちとなるだろう。 そして今、彼らの力をもって、我は帝国の頂点に立つ。「帝国を滅ぼす者」ではなく、「帝国を導く者」として。「兄上は無能だ」 我は静かに口を開く。「父上はすでに病に伏し、兄上は皇帝としての資質に欠けている。そして、この帝国はもはや死に体である」 集まった者たちは、誰一人として反論しなかった。いや、むしろ、自分たちこそが帝国を変えるのだという強い意志が感じられる。「貴様らは学園で学び、力をつけ、それぞれの分野で頭角を現した。……だが、その力をこの帝国は生かしているか?」 否。「この帝国は貴様らを飼い殺しにし、腐った貴族たちは富を貪り、民を苦しめている。悪しき老害を排除し、我々の時代を作るのだ。そうしなければ、もはや帝国に未来はない」
last updateLast Updated : 2026-10-16
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迅速な決断

 《side フライ・エルトール》 執務室でその報せを受けた時、僕はただ一言、「ようやくか」と呟いた。 アイリーンが緊張した面持ちで手紙を差し出してくる。その手はわずかに震えていた。情報を司る彼女にとっても、衝撃的な事件だったのだろう。「フライ様……帝国から正式な報せが届きました。ブライド皇子が帝位に就かれたそうです」 手紙に記された内容を読む前から、その結末を僕は理解していた。むしろ、これまでブライドが帝位を狙わなかったことの方が不思議なくらいだった。 ブライドが帝国を導く者として行動を起こすのは、確定事項だった。 問題は、どのような方法でそれを成し遂げるのか。僕はそれを知らない。「アイリーン、詳細を」 僕がそう言うと、彼女はためらいがちに口を開いた。「……帝都が一夜にして制圧されました。ブライド皇子は、自らの学友や帝国軍内部で味方につけた者たちを先導して、帝国の中枢を掌握。そのまま抵抗する間も与えずに皇城を陥落させました。前皇帝と、その血縁者たちはすべて……処断されたと」「……そうか」 僕は静かに目を閉じた。何の驚きもない。むしろ、それこそがブライドらしいやり方だった。 ただ、これまで帝国を支えてきた人たちのために、少しだけ黙祷を捧げた。 腐敗した帝国の血筋を一人も残さず、すべての膿を取り除いた。 それを残酷と呼ぶ者もいるだろう。だが、それこそが彼の求めた「秩序」だった。「フライ様……どうなさいますか? 帝国の次の動きは、まだ明らかになっていません。いえ、明らかにする気がないのかもしれません。新皇帝となったブライド様が、何を考えているのか……」 アイリーンの声には警戒が混じっていた。彼女は心配しているのだろう。今後の帝国の行く末を……。 帝国の新たな皇帝が、これからの未来をどのように導
last updateLast Updated : 2026-10-17
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