寸又峡への道のりは酷く険しいものだった。なんと言ってもヘアピン坂だらけなのだが、それに加えて時折車1台しか通らない道が点在しており、最初は賑やかだった車内も少しずつお通夜のような沈黙へと変わっていって私もプレッシャーで押しつぶされそうだった。「な……なんというか……道が狭いね、母ちゃん」「そうね……まあ安全第一で行くけど。」「あ、母ちゃん……バス来てるよ。」「バスっ!!??」対向車が来ないように祈っていたが何故かバスがこの道を運行していた。私は急いでバックして広めの路肩に止まるのだが、今にも崖に落ちてしまいそうだった。バスは40km以上のスピードで駆け抜けていくが私にとっては爆速で進んでるようにも見えてしまった。「……ん?母ちゃん、もうバス行ったよ。」バスはとっくに過ぎたというのに私はアクセルがふめなかった。「吊った。」「え?」「足吊った。」そう、私は度重なる無理な運動と疲労と緊張で足を吊ってしまったのだった。「え、ちょ……どうすんの?」「あはは……どうしよう。」一同に沈黙が溢れる。どうしよう……さすがにピンチすぎる。そんな焦りを感じていると、1人だけ立ち上がってくれた。「……遥香さん、運転変わりますか?」そう、普段は頼りになるメイド長……神宮寺ことねさんだった。「え、ことねさん……免許持ってます?」「持ってますよ、ほら。」ことねさんの免許を見るとゴールド免許のマニュアルも乗れる免許があった。「す……すげー!ゴールド免許だ!」「運転はするんですか?」「……ええ、たまに彼とロードスターで峠とか行くので、ある程度は。それに加えて、今日明日だけセブ〇イレブンでワンデイ保険……入れておきました。」完璧すぎる、流石だ。今日はバテてる姿しかみなかったけど、急に本来の彼女が見えてきたようだった。私は彼女を信用して運転席を譲る。ことねさんは席とミラーを調節したら、ドライブに切りかえてアクセルを踏む。「……おお、なかなかトルク回って早いですね。」「ことねさん!?ちょっと早いんじゃない?」彼女は想定より少し飛ばし気味で発進をした。それ、ガードレール曲がれるの!?しかし、カーブの前で彼女はギアを動かして原則し、見事峠道を我がものにしていた。「……なかなかいい車ですね。」「ことねさん!?私より運転上手いですね。」
Last Updated : 2026-08-30 Read more