あれから一週間は経った。地震は起こるどころか前兆すら見えることはなかった。でも分かる。今周りにある歴史のある住居は未来にはない。いつか瓦礫と共に流されてしまうからだ。沖縄の独特なゴーヤの入り交じった料理や、酒に酔う人、家族の団欒……それら全てがたった一瞬で無くなるのだ。でも、俺には勝算があった。かつて日本で起きた東日本大震災、その津波が10mを超えていたらしい。そして、今いる位置は海抜4メートル程度……今は亡き光景だ。つまりこの地震は少なくとも6メートル以上の津波があって、両親を早めに誘導すれば良い。「おーい、直輝?」問題は……母ちゃんだ。普段は決まったルートを行き来するのだが、若さゆえか突発性がある。母ちゃんの実家が厳しすぎる所以かもしれない。直人は基本一緒にいればいいけど、どうしても母ちゃんだけはコントロールできなかった。「聞いてる?難しい顔してるね。」俺は神様から両親を救えと神隠しを請け負ったとすっかり使命に燃えていてとにかく当日を静かに待っていた。でも、下手すれば母ちゃんどころかまだ受精卵の俺ですら殺しかねないと考えるとプレッシャーが凄かった。「直輝!」「はっ、すまん……直人。」「……大丈夫?」ずっと直人に呼ばれていたことに気がつく。彼はすっかり俺に興味津々だった。「良かったら、散歩しない?」「お前……学校には行かなくていいのか?」「大丈夫、僕ね……1人で勉強してる方が理解が楽なんだよね。」どうやら俺とはまた違ったタイプの不登校らしい。直人は我が父ながら本当に変人である。俺が首を縦に振るとウキウキとしながら家を出ていく。「何見るんだ?」「海だよ!沖縄の海……ちゃんと見たのかい?」「……見てないけど、やめた方が。」あろう事かこの父は海が好きだった。ことある事に海沿いを歩きたがる。「1回だけ!君にも見てほしいんだ!」「ったく……しょうがないな。」俺は今日だけ地震が絶対来ないことを祈りつつマンションを出て海辺を歩いていく。砂浜の海岸を進んでいくと、その光景に言葉を失ってしまった。「なんて……綺麗なんだ……。」砂浜が白く太陽を乱反射している。そしてコバルトブルーの海はそこがはっきりと見えて静かに波打つのが心地よかった。地震が来たら、即死だと言うのはわかっていつつも……その美しさに呆気
Last Updated : 2026-09-05 Read more