All Chapters of 僕のお母さんは△▽女優: Chapter 291 - Chapter 300

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直輝と決意とクリスマスイブ 3話

クリスマスの時期になると、どこに行ったってクリスマスソングが流れる。ジングルベルーとかイニッシュアメリクリスマスとかなんかフレーズが耳に留まってしまう。「ねえ!直輝くんはなにかしたい事ある?」「お……俺?」愛さんがクリスマスのリズムに乗りながら少しステップを踏むように歩いている。きっと苦手意識がなければカップル感覚でこの時間を過ごせるのだろう。でも、今の俺にはそんなもの楽しむ余裕はなかった。「……何がしたいんだろうね。」「あはは!ちょっと疲れてるんじゃん!どうしたの?」彼女は突然距離を近づけて上目遣いでこちらを見ている。可愛い……のだがなにか含みがあるようで冷や汗さえ感じる。笑顔なのに目が笑ってなくて、抱きしめたら折れそうな程に小柄なのにどこか余裕で、黒髪なのに妙に色にコントラストを感じていた。「直輝くんのいいところ!」「え、なに急に。」「優しくて誠実で、努力家でユーモアがあるところ!」そういって、彼女は俺に指を指す。その奇妙な言動でさえ、都会の人は目に留めようとしない不思議なマジックが俺たちだけの閉鎖空間をつくる。「そして、悪いところは……無理し過ぎてるところかな。」「…………。」図星だった。あまりにも的を得ていて、俺は何を言うべきかわからなかった。「私の事苦手なの知ってるよ?でも……今の君は崩れそうだよ。一人になったら突っ走って転んでしまいそう。今も君は自分の無力さに打ちのめされてる。」「じゃあ!俺はどうすればいいんだよ!」俺は無意識に少しだけ怒りを顕にしてしまった。ズバズバと自分の事を言われて妙に心地よくない。「俺……目の前で大切な人を亡くして、時折夢に出るんだよ!直人が……死を決意しながらも、ちょっと死ぬの怖いな……なんて顔してたんだぞ!俺は10日近く助けられるチャンスがあったのに……何もしてやれなかった!!もう嫌なんだよ、後悔するのは!!」きっと何言ってるかわからない。だって、あれが現実なのか夢なのか確信すらないからだ。でも、俺にとっては残るものがあった。決意と同時に……やはりどこかで後悔してる自分がいるんだ。「ううん、きっとそれは直輝くんは悪くない。」「なんでそう言えるんだよ!」「もしお父さんが自分の命を優先したり、2人とも助かったら今の直輝くんは……どうなると思う?」「……え。」堂々と
last updateLast Updated : 2026-09-13
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直輝と決意とクリスマスイブ 4話

「直輝くん!こっちこっち!」「おいおい、無駄に手際がいいな。」「へへん、元一軍女子ですから。」「今は違うんかい。」愛さんは映画館に行き慣れてるのかチケットの手配とか、上映場所の把握が早かった。俺は映画館は人生で数回しか行った記憶がない。興味がないと言われればそうなのだが、今は少し待てばサブスクで何度も見返せる時代なのだ。それを1日で同じ金額を消費するのかと思うと無駄としか感じなかったので俺は実はそこまで乗り気じゃなかった。「ポップコーンはキャラメル味で特盛お願いします!あ、あとちょっとコーラもLサイズで……!」「おいおい、映画見に行くのにそんなに金かけて大丈夫かよ。」すると愛さんはコーラを私ながらニコニコとしたから覗き込むように見つめた。「直輝くん……映画っていうのはね?これがいいんだよ。いつもサブスクで映画とか見てるタイプ?」「まあ……うん。」「それじゃ勿体ない。」「なんでよ。」コーラをストロー越しに飲むと、ボリュームのある炭酸が喉を打ち飲みなれた甘い味が舌を癒していた。「まあ……今日は映画の流儀に従ってみてよ。スマホの電源切ってね!ストップ!映画泥棒!」「あ〜たまに映画で出てくるあのカメラのマスクのやつか。」あれ動きが面白いからよく小学校で真似してた気がする。俺は映画の座席に座り、流行りの映画を観る。次の映画の広告をポップコーンを食べながら流し見をする。「へー!この映画面白そう!」「そうか……?」「むー!直輝くんは私とは合わないかも!」「いや、いつも苦手なんだけど。」「あ、私かに!」予告編の時はそんな雑談をしてるのだが、周りも若い世代が多くそんな感じだった。しばらくすると、劇場のスクリーンが大きくなり、暗くなると妙にポップコーンの食べる音が大きく感じた。「いよいよだね〜。」「んだな。」やっと例のアニメがはじまる。2年前にみたやつの続編なので大まかは設定は知っていた。そして、TikTokやYouTubeて聞きなれたオープニングが流れる。でも、それだけでも違った。これから何が起こるのだろうとするワクワク感が違くて、スマホも何も出来ないというこの制限が映画を集中させた。たまにしょーもない下ネタが出てくる。急に金玉をヒロインが主人公に読み上げさせるとか。「これ……笑ったら負けかな。」「あはは!し
last updateLast Updated : 2026-09-13
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直輝と決意とクリスマスイブ 5話

結局、俺は着いてきてしまった。断り文句を沢山答えたのだけど、彼女の頭脳は俺を上回っていて、まるで手のひらに転がされてるようだった。俺は彼女に連れられて、今は千葉の先端の館山市に向かっている。既に景色は夜になっていて、聞き慣れない地名をひたすらアナウンスされる。今俺はどこにいて、周りに何があるのかすらわからなかった。「ありがと、着いてきてくれて。」「うん、どういたしまして。」俺の心は静かに迷っていた。本当に断らなくていいのだろうか?でも、否定する度に彼女は俺の目を見つめて「信じて。」というシンプルな言葉で俺を動かしていた。「それにしても……千葉って広いね。桃鉄なら6マスくらいで半周できるからそんなに広くないって思ってた。」「いや、桃鉄基準で考えてたの!?」「だって〜一軍女子は都会しか遊べないんだもん。」「はあはあ……贅沢な悩みなこと。」もう電車には俺たちしかいなかったので会話をできるようになる。意外とこの人も抜けてるところがあるのかもしれない。「もう21時だね……。」「いや、急だな。」「もう君は帰り道はないんだよ。今日はとことん私に付き合ってもらうよ!」「てかマジでどこ向かってるの?」「んー、いいとこ!って言っても人生で1回しか行ってないから記憶曖昧なんだけど。」そう言うと、列車が終点を告げて俺たちは駅を降りる。ここは……千葉の端である館山。元は捕鯨を行っていた土地なのか、妙にクジラの肉わ名産にしていて、駅周辺は少し落ち着いた居酒屋が点在する土地だった。「直輝くん!こっちこっち!」「ほぼ初めてだよね?あってる?」彼女は少し早歩きで歩く。踏切を超えて、狭い道を超えるとそこは見た事ない世界があった。「……すげぇ。」砂浜がどこまでも広がっていた。暗闇に紛れて、波が不気味に揺らいでいる。でも、それ以上に……空がどこまでも綺麗だった。愛さんと夜空を見ながら砂浜を歩くと、妙に心が穏やかだった。当たり前の夜空なのに、照明がほとんどないとこうにも美しく見える。オリオン座のシリウスが一際白く輝いていて、まるで夜のパーティーのようだった。彼女は大胆にも、その砂浜に腰掛けて……俺も座る。寒さに震えてる感じがしたから、俺は静かにコートをかけた。「あら、優しいね。」「そんな露骨に寒そうにしてるからだよ。」「直輝くんは
last updateLast Updated : 2026-09-13
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直輝と決意とクリスマスイブ 6話

海辺には少しレトロなホテルがあった。周りにはヤシの木が植えられていて、少し南国チックな雰囲気を醸し出している。「いらっしゃいませ。」時刻は既に21時を回っているのかホテルのスタッフが少し眠そうに迎える。当たり前だけど世の中はこんな時間でも働いてる人がいる。「予約した石川です!」「石川さま、お待ちしておりました。1階の奥となります。」「はーい。じゃあ、いこっか。」「うん。」部屋に入ると、オーソドックスな広さの部屋になっており、ツインベッドが置いてあった。ユニットバスがあって、最低限の装備を揃えてある。いかん、すげー眠くなってきた。ツインベッドに座るだけで疲労がぐんと体を押し寄せる。「……眠たいの?」「うん……ちょっと……。」「じゃあ先にシャワー浴びたら?さっぱりするよ。」「いや、でも先に女の子が入った方が綺麗でいいだろ、レディーファーストで行くよ。」「え、私の事レディーだと思ってるの?でも、私はまだ眠くないからいいよ。別に直輝くんが入ったあとでも気にしないし!」彼女の言う通り俺はシャワーを浴びる。でも妙に心地が悪い。眠さと疲れが妙に正常な判断能力を失いつつある気がする。結局10分くらいであっさりと浴び終わると俺は彼女とチェンジして、俺は布団に仰向けになる。彼女のシャワーは長かった。まあでも女性は色々準備があるし詮索は不要かもしれない。何か色々しなきゃ行けない気がしたけど、布団に入ると何もかもが考えられなかった。本当に、こんなんで医者になれるのかと自分に半信半疑の一言を添えると、急にPCがシャットダウンするかのごとく俺はゆっくりと眠りについてしまった。☆☆「……おきくん。」「ん……。」「直輝くん。」体に妙な重みと、そして囁くような声が聞こえる。睡眠に入った体は体が硬直して金縛りにあったように動かない。目を開けると愛さんが暗闇越しに見えてくる。その時初めて俺は寝ていたことに気がついた。「あ、起きた。」「……何?」「今日……一緒に寝ていい?」「ん……そっちにベッドがあるじゃん。」「……だめ?」彼女はどこか手が震えていた。バスローブを着て、どこか寒そうに……それでいて、寂しそうでもあった。「……断ってもどうせ入ってくるんでしょ?」「うん、だって今の君には逃げ場はないからね。」すると、彼女は
last updateLast Updated : 2026-09-13
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直輝と決意とクリスマスイブ 7話

暗がりのホテルで少しだけ罪悪感を感じつつ、それでも彼女の体温はどこまでも心地よかった。時刻は既に2時を回っている。愛さんは先程の恍惚とした表情から1点、妙にしんみりと……そして切なそうな顔へと変わっていた。「私………いなくなるんだ。」「いなくなるって、どこに?」「アメリカだよ、親の転勤でね。」それを告げる彼女は少しだけ震えていた。すると、彼女は俺の胸にでこをあててまるで甘えているようだった。「アメリカなんか……行きたくない。英語もできないし、きっと留学先で腫れ物のように扱われるかもしれない。」そりゃあそうだ。俺だって嫌だ。急に孤独になるかもしれない、今ある日常が突然なくなると考えると……彼女の数日の過激な行動にも納得がいく。「親もさ……私よりかは生活優先だし、学校のみんなもまるで本当は友達じゃなかったかのように素っ気なくされたの。だから……本当の居場所がなくて、君を利用したの、ごめん。」「……いや、俺でも同じ立場ならそうするかも。」彼女はきっとここに残る理由が欲しかった。それはなんでもいい、例えば子どもとか愛する人とか、でもその先はまるで天国のようで、やはり未来はなかった。「いつ……行っちゃうんだ?」「2日後の、12月24日。」「クリスマスイブか。」妙に鬱陶しかったクリスマスソングが脳裏をよぎる。俺はどうしたらいいんだろう。彼女の居場所になればいいのだろうか?でも、その選択は何かを捨てることとなる。俺自身の目標とか、友達とか……家族。迷っていた、いつもみたいに人を助ける方法を考えていた。「直輝くんって……温かいね。」「そりゃあ、生きてるからね。」「はは、まだまだ国語苦手だなぁ。」「おい、さりげなく酷いな。」はっきりいって今の行動は傷の舐め合い、愛情ではなくお互いの弱みをぶつけ合う劣情に近かった。やがて少しずつ……俺たちは一緒の布団でゆっくりと眠る。妙にシーツの蒸し暑さが心地よく、まるでいま死んでもきっと良い感情なのかもしれないとさえ錯覚していった。とにかく……今日は疲れた。明日の自分に何かを委ねるとしよう。☆☆朝、俺は目が覚める。時刻は7時となっていて……愛さんは昨日と同じように俺に身を委ねるように寝ていた。「流石に……風呂入るか。」朝は大浴場が空いてるとの事だったのでゆっくり湯船に浸かりたい……
last updateLast Updated : 2026-09-13
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直輝と決意とクリスマスイブ 8話

朝なのに湯気が立ち込めて、それだけでも贅沢な朝だと思う。大きなガラス張りのところからは大海を一望することができて、自分の心を晴らしてくれる。お風呂の気持ち良さと、海のマリアージュ。そして、ふと冷静に振り返り……俺は頭を抱えてしまった。「やっちまったあああ!」そう、俺はやらかしていた。普通に考えて最低だ。彼女持ちだし……俺はあいつしかいないと決めていたのに、彼女に押されていたり、俺自身が弱っていたとか色々あるけど……さすがにこれは大問題だ。そして、俺は今めちゃくちゃな選択を迫られている。彼女と逃げるという選択だ。それを選ばないと彼女はアメリカにて孤独に過ごすかもしれない。彼女自身の居場所は……もしかしたら俺しかいないかもしれないのだ。この状況……二律背反、どちらかを選んでどちらかを捨てなきゃ行けない。そんな状況だと理解すると……俺は弱りきっていた。俺は、温泉に浸かりしばらく無心になるが、どうにも彼女の昨日の姿をフラッシュバックしてしまい。さらに悶々としてしまう。昨日の疲労は既に湯に溶けて、身体は妙に落ち着いていた。「そろそろ……出るか。」身体はさっぱりしたのに、まだ心はドロドロしたままだったけど、俺はじっとしてはいられなかった。でも……結論はひとつ出た。俺はきっと、彼女と逃げたら幸せにはなれない。これは愛ではないし、その先もない。楽な方へと逃げたら……きっと楽な選択しかできなくなると思ったからだ。ゆっくりでいい、その方針だけは捨てないでおこう。そして、浮気してしまったことを舞衣に土下座して後でぶん殴ってもらおう。☆☆「お!湯上りの直輝くんセクシー!」「いや……昨日散々みただろ。」風呂から戻ると彼女は髪を整え、化粧をしていた。いつもの余裕のある愛さんがそこにいた。可愛らしくも、どこかミステリアスな彼女は緊張感を覚える。「あの……さ。やっぱり俺たち!」「んー!いい匂い……。」そう言うと、彼女は俺を抱きしめてクンクンと匂いを嗅ぐ。相変わらず彼女は華奢で、少し柑橘系の香水の香りがして、俺の心はあっさりと揺らいでしまった。「ねえ、その答えは……クリスマスイブに教えてよ。」俺の心は既に読まれていたようだった。それでも彼女は攻めの体勢を変えない。ダメだって分かってるけど、彼女なりに俺と共に逃げる為に少し賭け
last updateLast Updated : 2026-09-13
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直輝と決意とクリスマスイブ 9話

昨日は暗闇でわからなかったけど、内房線は自然に囲まれ、時には海が見えて陽光を美しく照りつけている。千葉県とは東京から近いとはいえ、少し離れると静かな港町が続くものだ。俺は少し睡眠不足の目を擦り、ゆっくりと列車に揺られる。「もう少し!浜金谷っていう駅で降りるみたい。」「……そういえば、どこ向かってるんだ?」「えへへ〜秘密!」「なんでだよ。」俺たちは不気味なほどいつも通りだった。昨日のことが少しフラッシュバックしたものの……それでも何とか彼女の明るさが紛らわしてくれる。駅を降りると、ほとんど人がいなく1時間で電車が1~2本通るような少し寂れた雰囲気の駅だった。少し歩くと海沿いの道があって、船が並んでいる。しばらく歩くと、ひとつの文字が目に入った。「鋸山……ロープウェー?」「正解!よくわかったね!」俺たちは施設を入ってお会計を済ませる。そういえばロープウェーって初めてかもしれない。実際どれくらいの速さで進むのかとか、全く想像がつかない。ゲートを通ると、案外広い空間が吊り下げられていた。吊るされているから当たり前だけど、常に等間隔で揺れている感じが妙にゾッとする。「これ……落ちないよな?」「あはは!直輝くんめっちゃ怖がってるじゃん!」彼女は楽観的だけど、俺には恐怖感しか無かった。鋸山は石を切り崩していた土地なので不気味なほど断崖絶壁が綺麗に垂直をなぞっていて、岩が露出している。怖くないと思うほうがおかしい。すると、突然アナウンスが流れてロープウェーが動き出す。揺れると言っても……案外知れてるのかもしれない。そう安心するのもつかの間だった。ガコン!「うおっ!?」ロープウェーが支柱を通るとその度に結構揺れる。俺はこの時高所恐怖症なのかもと思うほど少し混乱してると、彼女は俺の両頬をに手を当てて視線は彼女に集中した。「どう?私だけ見てれば怖くないよ!」「そ……そうだな。」どうしよう、可愛い。吊り橋効果よろしく恐怖感と彼女に対するドキドキが共存して、どうにかなってしまいそうだった。彼女はどこまでもズルかった。「……惚れた?」「うっせぇ!惚れてなんかないし!」「え〜でも顔真っ赤。」すると、そのやり取りを聞いている年配の女性たちは「あらあら。」なんて暖かい目で見守って来るので俺は咄嗟に離れて目を閉じる。この
last updateLast Updated : 2026-09-13
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直輝と決意とクリスマスイブ 10話

俺は愛さんと下山したのだが、2時間足らずで降りることができた。鋸山はたくさんの仏像に溢れて、時に大仏があったりと神聖な場所のようでもあった。そろそろ下山も終わりそうなのか、景色がなだらかに変わりつつあった。「みてみて!猿!」「まあ、そりゃあ猿くらいいるよ。」「もうー、冷めてるな。」彼女は可愛いと繰り返しながら写真を撮っている。全く……たまに愛さんはこういう無駄と思えるものがとても好きだった。「そういえば……俺たちどこへ向かってるんだろう?さっきの浜金谷とは違うとこみたいだけど……。」「……確かに。」あれ?ここから先はノープラン?「やばい!全然違う所へ向かってた!」「え、まじ?」「んー、どうしよう……このまま浜金谷だと遠いし、この先の保田駅の方が近いかも……ごめん!」「はは……大丈夫だよ、愛さんもそんなところがあるんだね。」もう、彼女に対して警戒している自分は完全にどこかに行っていて、このさり気ない幸せを感じてしまっている。彼女との時間は……本当に楽しい。☆☆「……マジか。」「千葉もなかなか難しいね。」駅に着くと、1時間以上待つ必要があるみたいだった。どうやら、たった今電車が行ってしまったらしい。「どうしたもんかな……。」このままのんびり1時間待つ……とはいっても、ここは何もないし、すげー寒い。近くにカフェがあれば良いのだけど……なんて辺りを探してしまう。すると、彼女は突然立ち上がった。「あ……愛さん!?急にどうしたの?」すると、彼女はまた不敵の笑みを浮かべていた。いつものように少し余裕を持って……俺の手を引いていく。「直輝くん……小学校いこっか!」「……小学校?」そういうと、俺たちは少し広い道に進んで行く。住宅街をすすんで……まっすぐ進んでいく。「小学校ってなに!?」「え……知らない?」「全くわからん!!」「そうなんだ、じゃあ面白いかもよ!」彼女に連れられて……俺は10分ほど歩いて目的地に着く。そこは、道の駅 保田小学校という場所だった。そこはかつて学校であった土地で校舎や体育館など形がそのまま残っている。体育館はマルシェになっていたり、教室がカフェになっていたりと見た事ない景色に俺は唖然としていた。「……すごい。」普通、廃校になったらそこはただの廃墟として存在しているのだが、そこ
last updateLast Updated : 2026-09-13
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直輝と決意とクリスマスイブ 11話

俺たちは保田駅に入り列車に乗る。列車の中は相変わらず関東とは思えないほど閑散としていて、その静けさだけが妙に心地よかった。帰る時間が迫ってくる度に俺の心臓の鼓動が強くなる気がする。愛さんは……ずっと俺の手の甲に手を乗せている。後はまっすぐ新宿まで行ったら終わりだ。「楽しかったね。」「うん、ありがとう……俺も楽しかった。」話を続けようとすると、夕方に差し掛かって人々が列車に押し寄せてくる。通勤の人が乗ってきたのだ。俺たちの会話が一旦途切れる。人前ではこれ以上の会話は聞かれたくないのかふたりで苦笑していた。その後の時間は、不気味なほど静かだった。ゆっくりと進んだ俺たちの旅はあっさりと終わりを告げてしまう。やがて、聞きなれた駅名が飛び交ってきて、無機質な都会に帰ってくると妙にほっとしている自分がいた。新宿に降りると、その時には人に満ち溢れていた。でも、人が溢れるのに不気味なほど静かなのは、やはり都会に疲れる人で溢れてるからだろう。その疲れが伝染したのか、俺は少しだけ……目を閉じてしまった。それで寝てしまうとは思いもせず。☆☆「今日は花壇の花の苗を育てるので、指定の肥料を入れてください!」「「「はーい。」」」委員会の生徒はみんなやる気がない。きっとやらされてる感があるからだろう。俺もその中で一際無気力な人物だった。この委員会の嫌なところはペアを組むところだけど、俺は諦めて先生と組む気満々だった。それでいい、俺に友達なんて必要ないんだから。みんな敵、どいつもこいつも陰口をしたり、時にイタズラをしたりするばかりで信用する要素などどこにあるのだろう。「ねえ、天野くん……だよね?私と組まない?」「……えっと君は。」「石川!石川愛だよ!」「……ああ、ごめん石川さんだったね。」あまり目立たない石川さんだけは妙に俺にからかってきた。他の人とは違って徒党も組まずに単体で俺にからかってくる。「ぐぬぬ……肥料の袋重い。」「頑張れー!いっちにーいっちに!」「ペアだから手伝って!?」「手伝ってるじゃん!応援してるし。」「物理的!物理的に支援を求める!」「あはは!ごめん……すぐ手伝うね!」そう言って、彼女は俺の正面に立ち袋を抱えると、初めて彼女の顔を見る。まつ毛が長くて、髪がサラリとしている彼女は……ふと可愛いとおもってし
last updateLast Updated : 2026-09-13
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直輝と決意とクリスマスイブ 12話

久しぶりの我が家だけど、妙に入口で立ち往生してしまう。母ちゃんからの心配の連絡は見返したら沢山来ていた。愛さんのことで精一杯で、それを見ている余裕すらなかった。登山とかしたせいか妙にふくらはぎの部分が痛くなった。とにかく今は休みたい……少し躊躇したが、俺は家に入る。家は電気がついてないのだが、鍵はかかっていなかった。「…………誰もいない?」母ちゃん、何してるのかな?バイトでも行ってるのだろうか、それはそれで好都合なのだ「ばぁ!」「うわあああぁあ!!!」どうやら母ちゃんは少しドッキリを仕掛けてたみたいだった。「あはは!おかえり!」「……母ちゃん、家出から帰ってきてそれは1番タチが悪いよ。てか、なんで今日帰って来ると思ったんだよ。」「んー、なんとなく?」「帰ってこなかったら一晩中セッティングしていたのか……。」相変わらず母ちゃんは変わっている。でも、高校生の母ちゃんを知ってるからこそわかる。この人は母親になってからこういう行動をするようになった。俺を元気づけるために、わざとふざけているのだ。「な……直輝!?どしたの、泣いてる!?」「え……。」俺は安心したのか、それとも愛さんを優先して母ちゃんから離れようとしていたことを無意識に懺悔していたのか分からなかっけど……泣いた。この日常が……間違いなく好きだったのだ。でも、それが今の選択を迫られてる俺にとっては……重荷だ。「どしたの!泣くほどびっくりした〜?」「うるせえ……うるえせよ……。」「ほれ!今日はご馳走だよ!落ち着いたら一緒にしゃぶしゃぶと蟹たべよ!」母ちゃんは、無条件で暖かい。これもひとつの愛なのかと、無意識に安心してしまう。しばらく俺は泣いたあと、ボーッと椅子に座っていた。テーブルには、出汁用の昆布と和牛、そして豚肉が並べられていた。「なあ……母ちゃん、ごめんな?」「んー?どしたの?」「その……突然家出なんかしちまって。」「全くだよ!ほんと……いつも直輝は抱えてばかりだよ!」「ほんと……返す言葉もない。」和牛の美味さが舌を鳴らす。脂がお湯で溶けて、口の中で旨みと共にとろける感覚がどうにも食欲を掻き立てる。俺はよほどお腹が空いていたことに気がつくいたのは大分あとだった。「母ちゃんは何も聞かないよ!私だってひとりで抱えて16年も直輝にAVやっ
last updateLast Updated : 2026-09-13
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