All Chapters of 僕のお母さんは△▽女優: Chapter 261 - Chapter 270

310 Chapters

直輝と別れと小さな夢 1話

中間テストも終わり、俺たちの中では少しだけ浮ついた雰囲気がざわつく。それはストレスの解放だけではなくまた違ったざわつきであった。「いやー!修学旅行たのしみだな!」「どこ行く?」「そんなの美ら海水族館とかに決まってるじゃないの!」「ジンベエザメとか見れるんだよな!」そう、俺たちは修学旅行ということで、沖縄本島に行くのだった。ちなみに俺はその会話には入って来れなかった。修学旅行は小中学校では内向的な性格も相まっていつも欠席していたからだ。だからこそクラスの中心で修学旅行に胸を踊らせる生徒の気持ちが理解できなかった。「お疲れ様、直輝くん!」「舞衣……、お疲れさん。」「あはは、ちょっとテンション低いね〜修学旅行……苦手?」この子は俺の彼女の佐倉舞衣。俺の過去を知ってるためか妙に気を使ってくれる。「いや、これは俺の問題だよ。今回はみんなもいるんだしできる限り楽しむよ。」あの頃と違うのは、ぼっちを卒業できたし、あんまり明確な目標はなかったけどとにかく勉強や生徒会も頑張ったから試練と言うよりは思い出作りとして楽しもうとしていた。それくらいは楽しんでもバチは当たらないはずだ。「よ!直輝!班は俺と組もうな〜。」この軽い口調の男は飯田蓮、次期生徒会長候補で見た目はチャラいが俺といつも一緒の悪友。あとは、クラスの橋でメイクを治してる川崎彩奈の4人のメンツが一緒の班になる予定だった。あとは、不良の虎ノ門龍が揃えばイツメンなのだが、彼だけ別クラスなので今回は班としてはカテゴリーするのは出来なかった。すると、班として作るのは5人だからあと一人が必要になるのだが……誰にしようか。俺はクラスを一通り見ると、1人ちょうどいいのがいた。「よお、修学旅行一緒に行かねえか?」「な!?」声をかけられてびっくりしたかのように、小柄な上原瑞希が焦り出す。なんでちょうどいいのかと言うと……こいつは俺と同じAV女優の母親を持ち、俺たちと接して転校してきた奴だ。最近は忙しくて疎遠だったけど誘わない理由もない。「いいのか……!?」こいつ、犬みたいに尻尾をパタパタとさせて可愛いんだよな。でも、誘う理由はもうひとつあった。「いいけど、めっちゃ誘ってほしそうに俺の後ろをウロウロするの辞めてもらっていいか?」「何が!?べ……別にさそってほしーとか思ってねえし!
last updateLast Updated : 2026-09-05
Read more

直輝と別れと小さな夢 2話

あれからどれだけの時間が経ったのだろう。俺たちはファーストフードを出前して、そしてテーブルに向かい合って座る。母ちゃんは若干嘔吐くのだが、先程よりは少し落ち着いたようでようやく話が出来そうだった。「……そんで、なにがあったんだよ。」いつもは誰よりもポジティブで養育費が払えないのならAV女優になって稼いでしまうほどの母ちゃんだ。そんな人が弱々しい姿を見せるのは俺の17年間の人生でも数回程度しかみてない。こうして見ると、まだまだ32歳……高校生の息子がいるには若々しすぎるほどで母と言うよりも姉に近い感覚だった。「その……、最近人間ドックに行ってきたんだけど。」「うんうん。」「子宮の部分にモヤがあって……再検査しにいったの。」次の言葉を言おうとすると母ちゃんは自分から言うのも恐ろしいのか震えて口がつっかえていた。健康面で何かあったのだ。「そしたら……ガンだった。」俺はその言葉を正しく認識できたか分からなかった。無音の音がより音がゆっくりに聞こえてる。頭の処理が追いついてない証拠だった。ガンって……あのガンだろ?死ぬ確率が高いっていうあの……。でも、17歳の俺にはまだまだ無縁で知識として知るにはまだまだ無用の長物のような存在だと思っていた。無敵だと思ってた母親、そんな存在が突然……死という概念がチラつくのだ。俺には言葉が出ないで静かに頷くことしか出来なかった。「あ!でも気にしないで!一応まだ初期症状みたいなもんだから……手術すれば治るみたい!」「手術ってことは……!」「うん、子宮の全部を摘出するみたい。来週……あるんだ。」どうやら、余命とか死とか……そういうとこには幸い至ってなかったようで安堵する。少しだけ希望の光が差し込むようで、俺は前かがみになって座っていた椅子にやっと背もたれに腰掛けられることが出来た。それと同時に、ファーストフードの出前がくる。ほんの少しだけ、日常が戻ったかのようでもあった。俺はお金をお支払いしてからリビングに戻り、お互いにハンバーガーとポテトを貪る。母ちゃんも美味しかったのか悲しそうな顔から少しだけ笑顔が戻る……というか、泣いたあとだからかケロッとしてさえ感じた。「まあ、一大事にならなくて良かった。」「ねぇ〜!」「じゃあ、なんであんな泣いてたんだよ。」「なんというか、頭の中でモヤモヤ
last updateLast Updated : 2026-09-05
Read more

直輝と別れと小さな夢 3話

ある海辺の小さな病棟で俺は走っていた。気持ちはとにかく穏やかじゃない、焦りと絶望が頭を支配して焦燥感に駆られる。やがて目的の部屋に着くと、そこには母ちゃん……いや、母ちゃんだったものが目を閉じて動かない。寝てるのとは違う、硬直のような気味の悪い時が止まったような姿だった。頬は痩せこけ、あの金髪もやや抜けている。そう、母ちゃんがもうここにはいなかったのだ。俺はその場で崩れ、全身を蝕む後悔に近い感覚が体を無気力にさせたあと、受け入れられない現実で大きな声を腹の奥から上げてしまう。俺は、何も出来なかった。☆☆「……きー!直輝ー!」「うわぁあ!!?」俺は見慣れた天井で声を上げてしまう。声の方を見ると、先程無気力でただのたんぱく質へと成れ果ていたはずの母ちゃんが起こしに来ていた。「もうー!どうしたの!そんなお化け見るような顔をして!!」「……生きてる。」「ちょっと!たしかに昨日ガンとは伝えたけど流石に明日死ぬことは無いわよ!」母ちゃんはいつも通りの明るさに戻っていてプンスカと言わんばかりに怒っている。なんて縁起でもねえ夢を見たんだ。どこか生気に溢れた無敵に見える母ちゃんを見て安堵する。「……すまん、嫌な夢見た。母ちゃんは……もう平気なのか?」「うーん、怖いけど……話したら楽になった!」いやポジティブすぎるだろ。やっぱメンタル鋼だわこの母ちゃん。「それに、まだまだ私は死ねないからね!やりたいこと沢山あるし、こんなに可愛い息子を置いて死んでたまるもんですか!手術は死ぬためじゃなくて……これからも毎日を生きるための試練なんだから、望むところよ!」「なんだよ、それ!」少し笑ってしまった。でも、こんな母ちゃんともいつかは今生の別れが来てしまう。今回はいい機会だった。残りの母ちゃんとの時間とか、後悔のないようにとか、いつか母ちゃんが困ったら助けられる存在になりたいとか……色々気付かされた。「手術のあと寂しがるなよー。」「えへへ、大丈夫よ。あ、お土産のちんすこう楽しみにしてるから。」そう言って、母ちゃんはいつも通りの日常を過ごしてくれるおかげで俺も当たり前の日常を過ごす。今日の朝ごはんは奮発したのかフレンチトーストだった。ホイップバターを添えてあって、グラニュー糖が溶けているのかフレンチトーストの裏面がパリパリと飴に近い食
last updateLast Updated : 2026-09-05
Read more

直輝と別れと小さな夢 4話

スマホのアラームがなる。俺は即座に鳴り響く音を止める。時刻は朝の4時。俺は目が覚めきっていた、いや……眠れなかった。今日は修学旅行当日、それに加えて……母ちゃんも手術当日なので事前入院していた。そういった状況も相まって俺は夜の8時に床の間に着いたはずだったのに、2時間おきに時計を見てはまた眠るのを繰り返して、結局遅刻してしまう夢を見ては浅い眠りを繰り返していた。「……やっば少し寝た気がしねぇ。」母ちゃんの度が過ぎたスキンシップが無く自分で起きるという感覚は、どうにも違和感を覚えてしまう。思えば半年前までは母ちゃんが起こしに来なかったらろくに起きることは出来ず、いつも母ちゃんに頼っていたんだなとぼんやりと気づく。手術……無事に終わるといいんだけど。いかんいかん!俺は目の前のことに集中しなきゃ行けない。シャワーを先に浴びて、少しだけリラックスする。少しだけ不眠による疲れと吐き気に近い気持ち悪さがリフレッシュされて、その後にコーヒーを飲む。すると、ラインの通知がなるので俺はそれを見ると……母ちゃんからだった。「おはよー!無事起きれた!?」「問題ない。」「そっかー!母ちゃんの愛のモーニングがないとダメかと思った!……実は恋しかったり?」「うっせえ、子離れしろババア。」「ひどい!?心配してあげたのに!」「……手術、頑張ってな。ちんすこうの土産買ってくるから。」「うん、ありがとう。いつも通りで決心が着いた。母ちゃんも頑張るね!」「おう。」ラインでもいつも通りすぎて少し苦笑してしまう。俺もそろそろ行かなきゃいけない。……今は11月末なのだが、沖縄の温度がはっきり言ってよく分からない。亜熱帯だったか温帯だったか、うろ覚えで亜熱帯よりの常夏だったと教科書で知った程度の知識で考える。気温を検索すると、20℃を超えていたので俺は夏と冬の服を持ってキャリーケースに入れてコートを羽織った。「行ってきます……って、誰もいないか。」今日の我が家にはおはようと行ってらっしゃいが存在しない。何処かそれは俺の未来を体験してるかのようで知らない事に足を踏み入れるワクワクと、この幸せがいつまでも続いて欲しいというセンチメンタルが共存する中、俺は家を出る。俺は始発をめざし、まだ日が登らない朝を迎えてその寒さに凍えながら少し小走りで駆けて行った。☆
last updateLast Updated : 2026-09-05
Read more

直輝と別れと小さな夢 5話

俺は目が覚める。いつもより早い時間に起きたことで疲れを感じて、いつの間にか寝ていたようだった。空の上は明らかに非日常なのに数時間も同じ景色を見ているとさすがに飽きて来る。到着まではまだまだ時間がある。「おはよ、直輝くん。」「舞衣。」「少しうなされてたみたいだけど……大丈夫?」「え、まじ?ごめん……気が付かなかった。」ぐっすり寝た時の夢は鮮明なのにこういう時に見た夢ってもう起きた時には思い出せない。記憶の奥底からデリートされたかのようにどんな夢さえも探ることは出来ない。「なんかあった?」「んー……まあね。」少し教えようか考えたけど、母ちゃんだってそんなに言いふらされたら溜まったもんじゃ無いだろう。俺は話すべきか少し悩んだけど……。「ごめん、時期が来たら話すよ。」「そっか。」てっきり食い下がったり浮気を疑うのかと思ったけどあっさりと舞衣は俺の意見を汲み取り、あっさりとその話が終わってしまう。「ちょっと寂しいけど……きっと悩みがあるんだよね。もし、耐えられなくなったら私でもいいから話してね。」「ああ、ありがとう。」突然、機内に放送が流れる。「間もなく、目的地に到着します。」驚きだ、まだ数時間たったか分からないのに、もう果てしない距離を進んでいたことになる。今年は長野県とか、静岡県とかは行ったけどそれとは比べ物にならない距離を短時間でたどり着くため文明の利器の恐ろしさが垣間見えた。少しだけ、カフェラテを飲んで落ち着く。母ちゃんは今頃頑張ってる時間かな。「なあ……舞衣?」「なぁに?直輝くん。」「俺、母ちゃんのお土産買いに行こうと思うんだ。タイミングあったら……一緒に行かないか?」「あはは、もう〜直輝くんは本当に遥香さん大好きなんだね!」「まあ、否定はしない。」舞衣も母ちゃんと面識はあるし、仲が良い。だから俺の家がどんな関係値なのかも全て知っている。この期に及んでまだ俺は話そうか悩んでいた。「舞衣は……家族とはどうなんだ?」つい、変な事を聞いてしまう。舞衣も家庭が複雑だ。父親はいるけど間男との子供だったので関係は最悪そのもの。聞いてしまうこと自体がノンデリケートもいい所だったけど、どうにも自分の問題を何かに転換したかった。「んー、確かにお父さん……血が繋がってないから話すことは無いけどね。」「うん。
last updateLast Updated : 2026-09-05
Read more

直輝と別れと小さな夢 6話

俺たちは飛行機を降りて、点呼を取る。全員の安否が確認できると、次は目的地の宿に向けてバスを走らせることとなる。「……暑い。」俺はここ最近ご無沙汰だったポカリスエットを飲み水分補給をする。ちょっと……いや、だいぶ暑い。服装を完全に夏に切りかえてなかったから、俺は寝不足も相まってあっさりと熱中症になりかけるほどだった。みんなも急な気温の変化にまだ慣れてないみたいだ。沖縄の建物は伝統的な建物もあれば、つい最近建てたような別荘もある。でも、一際目に入ったものがあった。「仮設住宅……だよな?あれ。」そう、南海トラフ地震はここ数百年でも記録的な大地震だった。瓦礫がほんのりと残っていたり、仮設住宅の人間もいたりして当時の地震の悲惨さが垣間見えていた。この中を……母ちゃんは生き延びたのだ。「おい……おい!」「ん?」「どうした!ボーッとして!」バスの隣の席は上原瑞希だった。相変わらず140cm台の小柄な体格をして、でも表情は勝気な性格を現していてまるでチワワでも見ているようだった。「ああ……なんでもない。ちょっと暑くてボーッとしてただけだ。」「パピコ食べるか?」「いや、なんで持ってんだよ。」おそらく空港の売店で売ってたのか瑞希はパピコの先端を捻って開ける。「なんだよ!要らないのか?」「いや、頂くよ。」俺も先端を捻ってコーヒー味のアイスを口に流し込むと、ひんやりとした感覚がこの常夏の世界から救い出してくれるようで美味しく感じる。というか、パピコ自体久しぶりだ。「久しぶり食ったけど……美味いな。」「ふふふ!そうだよ、パピコは美味いんだよ。」こいつ……絶対500円までのおやつを金額超過するやつだ。何故か就学旅行用と書いた袋がぎっしりと詰まっていた。「他にもいろいろあるぞ!ねるねるねるねとか!うまい棒とか!」うっわ、なんか懐かしい駄菓子ばっかだ。瑞希ってズレてるところあるけどこうして人を楽しませるために一生懸命なところとか良い奴なんだよな。「なんか、ありがとうな。人生初の修学旅行だけど楽しめそうだよ。」「ん?修学旅行はじめてなのか?」「ああ、小中で学校に馴染めなくてな。」「そっか〜、私も班決めとか最悪だったな。中学の頃は先生と組まされたりとか……。」待って、何それ俺以上に悲惨な奴がいたんだけど。「なんというか……楽し
last updateLast Updated : 2026-09-05
Read more

直輝と別れと小さな夢 7話

常夏の沖縄は数ヶ月ぶりの夏の感覚を思い出させる。当たり前だけど、距離や位置が違うだけでこうも世界は変わってしまうのだから小さな変化に驚かされてばかりだ。ここは首里城の正殿、朱色に塗られた柱が並んでいて沖縄といえばこの建築だと言わんばかりの見た目をしていた。なんだろう……日本の建築に比べて華やかな印象を受ける。両端にはシャチホコとシーサーの中間のようなものもあるし、真ん中は緑や様々な色を施されていて、かつては琉球王国として独立していた事がこの建築様式だけでも垣間見えた。俺達はここで集合写真を撮る。いつもは右上の枠に丸く俺の顔が写ってただけだったのに、俺は文字通り右上の枠から出てみんなと一緒に写真を撮っている。うん、悪くない。あんだけ嫌がってたこの景色は、想像以上に俺に優しいものだった。母ちゃんは、自分の安否よりもこの感覚を伝えたかったのかもしれない。その後もみんなと首里城の周りを歩く。いつものみんなと固まって。「おい!佐倉、さっき飛行機乗る時なんか盛ったろ!」「え?そうかしら?ぐっすり寝てただけだったと思うけど。」「いや、俺8時間ぐっすり寝てたあとに2時間寝れるわけないだろ……。佐倉にアイスティーもらってからベンチで寝てたって言われたぞ!?」う……うん、いつも通りだ。ちょっとカオスだけど、このメンバーといなければここには来れなかった。「あはは、ほんと……みんな面白いな。」精一杯の心の言葉にみんなキョトンとする。少しズレた世界だけど、それがいい。心地よくて、楽しくて、時折背中を押してくれる。そんなみんなが大好きだった。☆☆首里城の近くのホテルに泊まり、俺たちは荷物を下ろした後に自由行動となる。俺たちはいつものメンバーと班となっていたので、いくつか名所を回ってみた後に、ついにあの場所へと向かうこととなる。「ここが……大山貝塚。」「いやーん!直輝くん、怖ーい!」「いや、佐倉……ぶりっ子してるけどお前怖いのないの知ってるからな。」「は?」木々が生い茂っており、看板には心霊スポットの注意喚起が書いてあり、明らかにこの場所だけ空気が重く感じた。妙に耳鳴りがして、鳥などの動物の声さえも聞こえない。「よ……よよ……よーし!撤退だ!!」「瑞希……めちゃくちゃ後ろにいるな。」「だって!!これヤバいやつだよ!」立案者の瑞希
last updateLast Updated : 2026-09-05
Read more

直輝と別れと小さな夢 8話

過去だとはわかっている。もしかしたら神隠しの一環だとも分かっている。だけど、だけど今1番会いたい人を目にして俺は冷静にはいられなかった。だって、今1番頼れるかもしれない人物だったから。「母ちゃん!たすけてくれ!」「きゃ……きゃあ!なに!?」「信じて貰えないかもしれないけど、俺は母ちゃんの息子で未来から来たんだ、今何故か16年前の沖縄に来てて……。」俺は頭の中がめちゃくちゃだったので若き頃の母ちゃんにマシンガントークのように事実を伝える。とにかく藁にすがる勢いだった。しかし、その行動も虚しく……。「いい加減に……しろおおおお!!」母ちゃんは突如堪忍袋の緒が切れたのか俺を蹴り飛ばす。それが不幸にも、俺の金的をクリーンヒットして俺は感じたことの無い痛みが内蔵の奥から悲鳴をあげてるのを感じた。「気持ち悪い!あっち行け!」「は……話を……。」まさか普段から気持ち悪いと俺の方が罵倒してるのに罵倒はされるし、母ちゃんは二重の意味で息子に攻撃をするとは思いもしなかった。あの優しかったつり目はまるで今にも襲いかかる野良猫のように猟奇的にさえみえてしまった。「あれ?どしたの遥香?」「わかんない、突然私のことを母ちゃんとか……。」「えー!?きも、新手の息子ナンパってやつ?」「やめてよ愛深!」母ちゃんはコンビニから出てきた女友達と一緒にこの場を去ってしまう。母ちゃん……めっちゃJKだ。当たり前だけど、母ちゃんにもちゃんとJKした時期があったことに強く驚きを感じる。そして、今の優しい性格は……様々な経験からなっていたのでかつての母ちゃんが年相応に荒れてた事など、知る由もなかった。やがて、痛みが引いてきたので俺は立ち上がろうとすると、一人青年が俺の前に立っていた。俺によく似た青年で、遠くを見すえてるような落ち着いた青年だった。「大丈夫?」「は……はい、大丈夫です。」彼には妙に惹き付けられるような感覚があった。懐かしいような、それでいて胸の奥がざわつくようなそんな感覚だった。「彼女、結構怒りっぽいからね。」「全く知らなかったです。」どうやらこの青年も母ちゃんの知り合いのようだった。俺は冷静に考える。下手に母ちゃんに息子とか言わない方がいいのかもしれない。もしかしたら、歴史の干渉なんておきたら俺の存在だって危うい。改めてタイム
last updateLast Updated : 2026-09-05
Read more

直輝と別れと小さな夢 9話

カチッ……カチッ……書斎の時計の音が妙に大きく聞こえる。この少年が実の父とわかってから妙に心地が悪い。でも幸にも彼は読書を楽しんでおり、それにはあまり気がついてないようだった。ちなみに俺は父の本を読んでみるのだが、これまた恐ろしいほど難しい。なぜ高校生という若さでこんな全て英語の本なんて読めるのか、半分は同じ遺伝子だと言うのに驚かされてばかりいる。「……居心地悪い?」「あ!いや……全然!!」どうやら本に没頭してる訳では無い。彼は本を読みながらもうひとつ別で脳の処理を行っているようだった。どうやら、習慣で頭の良さは変わるのだとこの時強く感じた。とにかく話題を考えよう……。「あのさ、普段ずっと……1人なの?」「うん、そうだよ。親も帰ってこない。」「そうか……、そりゃあ、寂しいね。」「寂しい……か、確かにそうかもしれない。僕は好奇心はあるのだけど、結局本を読むことに逃げてばかりだよ。」彼は、ぼんやりとした目でページをめくる。まるでその姿だけでもミステリアスで様になっている。でも、少しだけ彼を見てわかった。彼は少し痩せこけている。こんなにも豪勢なマンションに住んでるのに、妙に肌ツヤが沢山食べてない感じだった。「あのさ、普段……飯とか食べるの?」「ああ……カロリーメ〇トとかは。」「いや、それ食事じゃないよ!」てっきり行動=心理のような人だと思ったけど、ちょっとズレてるだけだったのかもしれない。そう考えると、少しだけ年相応で自分の父が可愛らしく感じた。「そうか……じゃあたまにはフルーツ味とかチョコ味とかで。」「いや!味変えても栄養素一緒だよ。だから……泊めてくれるお礼に飯作らせてよ。」少年は、少し考えながら静かに頷いた。「ああ、構わないよ。人通りものはあるからね。」そう言って、彼はまたページをめくった。☆☆俺はまずは米を炊く。その後に簡素だけど味噌汁を作ることにした。とはいえ、本だしの粉末を入れてはワカメと豆腐なめこを入れたシンプルなものだけどね。その後は、冷凍で魚があったのでそれを解凍して、鮭に小麦粉をまぶしバターで炒めるムニエルを仕上げてテーブルに並べた。これは、何を隠そう母ちゃんの得意料理だ。「直人ー!飯できたよ!」「……ああ。」彼はテーブルに座るとありふれた食事なのに目を張っていた。どうやら
last updateLast Updated : 2026-09-05
Read more

直輝と別れと小さな夢 10話

「迂闊だった……。」スマホを手にそう吐露してしまう。俺は訳あって今は亡き父の家に居候をしている。父親は素晴らしい素質を持った人間だし、話していてとても楽しい。だからこそ、俺は現代で彼には生きて欲しいと願っておそらく彼の命日であろう南海トラフ地震が起こった日を探すべくGoogleをいじっているのだが……。当たり前だけど南海トラフ地震なんて2009年には程遠い言葉だし、検索しても100年前くらいの記録しか出てこない。なので、いつ彼が亡くなるのか分からず俺は灼熱の大地を右往左往していた。すると、突然女子高生とすれ違う。でも、俺にとっては女子高生とは程遠い女性だった。「か……母ちゃん……!」「ちっ、またあんたね。」若き日の母ちゃんは今では想像できないほど鋭い眼光で舌打ちを飛ばす。いや……こわ……これが16年後にはAVしたりメイド喫茶でバイトしたり、息子大好き人間になるとは到底思えない。「ま……待ってくれ!」「いや、話す理由がないんだけど。」人生で2度目の母親からの拒絶、その行動に俺は胃がキリキリと擦り切れそうだった。「あのさ!直人の事なんだけど……。」「……あなたには関係ないわ。」「関係ないかもしれない!でも……もしあの人が大変そうなら、手を差し伸べて欲しい!!」ぶっちゃけ、時を超えた先でのネタバレなんて高度なコミュニケーションは取れない。というか、妙にその件について話すと口元が思うように動かないから母ちゃんに対して抽象的なことしか言えなかった。「……そう。でもあの人なら大丈夫よ。」「いや!そういう訳じゃないんだ!」「うっさいわね!私だって子供妊娠してそれどころじゃないの!……あの人の足かせになるなら、こんな子……!」それ以上は、母ちゃんは何も言わなかった。きっとそれは母親として、それでいて人として言ってはいけないと悟ったのだろう。やっぱり、そういうところはかわらないんだなと少しだけ安心する。「いや、十分だ。ありがとう。」俺は去ることを決意した。これ以上は、母ちゃんに干渉しちゃダメだ。大丈夫、俺はちゃんと役目を果たしてまた会いに行くと心の中で彼女に誓う。次会うときは……笑ってて貰えるように。だって、時が変わっても蹴られても……俺は母ちゃんが大好きなんだから。「……変なやつ。」☆☆俺は直人の家に戻ると、当
last updateLast Updated : 2026-09-05
Read more
PREV
1
...
2526272829
...
31
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status