All Chapters of 僕のお母さんは△▽女優: Chapter 251 - Chapter 260

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松本みなみの婚活日記 10話

ジャズのレトロな曲が流れてる。バーテンがロックアイスを包丁で切ってブリリアントカットをして、ウイスキーの入ったロックグラスにクルクルと回してオシャレに渡す。なんというか、ここのバーテンさん妙に技術にクオリティがあった。その後にアルコールに火をつけて、テーブル横一列に撒き散らしてカウンターテーブルに日の壁ができる。青く弱い火が柔らかく萌えていて、その中を切るようにロックグラスをシュッと出すと、その部分だけ火が消えて初めてそれが危険行為ではなくパフォーマンスだと理解する。「お待たせしました、こちら白州のロックです。」「いや!びっくりしたわ!ちょっと〜、吉良さんと何話してたか忘れたじゃない!!」途中までお互いの経緯を話してた気がしたけど、私が調子に乗って白州飲みたくなってお願いしたらとんでもないパフォーマンスが着いてきた。「……お気に召しませんでしたか?」「いや!最高のクオリティよ、ありがとう!!」この店ががらがらなのは……恐らくパフォーマンスのクオリティが高すぎるのと、欲しくもないのにパフォーマンスしちゃうからだとこの瞬間初めての私でも理解してしまった。「……お前、多分もうちょい抑える方が儲かるぞ〜。」「いやいや!ここ最近だとあんたがエースなんでな!そりゃあVIP待遇にもなるさ!」そして、このバーテンさんちょっと空気が読めなかった。色々勿体ないな〜このバー。私はロックグラスの白州を呑む。程よく氷水でアルコールが入り交じり、白州独特の柑橘のような香りがこの空間を楽しませてくれる。「で、2人はどんな話をしていたの?」「ああ、そうでしたわね!私が教師で吉良さんがエンジニアさんという話をしていたところでした!」「いや〜ほんと、吉良さん社長だからね〜、こう見えても凄いんだぞー!」吉良さんはパッと見は頼りない印象だ。肌が痩せこけてるし、目の下のクマもあり冴えない雰囲気が全身から出ている。なので、私はバーテンの言葉に半信半疑だった。「いや!みなみちゃん疑ってるでしょ!」「……バーテンさん、たまに適当なんだもん。」「あ、バレた?」「もう!ほんと困った人!」そんな様子を苦笑いしながら同じ白州を飲む吉良さん。ほんと、缶ビールだけの私と違って酒を嗜んでるようだった。「でもな!元々は上場企業で月収40万も貰ってたよな!すぐ吉良っちの作
last updateLast Updated : 2026-09-01
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松本みなみの婚活日記 11話

秋って微妙な季節だと思う。校舎の影が全身を包む、ストーブの設置にはまだ早いので私達も防寒着を来ながら作業することも多いのだ。今日の私は雑念が少ないのか、作業はかなり捗っていた。というか、吉良さんと接して私なりの良いコミュニケーションが身についた気がする。「あの……諏訪先生?」「はい?」いつも笑ってる諏訪先生が少し焦ってるような表情をしている。実はこの先生て仕事をしてるフリしてスマホでネットニュースを見ていたので私はこの男を上手く使うことにした。「今日の午後って空いてますか?」「あ……ちょっと予定がだな……あはは。」「予定って、14時の授業以外になんかありましたっけ。」「げ。」げってなんだ、げって。先生は諦めてため息をついた。「……空いてます。」「良かった!実は17時の生徒会の会議出席していただきたいんですよ、テストの採点と副担で持ってるクラスの生徒の面談があって……ベテランの諏訪先生にしか頼めないんですよ!」「それは……わかりました!この!ベテランの!私にお任せ下さい!」そういって諏訪先生は調子に乗って職員室を出てしまった。というか、午後ほとんど仕事がないのにこの人はだらだらネットニュースをみて仕事を終わらそうとしていたのだ。おかげで私もテストに集中できる。特に成績が悪い子に関しても、何が分からないかをキチンと出来るようにスキマ時間で面談してなんとか点数は上がった。私は……今まで1人で全部やろうとしていたから効率が悪かったんだなとおもった。諏訪先生のスケジュールだって基本的にほぼ空いている。時折、私が書類の承認とかすればいい。さーて、一通り仕事もこなしたし……コーヒーブレイクでもしますか!そう思って廊下を歩くと、苦手な布施先生とすれ違う。「お疲れ様です。」「ああ、お疲れ様です。松本先生。」また何か言われるのではと思いそそくさと歩くと布施先生は咳払いをする。「ど……どうかしました……?」「ああ、いえいえ……最近松本先生頑張っていらっしゃるなと思いまして、テストの点数も上がってましたし、何より生徒からの評判もいいんですよ。」「え、ほんとですか?」「私が嘘をつく必要ありますか?」ちょっと意外だった。このネチネチした先生が人を褒めることなんてあるのかと感心してしまうほどだった。「……この調子で頼みますよ。」
last updateLast Updated : 2026-09-01
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松本みなみの婚活日記 12話

私は残りの仕事を終えて、今まで遅れ気味の仕事もちゃんとこなして、少し強めにエンターのボタンを押した。「おわったーー!!」定時ちょい過ぎくらいに満足いくくらいまで仕事を終えるとなんか気持ちがいい。なんというか、腹の奥に貯めてたエネルギーを一気に解放する感覚がある。いつもなら、ここでマッチングアプリとかで会ったりはするけど……。「今日はとにかく体を労わろう。」私はとにかく疲れていた。昨日も夜遅くまで外にいたし、頭もぶっちゃけ痛かった。そろそろビールの飲みすぎで尿酸値とか引っかかりそうだし、今日は休肝日にしよう。「あれ、先生珍しいね……。」「あら、天野くん!あなたも今帰り?」「まあ、そんなとこですね。会計書類もやっておきましたよ!確認と承認お願いします。」「さすが!次期議長はやることが違う!」「……まあ、会計が決まり次第引き継ぎますけどね。」最近仲良くしてくれる生徒会会計の天野直輝くんだった。いつものように高校生とは思えない落ち着きぶりで仕事をこなしてくれる。「あれから婚活どうです?」「全然!もうね〜マルチの勧誘受けたり、2時間待たされてドタキャンされたり……合コンで惨敗してホストで散財しちゃったりよ。」「だ……大丈夫ですか?」いかん、ちょっと言いすぎた。流石の天野くんもドン引きしている。「うん、私も色々経験して強くなったみたい。」「確かに、先生でも辛いことがあっても前進んでるんですね。俺も前向かなきゃな〜。」「え、天野くんはまだやりたいこととかないの?」「それが……全然です。」意外だった。高校生にしてはストイックな印象受けたし、やりたい事とか決まってるのかなとか思った。「じゃあ、あなたがやりたいことを決めるか、私が先に結婚できるかの競走ね。」「なんすか、その不毛な競走は。」天野くんが冷静なツッコミを入れる。私はスルーをして書類に目を通したが不備は1つも見つからなかった。「逆に……なんで松本先生は先生になろうとしたんですか?」「んー、なんでだろうね。」「いや、質問を質問で返さないでくださいよ。」「冗談よ。」ふと……なんで教師になったかと心に問いかけるけど、思えばほんの些細なきっかけだった。「私ね、昔3年くらい好きな人がいたの!」「一途だったんですね。」「その人ね、顔はかっこいいし優しいんだけど勉強
last updateLast Updated : 2026-09-01
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松本みなみの婚活日記 13話

それからというもの……しばらく私は淡々と仕事をこなした。マッチングアプリで何人かの男に会っては色んな人がまた出てきた。身体だけを求める人や、金は持ってるけど攻撃的な人、悩みがありすぎて結婚よりも前段階で問題を持ってる人とか、数をこなせばこなすほど私は少しずつ自分はどういう人が良くて、どういう人に嫌悪感を感じる事が出来た。今日は休日の日曜日。昼間にまた男とのデートをしてみたけど、会話が盛り上がらずに私の結婚という日はまだまだ幻想に近く、雲を掴むような感覚に陥っていた。結婚……そういえば、私の実家はここの近くだったな。そう思って、私は実家の家へと足を運ぶのであった。「ただいまー。」もう十何年も言っていたこの言葉が久しぶりに感じる。きっと私は親に会う回数がこの頻度だとあと100回も無いのかもと思ってしまった。母親も居ないし、誰の声もしない。私の家はそんなに仲は良くない。いつも金の話で両親が揉めては、お互いの時間を別々に過ごしてる感じだった。それもあって、私は数年間帰ってくることをしなかった。誰もいないのかとおもって、帰ろうとすると父親が声をかけた。「みなみ……?みなみなのか?」「……父さん。」私の父親がいた。毛髪はなくスキンヘッドに近い髪型で、土日休みでだらけてたのか無精髭が目立つ。「あ……ああ、父さん。」「もう行くのか?」少し、父親が寂しそうな顔をしていた。いつもは母親と喧嘩してる父親だったから、こんなにも弱々しくなるのかと思い、私はふと足を止める。昔は金髪でかっこよかったのに、今は妙に歳をとった感じがした。視力は良かったはずなのに眼鏡をかけてるし、ハンサムだった笑顔も妙にやつれている。少し別れるには早いと感じてしまった。「やっぱもう少しいるよ。」「ああ、ゆっくりしてきなさい。」そういって、私は実家のコタツで父親とふたりになる。もうそんなに話すことがないはずなのに、ここでまた暫く会わないと後悔に繋がるかと思った。「最近は、どうだ?」「んー、まずまずってとこ。それにしても父さんと2人なのは……なんか久しぶりね。」「もう学生の頃以来じゃないか?」「そうかも。」昔の父は怒ると手が出て怖かったのに、妙に対等になった気がして会話が弾んでしまう。大きかったと思った家もこんなに狭いと感じたのは、きっと気のせいじ
last updateLast Updated : 2026-09-01
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松本みなみの婚活日記 14話

再び私は最寄りの駅のバーの入口前に立つ。少しだけ電車に揺られて規則正しいリズムに揺られたせいか妙に落ち着いていた。ぶっちゃけ、私の心はもう結婚は諦めかけていたのと、それでいてなぜ私はここに来たのだろうと深いため息をついていた。どうしよう、面倒くさくなってきた……断りの連絡をしてひたすら犬の動画でも見てようかしらなんて思ってさえいる。大丈夫、私だって社会人だ。調子が悪い時くらい休んでも……。「……松本さん?」「ぎゃああああ!?」「うわあああ!!」突然の私の悲鳴に吉良さんもびっくりしてしまった。相変わらず落ち着いてはいるものの、弱々しい。「……大丈夫ですか?」「お気になさらず、少し考え事をしていたもので。」「ならよかった!この前のお礼なんでお酒奢りますよ!」吉良さんは最初会った時に比べて満面の笑みで話しかけてくれている。そういえば、マッチングアプリで会った男とか一回会ってブロックされてることが多かった。この男ともあの晩だけの男とさえ思ってたなと思い私は彼の奢りのハイボールを飲み干す。「ぷはー!」「いいね、みなみちゃんいい飲みっぷりだよ!」相変わらずこのバーは客がいないから妙にあっとほーむな感じがある。暗いし、ジャズの音が妙に心を落ち着かせる。久しぶりの酒はいい。ストレス感じてないと思い込んでいたけど心の中のドロっとしたものが気づかないうちに溜まっていたことに気がついていた。それをいとも簡単に吐き出させてくれる。「今日はじゃんじゃん飲んでください!」「いや、なんかパパ活みたいで嫌なんで割り勘にしますよ。」「え……パパ……?」いかん、酔った勢いで変なこと言ってしまった。バーテンはニコニコしてるけど、吉良さんは少しショックな顔をしていた。「パパ活なんてやったことないからね!?普通に婚活とかしてるだけだから!」「あ〜よかった。俺はてっきり、みなみちゃんがおじさんに聖水でも売ってるものかと……。」「バーテンさん?ちょっといい……?」「んー?なんだい?俺の顔でもじっくり見たいのかな?」手招きしてバーテンさんは顔をちかづける。私は、この失礼な男を思いっきりビンタした。パァン!と店内に弾けるような音が響き渡る。「いってえええええ!なにすんのよ!」「いや、お前それは殴られるぞ普通は。」「なんだよ!吉良っちまで!」
last updateLast Updated : 2026-09-01
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松本みなみの婚活日記 15話

私は、次の土曜に吉良さんとデートをする事になった。何故だろう、今までは何となくセッティングしていたデートが妙に緊張している気がする。私は勢い余って吉良さんにキスまでしてしまった。本当に何してるのだろう、私。思い出すだけで頭が沸騰するかのように熱くなり、血が昇ってるようなかんじがした。あー!もう、ばかばかばか!!とにかく私は布団に入り、天井を見つめると……そこから少しずつ気が遠くなるようで、ゆっくりと意識は闇の中へと進んでいった。どうやら、気分の昂りよりかは疲れが勝っていたようで眠っていたことにも気が付かなかった。☆☆ついに、デート当日が来てしまった。ここ1週間準備をできたかと言うと、ぶっちゃけ何も出来ていない。朝から乱雑に置かれた化粧品を見て悩むばかりだ。結構昔に沢山買ったのに、結局4~5品しか使ってなくて後の使ってない化粧品はまるで屍かのように転がっていた。その中で普段使わないものを使ってみようかと思う。例えば、チークをして可愛くしたりとか……まつ毛も少し多く見えるように………って、私なぜタイプでは無いはずの吉良さんにそこまで気を使ってるんだろう。「……まあ、少しだけ、ほんの少しだけ変えればいいか。」私は、リップを付けて、マツエクをする程度に留めた。服装も少しだけいつもよりオシャレにタートルネックとコート、そして普段滅多に履かないスカートと、どうせ寒いからタイツを履いてブーツで仕上げることにした。黒髪は今回はストレートだけど少しだけボリュームが出るように巻いて、待ち合わせの新宿駅へと向かうことにした。「まあ、少し行って飲んで帰るくらいにするか。」そう言って、私は家の玄関を出る。マンションを出ると、いつも通りのオートロックの電子音だけが無機質に響き渡っていた。☆☆新宿駅は相変わらず人で溢れていた。南口なんかはバスタがあるので日本全国からの観光客がまるで小さな滝のようにいくらでも流れてくる。道路を挟むと、政治活動やライブ活動なんかが頻繁に行われていて、そこをたくさんの人が素通りする。新宿というのは活気と無関心が入り交じるカオスな街だと来る度に感じる。でも、その感覚が東京育ちの私にとっては当たり前のように感じる。さて……あの男はどこにいるのやら。待ち合わせとは言っても人が溢れていてわからない。すると、電話がか
last updateLast Updated : 2026-09-01
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松本みなみの婚活日記 16話

列車は普段よりも少し早くどんどんと駅を通過していく。私は小田急線はせいぜい町田くらいまでしか行ってなかったのだけど、相模大野を通過する頃には神奈川県でも広大な田園が目立つようになって同じ列車なのに見ている景色が少しずつ変わってるように見えた。吉良さんは、さっきまで取引先とやり取りをしていた様子だったのだが、一通り終えるとカバンの中から何かを差し出した。「松本さん、これ……よかったら。」温かい缶コーヒーだった。しかも私がいつも学校の屋上で飲んでるやつ。味も微糖だったので、とても良いチョイスだと言えるだろう。でも、妙に私の心を見透かされてるようで内心穏やかではなかった。「ありがとうございます。」お礼を言って私は退屈な田園風景を見ながらコーヒーを飲む。今日は全国みぞれや雪の予報なので山を見ると曇っている。山肌が少しだけ白みを帯びていて雪が降ってしまいそうでもあった。電車の中は温かいけど、妙に暖房で不安定に温められたので背中は汗ばんでるのに手足が妙に冷たい。そんな不調をコーヒーが温めてくれている。「お口にあいました……?」少しだけ、吉良さんが不安そうな顔をする。まるで、初めてお手をして合ってるか分からない犬のようで妙にきゅんとしてしまう。普段なら突き放すけど、今はそれではないと感じてしまった。「100点です。普段これしか飲まないので!」「そうなんですね!」すると、吉良さんは小さなメモ用紙にペンで紙に松本さんは微糖が好きと書いてあった。「ちょっと!?なにやってるんですか!」「え……あ、すみません。僕覚えるのが苦手で、仕事でも取引先の要望とかメモするようにしてるんですよ。」変わってるとおもったけどどうやら習慣でやってるみたいだ。でも、なんだろう。私の事をメモしてくれるのは妙に満たされてる感じもする。この人、いつも一生懸命なだけなんだよな。「私のメモどれくらい貯めてるんですか?」「え!?いや……ちょっとみせられないですよ!」「えー?見せてくださいよ!」私は強引に彼のメモ帳を見ると、こと細かく私の事が書いてあった。社会科教諭で生徒に地理子とニックネームをつけられてること。生徒会顧問をしていて、業務量に不満を感じてる事。好きな物はカレーとビールであること。酔っ払ったのか、私の発言を事細かにメモをしていた。あまりの
last updateLast Updated : 2026-09-01
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松本みなみの婚活日記 17話

私たちは小田原駅に到着をする。まだまだ日は沈む気配はなく、駅は外国人やビジネスパーソン、夫婦などで賑わっている。しかし、駅に着くと吉良さんは何かひたすらスマホを見ては一生懸命検索をしている。そして、何かに気がついたかのように繁華街に近いところに出てゆっくりと並んで歩いていく。ここは下町の飲み屋街みたいな感じで、私の肝臓がアルコールを欲していた。いかん、めっちゃ酒を飲みたい。もう飲みかな?とおもったけど、吉良さんはさらに先へと進んだ。そして、しばらくすると堀に囲まれた純白の小田原城が佇んでいて、私たちは小田原城を目指していることに気がついた。「松本さん!どうです?小田原城なんて!」「悪くないですね!私一応社会科教諭なので。」「あ……そうか!じゃあ歴史を?」「いえいえ、そこまで偏差値高くないので地理教えてますよ。よくヤンキーから地理子なんて言われてます。」すると、少し意味がわからなかったのか吉良さんは疑問顔を浮かべていた。まあ、変なニックネームだから伝わりにくいか。「もしかして、僕も地理子さんと呼んだ方が……。」「殺しますよ。」流石に仕事だからと妥協してるけど、プライベートでそのニックネームは殺意が湧いてくる。何よ、地理子って。「すみません、なんか松本さんってよそよそしいかなとか思って……。」ああ、なるほど。この男は私と仲良くなりたいんだ。それで呼び方がお互い未だに苗字だから違和感があるのかもしれない。そういえば、この人からすると私って急にジョジョキスをした人だし気があるのも仕方ないか。「みなみ!」「……へ?」「みなみさんとかでいいですよ。私も誠二さんって呼ぶから。」「みなみさん……!みなみさん、みなみさん!」「ちょっと!恥ずかしいからやめてよ!」「あはは……なんか、僕苗字嫌いだったから嬉しいですよ。いつも吉良さんの息子さんとかって呼ばれてたから!」ちょっとキュンと来てしまう。なるほど、父親に対するコンプレックスだったのか。もうアラサーだと言うのに妙に可愛げがある。純粋無垢な顔は母性本能をくすぐってしまうようだった。私たちは木の橋を渡り小田原城へと入っていく。しっかりと城壁で構えられていて、それでいて小さな山のような白になっているので難攻不落の城と呼ばれても納得である。堀には鯉が沢山いて、大きさは1
last updateLast Updated : 2026-09-01
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松本みなみの婚活日記 18話

私たちは小田原城に入ると、そこは博物館になっている。当時の火縄銃や小田原城の城主である北条氏にかんする記述などがあった。「いやー!やっぱり歴史って考えさせられますよね。」「そうね、なんというか……仕事で触れることは多いけどこうやって場所や当時のものを見ると余計にそう感じます。」そう、私は何を隠そう社会科教諭。普段地理しかしないけど来年は歴史か公民もやる必要がある。私にとっては仕事に活かせそうな内容も多くて意外と見入ってしまう。でも……それ以上に。「そういえば、私昔は戦国時代が好きだったな……。」私は昔は歴女だった。特に戦国時代の武将には憧れてよく叔父にも城に連れて行ってもらったっけ。「いいですよね、歴史!そういえばどの武将が好きなんですか?」「何って……武田信玄が好きよ。」「ハゲてるおじさんが好きなんですか?」私はつい吉良さんをぶってしまった。はっ!いかんいかん……無意識に怒りが湧いてきてしまった。「……殴るわよ。」「いや!殴った後にそう言われましても!」「ごめんなさい、イタリアのギャングの間だとぶっ殺すと思った時にはその時既に行動は終わってるという考え方があって……。」「ここは日本ですし、みなみさんはカタギですよ!?まあでも、ちょっと無神経でした。」「よろしい!」それにしても誠二さんは殴られるとちょっと嬉しそうな顔するんだよな。初めて会った時よりも生き生きとしている。「あのね……誠二さん?信玄公は凄いんですよ。父親が国民に耳を向けずにとにかく戦をして国を疲弊してた甲斐国の川を整備して食料問題を解決したり、この北条氏と三国同盟を結んで強い国に攻められないように工夫したりと戦略家だったんですよ。」「へ……へぇ〜詳しいですね。」「多分、もう少し寿命が長かったら天下取れてたかも……!それに人をとにかく大切にしてたんですよ。「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、あだは敵」という教訓も考えたんですよ。」「ああ!それ聞いたことありますけど……詳しくは知らないですね。」「要は、人の信頼はどんな強固な城よりも価値があるという言葉ですね。」私は歴女と社会科教諭なのも相まって得意げに説明してしまった。いかん、くどい女と思われたかしら?小田原城の中を一通り見て、展望台に登り小田原と太平洋を一望する。風が強く、髪が乱れ今にも吹き
last updateLast Updated : 2026-09-01
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松本みなみの婚活日記 19話

私は知らない天井を見つめ、目を閉じてゆっくりと考えた。昨日は確か小田原を観光してて、そこから飲んでから酒のスイッチが入ってしまった気がする。あとは……カラオケとか行って丸の内サディスティックとか歌った気がして、誠二さんがアニソン歌って……。うん、思い出せない。きっと酒と欲求不満と動物的な衝動が走ったのだろう。いやぁ……やっちまったあーーー!なんてことでしょう、確かにここ最近殿方に誘われることはあったんですけど私実は初めてだったんですよ皆さん。なんというか、こういうのは段階を踏まえてロマンティックに……とか夢見ていたからこんなにもあっさり致してしまうとは思わないじゃないですか!酒の力、恐ろしや……。私はまるでYouTubeの実況の如く頭の中で独り言を聞いてもいない誰かにいい訳を続ける。でも妙に満たされた安心感と落ち着く感覚はきっと感情ではなく本能的にして欲しいことをして脳が喜んでるだけだと知る。「うーん……。」「ひっ!?」やばい、誠二さんが起きてきた……服がほとんど着てないから焦りを感じてしまう。「あ、みなみさん……おはようございます。」「ああ……うん……おはよう。」すると、全てを語らず誠二さんはニコッと微笑む。やめろーーーー!完全に致したあとのそれじゃねえか!妙に距離感近くなってる気がする。さて……私はどうすれば良いのか。というか、はだけた身体を見られて妙に汗ばんでくるのと身体を咄嗟に隠す羞恥心が頭の中を支配する。いかん、なんというかこうなるとは思ってなかったから下着の色上下で違うし、ムダ毛の処理も甘かったのでそこも相まって恥ずかしく感じる。部屋はまるで閉鎖空間のように音がせず、普段使わない暖房が妙に暖かく感じる。大丈夫、まだ確定はしてない。もしかしたら、夜に服が着れないほど盛り上がってから寝た可能性もある。「あの……昨日ってどうでした?」「へ?旅行全体ですか?」「ああ!いや……その、飲んだ後から……かな。」「いや〜あはは、僕もびっくりしましたよ。4件まで行ってからその後終電で帰ろうとしたら海老名で降りちゃって……そのあとにみなみさんがラブホ行くぞ!なんて提案して……。」おいおいおい、しかも私から誘ってるの!?今までセーブしてた酒の量を旅行の楽しさでリミッターが外れると私はそんな言動をとるらしい。「そ…
last updateLast Updated : 2026-09-01
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