二口目、三口目とスプーンを進めるごとに、雄之助は時々小さく唸り声を漏らした。 強烈な塩気と、妙に硬い米の芯。そしてなぜか時折感じる、謎の苦味。「……うっ」 思わずスプーンの動きが止まると、ベッドの脇でジッと見守っていた梓が、不安げに覗き込んできた。「……やっぱり不味い?」「言ってないッス」「嘘。今、顔がハッキリと不味いって言ったわよ」「気のせいッス。これはただの、風邪のせいッス」 雄之助は必死に顔を引き攣らせて誤魔化しながら、冷たいお茶で強引に流し込む。 愛する女の手料理を残すわけにはいかないという、男としての意地と根性だけの戦いだった。 なんだかんだで格闘すること十数分。雄之助はついに、最後のドロドロのひと匙を飲み込んだ。 カチャリ、と空になった丼にスプーンを置く。「……ふぅ」 額に滲んだ汗を手の甲で拭い、雄之助は深く息を吐き出した。 完食したという事実に対し、シノギを一つ成功させた時以上の謎の達成感が込み上げてくる。 だが、ふと気づくと、すぐ傍にいたはずの梓の姿がなかった。「あれ……梓さん?」 キッチンへお茶でも取りに行ったのだろうか。首を巡らせて部屋の中を見渡す。 すると――。 半分ほど閉まった寝室の扉。その数センチのわずかな隙間から、こちらをジッと覗き込んでいる視線があった。 顔の半分を扉に隠し、目だけを出して、まるで捨て猫のように不安そうな表情を浮かべている梓。「…………」「……何してるんスか?」 雄之助が呆れたように声をかけると、梓はビクッと肩を揺らした。「……ちゃんと全部、食べられたかなーって」「見てたんスか……」 堂々とそばにいればいいのに、不味いと突き返されるのが怖くて逃げ出していたらしい。 普段はあんなに強気でサバサバしている大人の女性が、自分の手料理の不出来を気にして扉の陰に隠れているのだ。 そのギャップが、どうしようもなく愛おしかった。 雄之助はフッと笑い、布団の中から片手を出して手招きした。「梓さん。こっち」 呼ばれた梓は、ちょこちょこと小股で遠慮がちに近づいてくる。 そしてベッドの横にちょこんと座ると、上目遣いで空になった丼を確認した。「……本当に、全部食べてくれたんだ」「残すわけないでしょ」 雄之助は熱で少しだるい腕を伸ばし、ベッドサイドに座る梓の頭へそっと手を置
Terakhir Diperbarui : 2026-10-18 Baca selengkapnya