テーブルの上に並んでいた色鮮やかな手料理はすっかり平らげられ、空になった赤ワインのボトルが二本、役目を終えたように並んで転がっている。 昨夜の残りのクリスマスケーキも四人で綺麗に分け合い、賑やかで温かな聖夜の宴は、静かな終幕を迎えようとしていた。「んん〜……もう飲めないわよぉ……」 ソファの端に寄りかかったまま、梓が幸せそうな寝息を立てている。 自ら持ち込んだ極上のワインを誰よりもハイペースで空け、すっかり酔いが回って寝落ちしてしまったのだ。 その隣では、和花もまた、うとうとと心地よさそうに目を閉じていた。 朝からずっと気が気ではなかったのだろう。 理聖がこうして無事に帰ってきたことで、一日中張り詰めていた極度の緊張の糸がふっと解け、温かい部屋の空気と微かなアルコールに誘われて、急激な眠気が襲ってきたらしい。 船を漕ぐように、こくりこくりと小さな頭が揺れている。 理聖は音を立てないように静かに近づくと、和花の隣に腰を下ろし、その柔らかな髪を愛おしそうに撫でた。(……よかった) 無事に彼女の元へ帰ってくることができた。 約束した通り、一緒にケーキを食べることもできた。 和花の安心しきった無防備な寝顔を見ていると、数時間前に組長室で繰り広げられた死闘が、遠い別の世界での出来事のように思えてくる。 理聖は傍らにあった大判のブランケットを手に取ると、風邪を引かないように、和花と梓の肩へそっと優しく掛けてやった。「……おやすみなさい、和花さん」 誰にも聞こえないほどの小さな声で囁き、理聖はゆっくりと立ち上がった。 ふと視線を巡らせると、雄之助の姿がリビングに見当たらなかった。 宴の最中、梓から「雄之助くんも遠慮しないで飲みなさいよ!」と何度もグラスを勧められていたが、彼は「俺はいいッス」と頑なにセーブしていた。 理聖が帰宅した直後に「少し、話したいことがある」と告げていたため、酔って頭を鈍らせるわけにはいかないと警戒し、シラフを保ってくれていたのだ。 リビングから続く掃き出し窓の向こう。 薄く結露したガラス越しに、ベランダで一人、身を縮めるようにしてタバコを吹かしている巨体がぼんやりと見えた。 理聖はハンガーに掛けてあった自分の黒いロングコートを羽織り、窓の鍵を開けた。 ピシャリ、と冷たい空気が頬を刺す。 外は、朝から降り続
Last Updated : 2026-10-13 Read more