All Chapters of 僕のお母さんは△▽女優: Chapter 231 - Chapter 240

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遥香と秘境の吊り橋物語 9話

寸又峡への道のりは酷く険しいものだった。なんと言ってもヘアピン坂だらけなのだが、それに加えて時折車1台しか通らない道が点在しており、最初は賑やかだった車内も少しずつお通夜のような沈黙へと変わっていって私もプレッシャーで押しつぶされそうだった。「な……なんというか……道が狭いね、母ちゃん」「そうね……まあ安全第一で行くけど。」「あ、母ちゃん……バス来てるよ。」「バスっ!!??」対向車が来ないように祈っていたが何故かバスがこの道を運行していた。私は急いでバックして広めの路肩に止まるのだが、今にも崖に落ちてしまいそうだった。バスは40km以上のスピードで駆け抜けていくが私にとっては爆速で進んでるようにも見えてしまった。「……ん?母ちゃん、もうバス行ったよ。」バスはとっくに過ぎたというのに私はアクセルがふめなかった。「吊った。」「え?」「足吊った。」そう、私は度重なる無理な運動と疲労と緊張で足を吊ってしまったのだった。「え、ちょ……どうすんの?」「あはは……どうしよう。」一同に沈黙が溢れる。どうしよう……さすがにピンチすぎる。そんな焦りを感じていると、1人だけ立ち上がってくれた。「……遥香さん、運転変わりますか?」そう、普段は頼りになるメイド長……神宮寺ことねさんだった。「え、ことねさん……免許持ってます?」「持ってますよ、ほら。」ことねさんの免許を見るとゴールド免許のマニュアルも乗れる免許があった。「す……すげー!ゴールド免許だ!」「運転はするんですか?」「……ええ、たまに彼とロードスターで峠とか行くので、ある程度は。それに加えて、今日明日だけセブ〇イレブンでワンデイ保険……入れておきました。」完璧すぎる、流石だ。今日はバテてる姿しかみなかったけど、急に本来の彼女が見えてきたようだった。私は彼女を信用して運転席を譲る。ことねさんは席とミラーを調節したら、ドライブに切りかえてアクセルを踏む。「……おお、なかなかトルク回って早いですね。」「ことねさん!?ちょっと早いんじゃない?」彼女は想定より少し飛ばし気味で発進をした。それ、ガードレール曲がれるの!?しかし、カーブの前で彼女はギアを動かして原則し、見事峠道を我がものにしていた。「……なかなかいい車ですね。」「ことねさん!?私より運転上手いですね。」
last updateLast Updated : 2026-08-30
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遥香と秘境の吊り橋物語 10話

「いらっしゃいませ!」「あの、予約していた天野です。」旅館に入るとレトロな外装とは打って変わって中は何度か内装工事をしたのか美麗かつ比較的新しい作りになっていて、妙に安堵に近い感情が私たちを落ち着かせる。「天野様、お待ちしておりました。本日こちらの和室でございます。」「ありがとうございます。」直輝は既にネット予約で部屋を手配していてチェックインも彼一人で済ませてしまった。ずっと引き篭ってゲームしていたあのころが既に遠い昔のように感じた。それくらい、今の彼は大きく成長しているのである。そして、直輝は部屋を案内し全員部屋に入ったのだが、あまりの豪華さに私たちは言葉を失った。「おお〜……めっちゃいい。」「……直輝さん、中々部屋選ぶセンスありますね。」そう、この部屋は10畳の和洋室でセミダブルベッドが2つあり、温泉が付いている。しかも裏庭を眺望することができるので畳の香りと川根茶の茶香炉の香りを楽しみながら、自然に癒される部屋だった。「……最高ですね。こういう日はセブンスターで……。」「すみませんことねさん。ここ禁煙で……喫煙所しか吸っちゃ行けないんですよね。」「……ぐふっ。」なんかことねさんが吐血してるように見えた。いや、ヘビースモーカーなのは分かるけど、タバコに命かけすぎじゃないの!?「……じゃあ、喫煙所行ってきましょうかね。」しかし、気がついたら私たちは畳に座り込んではおしりに根が張ったかのように体がピクリとも動かなかった。急に運動や運転の疲れがどっしりと身体にのしかかる。「そういえば、まだ夢の吊り橋行ってないな……どうする?」直輝がボソッとそう呟いてみんな考える。今は16時をすぎた時間帯、一応行けなくはないけど……。舞衣ちゃんは嘔吐してから目が虚ろになってるし、彩奈ちゃんも汗をかいたのか化粧が崩れ気味だった。ことねさんは……タバコが吸えないショックで動けないみたい。「直輝、明日の朝に行かない?母ちゃんはもうクタクタよ。」「そうよ、あの漫画でもこの時間に出発して帰り道に街頭すらない所を歩いてたんだから。彩奈も明日行くに1票入れます。」「うぁ〜……。」舞衣ちゃんは最早日本語すら喋れてなかった。「しゃあないな……あ、川根茶買ってきたし淹れるね。」そう言って直輝は電気ポットをつかってお湯を沸かし、急須に茶葉を入れ
last updateLast Updated : 2026-08-30
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遥香と秘境の吊り橋物語 11話

湯気が視界をほんのりと揺らぎ周りを岩肌が囲っている。中には木々が植えられていて、その先に竹の塀があり、その先には寸又峡流域の山並みが山並みに萌えていた。「うっわぁー!すげぇ露天風呂!」今日は私たち以外はまだ誰も入って居ないみたいで軽い貸切状態になっていた。ある意味この瞬間も強い贅沢である。体を洗ってから温泉に入っていく。すると、足を湯に入れただけで疲れが湯に溶ける感覚があった。そして、ゆっくりと肩まで浸かる。「あぁ〜気持ちよすぎる〜。」「……確かに、あれだけ疲れたあとだと格別ですね。」私たちはあまりの気持ちよさに感嘆を漏らす。今日だけの疲れじゃない、今週……いや、下手すれば今月中の疲れが溶けてしまいそうだった。「ねえ、ことねさん?」「……はい、遥香さん。」「歳を取ればとるほど……温泉が身に染みるわね。」「……なんか分かります。体の芯まで湯の気持ちよさが響き渡るような、そんな感覚あります。」私たちは、もう世間では平成1桁ババアなんて言われるけど、こうやって歳をとっていくのを実感する。でも、それも悪くないような……そんな気持ちが背中を押すような感じがした。「ちょっとー2人とも……まだまだ歳を受け入れるには可愛すぎると思いますけどね。」「あはは、ありがとう彩奈ちゃん。」彩奈ちゃんがフォローを入れてくれる。とはいえ、彼女も温泉の気持ちよさにご満悦のようだった。「それにしても、彩奈ちゃん体が引き締まってて羨ましいわね!身体鍛えてるの?」彩奈ちゃんの身体を見ると、クビレができていて全身スレンダーである。お腹も引き締まり、むしろ若干腹筋が割れかけているし何か運動をしてないとこうはならないだろう。「ああ、ちょっとホットヨガを……。」「「ホットヨガ!?」」私の知らない世界だ……今の子達って美意識ほんと高いわね……。私もホットヨガすればこの二の腕とか……お腹とか引き締まるかな。経産婦になると、どうしても産んだ時の後遺症でお腹が垂れてしまくし女には悩みは尽きないものである。「もしあれなら、今度みなさん体験でもどうです?」「だって、どうする?ことねさん。」「……私も、身体が硬いし……正直デトックスしようかな。」どうやら彼女は彼女なりに悩みがあるようだった。「ちょっと!私を置いて話しないでください。」「え、舞衣これ以上綺
last updateLast Updated : 2026-08-30
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遥香と秘境の吊り橋物語 12話

宴会場は和を強調とた部屋になっている。これから会席料理を用意するということで接待にでも使えそうな広々とした空間になっている。「うわぁ〜!会席料理楽しみ!」「……ふふん、今日はちょっとコアなメニューにしてみたんだよ!」少し得意げに直輝が微笑む。どうやら、1つ隠し種があるようだった。座り出して、中居さんが一通り説明をしてくれてから、料理を運ばれてくる。一見普通のものと違いはないけど……あるものに目を張った。鍋があるのだが、その中に味噌と豚肉が乗っている。しかし、豚肉にしては若干風味……というか癖の強い匂いが感じ取れた。「もしかして、直輝これって……。」「母ちゃん、お目が高いね。今日は秋のジビエプランで行くことにしました。」なんというチョイス。秋なのもあるけど山の中ならではのプランである。つまり、この豚肉に見えたものは猪肉だった。しかし、女性の割合が高いけどかなりニッチな選択でよかったのだろうか?周りの女性を見る。「……ふむ、こういうのは焼酎か日本酒で。」「食えればなんでもいいわ!お腹空いた!」どうやらことねさんと舞衣ちゃんのメイド組は特に問題なさそうだった。さて、彩奈ちゃんはどうだろうか??「……。」いや、やけに冷静だった。流石に直輝のチョイスミスが裏目に出たのかと不安になった。「だ、大丈夫……?彩奈ちゃん!」「え?ああ……大丈夫ですよ。」話すと反応としては普通だった。「だって私……、実家でウシガエルとか、イナゴとか食べるからジビエ好きなんですよー!」ええええええ!いやまさかの事実である。弱いどころかこのメンツジビエの耐性はかなり高いみたいだった。ホッとしたところで日本酒を注ごうと瓶をもつ。「ことねさん!お酌する?」「……光栄です。是非お願いします。」私はことねさんのグラスに日本酒を注ぐ。「……では私も。」「えへへ、どもども。」逆にことねさんからも注いでもらって私たちは乾杯をした。さて、まずは猪の味噌焼きを食べる。旬の野菜と味噌を塗った猪肉は相性が良く、猪の臭みを見事に味噌が消してくれている。肉自体は噛みごたえがあり、食べれば食べるほど旨みが湧いてきた。良く臭いとか硬いとか聞くけどキチンと調理すれば豚を超えるポテンシャルは十分にある食材だ。「う……うまい!」口に着いた猪の風味を日本
last updateLast Updated : 2026-08-30
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遥香と秘境の吊り橋物語 13話

私は神宮寺ことね。会席料理を食べ終え、遥香さんが酔ってしまったので直輝くん共々退場をする。そして、私と……メイドの後輩の舞衣ちゃんと、その親友の彩奈ちゃんと3人でいた。「……すこし、酔わせてしまった見たいですね。」「ですね!あんなに酔ったとこ初めて見ました!」彩奈ちゃんは実質初対面なのだが、私のつぶやきも拾ってくれる。素顔に自信が無いとこ以外はコミュニケーション能力に長けてる気がする。私もまだ一升瓶が3分の1残ってるのできちんと飲むことにした。普段はあんまり酒を飲まないのでもったいない気がする。「……舞衣ちゃんはついて行かなくてよかったの?彼氏さんなんだし一緒にいたいでしょ?」「ああ……わたしは今は大丈夫です。家族だけの時間なんですから、そこに入る無粋な真似はできません。」「……そういうとこはドライなのね。」「え、ちょっと!それどういうことですか!」すると、彩奈ちゃんがそのやり取りを見てケタケタ笑っていた。どうやら観察力にも長けてるようでもあった。「あははは!舞衣は直輝くんのこと好きすぎるの丸わかりなんだって!もう四六時中縛りつけようとしてるじゃん!」「だって、直輝くんは私のものなんだもん。できることなら24時間365日全てのことを把握してたいのよ。」え、サラッと怖いこと言ったわ。私も尾崎さんのこと好きだけど……さすがにそこまでは出来ない。「じゃあ、ここからはガールズトークと行きましょうや。ほれほれ、ねえちゃんも腹割って話してみぃ。」「……彩奈ちゃん、急にキャラ変わったわね。」「実は、私ちょっとことねさんのこと調べたんですけど……見てください!」すると、彼女は前のメイド喫茶でカリスマと呼ばれていた時代の私の写真を見る。他にもネットで「神宮寺ことね」と調べると、チェキのツーショットやライブの衣装なんかも載っていた。「……紛れもなく私ね。」「その界隈のスターみたいなもんじゃないですか!というか、メイドモードのことねさんは今のクールな印象と違ってキュートじゃないですか!その使い分けめっちゃ凄いですね!」「……そ、そうかしら……?」なんか、客以外から久しぶりに褒められたせいでちょっと恥ずかしくなる。私って褒められ慣れてないんだよね。「彩奈ちゃんもタレント性あるしメイドやったら売れそうね。やってみたら?」「いや〜私も実
last updateLast Updated : 2026-08-30
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遥香と秘境の吊り橋物語 14話

私は朝の日差しが瞼の上を照らして、浅くなってきた睡眠から一気に目覚める感覚を感じる。私は用意されていたセミダブルベッドに横たわっていた。ここまで歩いて寝た記憶はない。ほんのりと、直輝との会話だけが妙に心に残っている感覚があった。我ながらほんと息子に迷惑かけてばかりかもしれない。隣ではことねさんが寝ている。「ぐごごお〜ふがっ……ギリ……ギリ……。」「え、これことねさんの寝息?」恐る恐る彼女の様子を見る。掛け布団はベッドから転げ落ちており、シーツも剥がれている。というか、彼女も右足だけベッドから落ちていた。エレガントなイメージの彼女だが、想定よりも寝相が悪いみたいだった。そして、残りの高校生組は畳の上に布団を敷いてるのか確認をする。「すーすー。」直輝は逆に寝相もいびきも特になかった。それはいい……それはいいのだが……。「ンゴォォ…ングゥ…。」男女で少し離れるように布団は敷いてあったのだが、舞衣ちゃんが直輝の布団に入っていて直輝の身体を抱きしめていた。まさか、本能的に直輝を求めてるのか……?まあいいや、せっかく備え付きの風呂があるし、少し優雅な朝を迎えるとしましょ。そんな時だった。「おはようございます、遥香さん。」「きゃあ!?」1人だけ姿の見えなかった彩奈ちゃんがいた。既に化粧はほとんど終わっており、まつ毛にマスカラをつけてはヘアアイロンで髪を巻いて、それをワックスとスプレーで固めている。「び……びっくりした、朝早いわね彩奈ちゃん。」「ええ、あんまりすっぴん見られたくないのもありますけど、基本朝早いんですよ。基本家事も私がやってるので。」この子いいな……ストイックだし、こうして家のこともやってくれているなんて。将来いいお嫁さんになりそうだ。「ねえ、舞衣ちゃんのアレって……?」「最初は私の隣で寝てたんですけどね……行ってしまった見たいです。」「ど……どうしましょ、高校生で子どもが出来るのはさすがに早いと思うのよ私。」「いや、遥香さんも16で直輝くん産んでますよ。」「あ、確かに……。」そういえば私も若くして子供を産んだ身だった。まあ、あんまり心配しすぎても仕方がないかも知れない、現に服は着ていたし。「彩奈ちゃん……コーヒー淹れる?」「あ、欲しいです。」「わかったわ、味はどうする?」「ブラックでお願
last updateLast Updated : 2026-08-30
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遥香と秘境の吊り橋物語 15話

朝の日差しは少し山道を照り付ける。秋に差しかかるのに緑が乱反射してまるで木々の草原のようであった。水の流れる音、鳥の鳴き声などが聞こえてきていかにも渓谷という景色が拡がっていた。「ふぁ……眠いわね。あれ、直輝くんなんかほっぺ赤くない!?」「ああ、ちょっとした事故があってね……。」「ごめん……直輝、私の不可抗力だわ。」そう、直輝の頬が腫れてるのは私が咄嗟に全裸を見られてビンタしてしまったからである。ぶっちゃけ直輝は何も悪くない。私が着替えを忘れて全裸で部屋に突撃したらそんなシチュエーションがないとはいえないからだ。「私が売店行ってる間にそんな面白いことに……。どう?直輝くん、久々の遥香さんの裸は興奮した?」そんなところをイタズラの顔で彩奈ちゃんがいじる。ちょっと!恥ずかしいからやめてよ!息子に全裸の解説って結構罰ゲームじゃない!そんなある意味ドキドキした私に対して直輝はドライに続けた。「いや、んなわけないでしょ。彩奈だって親父さんの全裸みたらどう思うよ?」「……身の毛がよだつわね。」「まあ、そんなとこだ。」「直輝!?それはそれで傷つくんだけど!?」「いや、息子に欲情される方が問題でしょ!」こうして私たちは朝から賑やかである。朝7時ちょうどだと言うのに若者はエンジンがかかるのが早い。「……眠い。」「ちょっとことねさん!昨日飲みすぎたからですよ。」「……ごめんなさい。今日は運転は控えて後ろにいますね。」しばらく林道を進んでいくと、トンネルがある。照明が比較的新しいものが照りつけていて、オレンジ色の光が綺麗に照らされていた。そして、トンネルの中を足音と熊よけの鈴が進む度に響いて不気味に鳴らしていた。やがて、トンネルを抜けさらに進むと下り階段で崖を下るようになっている。その中を……ゆっくりゆっくりと下る。「な…中々…下り坂って足に来るわね。」「……。」ことねさんは、二日酔いで青白かったがより蒼白になってる気がした。舞衣ちゃんの次はことねさんがゲロインになるのかしら……。そんな余計な心配をしていると、ついに夢の吊り橋が目の前に現れた。「……こ、これはやばいわね。」橋は数十メートルの長さになっていて、真ん中は日本の金属の板が道になっている。それを囲むように、細い木材が等間隔で空けられてるのだが、8m下の水面が
last updateLast Updated : 2026-08-30
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遥香と秘境の吊り橋物語 16話

「すみません、チェックアウトで。」「かしこまりました。それでは行ってらっしゃいませ。」身支度を整えて、遂に私たちは出発する。時刻は10時、空は青く澄みわたり昨日は気が付かなかった紅葉が見えてくる。この秘境にも明確に秋が来た事を肌で感じていた。「……あの……遥香さん?峠道ですけど大丈夫ですか?」「うん!昨日で慣れたから大丈夫!」全員をCX5に乗せて遂に寸又峡を私たちが離れる。車の中に音楽が流れる。最初に流れた曲はCreepyNutsの「のびしろ」だった。「へー!遥香さんもラップの曲聴くんですね!私も好きですよ、このアーティスト!」「あら彩奈ちゃんも分かるんだ!」私は最近この曲が好きだ。サボり方とか逃げ方みたいなネガティブなワードを柔らかい頭とか、それも経験でのびしろしかないと背中を押してくれるようだった。私だってAV女優をしてたけど、それも大切な経験だったし、みんなと知り合えたこと、この道で挫折したことも全てがのびしろだと考えると、この狭い道のりも心地よく感じた。時折見える断崖絶壁は紅葉のパノラマをみせる最高の展望台に見えたし、奈落には美しい川が広がっていたし、世界は厳しい自然と美しい自然が共存してると昨日とは全く違うものに見える。「すごい、昨日あんなに苦労した道が……。」「へへ、母ちゃん……のびしろしかないわ!」「うるせえよ、でも……今日は任せたぜ母ちゃん。」「直輝こそ、ナビ頼むわよ!」対向車も怖かったけど、遠目で分かれば路肩に止めて譲ればいい。私はあっさりと昨日の峠道を抜けて昨日の道の続きを進むことにした。さて、ここからが本番である。道は少しずつ険しくなる。落石も目立ち、道はボロボロしてきて道も狭くなる。でも、車通りは少ないし私は妙にリラックスをしていた。「あ、遥香さん!もう少ししたら井川大橋ってとこ行きませんか?」「井川大橋?聖地なの?」「はい!あ、でも今朝みたいなしんどい橋じゃないので!すぐ寄れますよ!」「いいじゃない!直輝、ナビよろしく!」「あいよ!」私たちは井川大橋に舵を切る。道は多少は険しいものの、まだまだ進めた。紅葉に井川湖というグリーンのダム湖がみえてきて、これはこれで変化を感じて飽きることを知らなかった。「そういえばことねさん、静かね。」「ああ、寝てますよ。」「寝てる!?」確
last updateLast Updated : 2026-08-30
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遥香と秘境の吊り橋物語 17話

道はどんどん険しくなっていく、先程の寸又峡を彷彿とするような狭い道が点在し、そんな道が数十km続いている。妙にトンネルの頻度が多くなるのを見て、そろそろトンネルを使わないと行けない道が増えてきたのかと自然の険しさをさらに知ることとなる。ほんと、中部地方は自然という巨大な障壁が多くRPGで越えられない山があるのだけど、まさにこういう山を指すのだとつくづく感じてしまう。「……ここは。」「あ、ことねさん起きた!おはようございます!」どうやら井川大橋を超えてから多少時間が経っていたこともありことねさんは何事も無かったかのように目が覚める。少し頭が痛むのか、こめかみの部分を抑えていた。「二日酔い大丈夫ですか?酷い顔してましたよね。」「……そうですね、まるでダムの放水の如く吐き出してしまいそうでした。」「もう〜!なんかちょっとずるいですよ。」舞衣ちゃんが少しだけ頬を膨らませて顔をしかめる。「今回の旅行でリバースしたの私だけじゃないですか!ことねさんもこちら側にいらしてくれば良かったのに!」ああ、すごくどうでもいいことにこだわってたみたい。「……ふふ、淑女たるもの吐くのはご法度ですよ。」「あー!なんかそのドヤ顔ムカつきます!いいんですか?昨日酔っ払っておじさんにハグ…。」「やめとこ!舞衣!?あれは何も無かった!真実に到達することは決してない!」想定より暴走してたみたいだ。おじさん…ハグ……?いけないいけない!彼女の美麗なイメージを損なってしまう。「……え、ちょっと!私何してたんですか?」「んー……長くなるんですけどね。」☆☆私は佐倉舞衣。直輝くんの彼女である。これは、昨晩の夜の出来事だった。「……さて、レストランも閉まるしいきますか。」「はい!」「いや〜楽しい時間だったね、舞衣!」「確かに!ガールズトークって適度にやってみるもんですね!ことねさん、そろそろ部屋に戻りますか!」しかし、ことねさんはその時から異変が起きていた。ことねさんは売店に直行したら500mlの缶を6缶購入し出した。そして、1缶空けては一気飲みして飲み干してしまう。あまりの突発さに私たちは目が点になる。「あ……あの、ことねさん?さすがにこれ以上は……。」「うるへぇ!これが飲まずにはいられるかってんだァ!」あまりの豹変さと凄みに私たちは恐れおの
last updateLast Updated : 2026-08-30
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遥香と秘境の吊り橋物語 18話

「畑薙湖……着いたーーーー!!」慣れない道を進んでやっとのこと私たちは畑薙湖に到着する。酷く険しい道だった。道の舗装がボロボロなところはあるし、落石にはヒヤッとさせられるしとにかく肝を冷やされてばかりだったと思う。私はしばし運転の疲れを癒すべくダムに乗りかかり体を休めていた。畑薙ダムは片方は溜まった水が満ち溢れており、飛び込んだら水で体が冷やされて気持ちよさそうな深さをしていた。反対側を見ると……妙にダムが作る人工の流線型が高さによって恐怖感を感じてしまうほどだった。コンクリートは冷たく硬そうで奈落に落ちる恐怖感が本能をくすぐってしまう。こんなものを大自然の中人間は作ってしまうのだ。そりゃあ他の生物とは明らかに違う生態系を持ってしまうのも納得してしまう。「さて……なんか疲れちゃったな。そろそろ下流に戻る?」私はみんなを見て提案をしようと振り返る。もうここまで来たのだ。後はゆっくりグルメ旅でもしながら……。「直輝くん!ここまで来たら畑薙大吊橋まで行かなきゃ損だよ!」「そうだね、彩奈!いやぁ……スリルがやばいって聞いたけどどんなとこなんだろうな。」「……熊よけ鈴持ってきましたよ。」いつの間にかみんなはその先の吊り橋を目指して歩き出していた。「ちょ、待ってよ!私も渡るってば!!」ダムの奈落に私の叫び声が反響してしまう。こうして私たちは今回の旅の終着点である畑薙大吊橋を目指すことになったのだった。☆☆「それにしても……凄く酷い道だね。」ここまで行くと、道の舗装はほとんどされていない。道が少しぬかるんでる感じがするし、落ち葉も散らかってカーペットのようになっていたけど、泥が着いてるので少しくすんだ色をしている。それだけでも、人の手入れが入らない土地なのだと感じる。「熊とか出ないわよね?」大自然にいると自分のテリトリーに外れてるせいか全身に緊張感が走る。最近、ニュースで熊の事件が多発してるのを思い出すと余計に緊張し、手のひらが汗ばむ感覚があった。「……熊にあった時には対処法があります。」「あ、なんか聞いたことあるわね!どんなのだっけ?」ことねさんは涼しい顔で歩いて先導してくれる。博識な彼女のことだ、きっと正しい対処法で何とかするのだろう。「……ぶちのめすんですよ。自然界では舐められたら終わりです。」ヤンキーの世
last updateLast Updated : 2026-08-30
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