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第9話

Author: にゃー
鋭い音とともに、強烈な電流が一気に全身を駆け抜けた。

真っ赤に焼けた無数の針が、全身の皮膚へ同時に突き刺さるようだった。

すべての細胞が悲鳴を上げ、筋肉は意思に反して激しく痙攣し、心臓は胸を突き破りそうなほど跳ねた。

「ううっ——!」

紗良は押し殺しきれない悲鳴を漏らした。

体を激しく震わせながら床へ倒れ、そのまま小さく丸まった。

電流はしばらく流れ続け、ようやく止まった。

紗良は水から引き上げられた魚のように床へ力なく横たわり、必死に息を吸った。

全身は冷たい汗で濡れ、意識も朦朧としていた。

「奏人くん、この人、死んだりしないよね?」

真帆は怖がるように、奏人の胸元へ身を寄せた。

奏人は眉を寄せ、床で息も絶え絶えになっている女を見た。だが、胸の内に渦巻く荒々しい怒りは、まだ消えていなかった。

「死にはしない。これだけじゃ、まだ生ぬるい。こいつの爪も剥がせ」

奏人は冷たく言い放った。

紗良は勢いよく顔を上げ、信じられない思いで奏人を見た。

だが奏人は真帆を抱き寄せたまま、顔をそらした。

二人の部下が、紗良の手を乱暴につかんで押さえつけた。

冷たい金属製のペンチが、右手の人差し指の爪の根元を挟む。

次の瞬間、一気に引き抜かれた。

「――っ!」

人の声とは思えないほど凄まじい悲鳴は、口をふさぐテープに遮られ、砕けた呻き声に変わった。

無理やり爪を剥がされる痛みは、電流など比べものにならないほど激しかった。

血が一気にあふれ、指先を赤く染め、床へ落ちていく。

一本、また一本と、爪が剥がされていった。

紗良は痛みに全身を痙攣させ、視界は何度も暗くなった。

汗と涙と血が入り混じり、爪を剥がされるたびに、魂まで少しずつ引き裂かれていくようだった。

奏人。

奏人――

紗良は心の中で、絶望しながらその名を呼び続けた。

かつてあれほど愛した人が、今では最も深い苦痛を与える張本人になっていた。

やがて、両手すべての爪がなくなった。

紗良は泥のように床へ崩れ落ちた。

指先から絶え間なく押し寄せる激痛だけが、まだ自分が生きていることを知らせていた。

奏人はようやく満足したようだった。

顔を下げ、真帆へ優しく尋ねた。

「これで気が済んだか?帰ろう」

真帆は奏人の胸に寄り添いながら、振り返った。

床に倒れ、傷だらけになった紗良を見て、口元にひどく悪意に満ちた、勝ち誇る笑みを浮かべた。

「奏人くん、私のためにありがとう」

奏人は真帆を抱いたまま、倉庫を出ていった。

自ら残酷な目に遭わせた、息も絶え絶えの女を振り返ることは、二度となかった。

どれほど時間が過ぎたのか分からない。

紗良は激痛と意識の闇の中から、どうにか目を覚ました。

残った力を振り絞り、少しずつ体を動かした。

壁際まで這い、壁にもたれながら、ゆっくりと立ち上がった。

どうやって家まで戻ったのか、自分でも分からなかった。

爪を失い、血の流れる指で、苦労しながら玄関の鍵を開ける。

家の中は真っ暗で、広く、冷え切っていた。

もう体を支えきれなかった。

紗良は玄関の床へ、重く倒れ込んだ。

そのとき、そばに投げ出されていたスマホの画面が明るくなった。

奏人からのメッセージだった。

【紗良、秘書から今日退院したと聞いた。悪い、今日は会社が本当に忙しくて、迎えに行く時間が取れなかった。ゆっくり休んでくれ。落ち着いたら必ずそばにいる。何か欲しいものはある?プレゼントにする】

紗良はその文章を見つめた。

そして、ついに耐えきれず、大声で笑い出した。

笑い声はかすれ、途切れながらも、果てしない嘲りと悲しみに満ちていた。

忙しい?

真帆に付き添い、私を痛めつけさせていたのだから、さぞ忙しかっただろう。

プレゼント?

さっきもらった「プレゼント」だけで、一生忘れられない。

笑っているうちに、涙が次々とあふれた。顔に残る血と混ざり、ひどく無残な姿になっていた。

【マスター。世界から離脱するまで、残り10分です。10分後、あなたはこの世界から完全に離脱し、二度と戻ることはできません】

冷たく正確なシステムの声が、頭の中に響いた。

紗良は笑うのをやめた。涙も止まった。

残り9分。

紗良は床からゆっくりと起き上がった。

奏人から贈られたものをすべて取り出し、リビングへ積み上げる。

残り7分。

紗良は積み上げたものを全部処分した。

偽りの約束も。

この7年間のすべての思い出も。

残り5分。

紗良はよろめきながら寝室へ向かった。

血と泥で汚れた高価なワンピースを脱ぎ、この世界へ連れてこられたときに着ていた服へ着替えた。

残り3分。

洗面所へ行き、水を流した。

冷たい水で、顔に残った血と涙の跡を、少しずつ洗い落とした。

残り1分。

紗良はシステムを呼び出した。

「システム。ここを離れる前に……もう一つだけ、お願いしてもいい?」

【どうぞ】

「さっき奏人が、私に電流を流させて、爪を剥がさせた場面を……動画にして」

紗良の声はかすかだったが、静かな決意が込められていた。

「奏人に送りたいの」

【よろしいのですか?その記憶を抽出し、映像化すれば、魂に感じる痛みはさらに強くなります】

「構わない」

紗良は目を閉じた。

「ここを去る前に、奏人へ……プレゼントを残しておきたいの。一生、忘れられないプレゼントを」

【承知しました。記憶映像の生成を開始します】

残り3秒。

頭の中に、鋭い痛みが走った。爪を剥がされたとき以上の痛みだった。

無数の針が、記憶をかき回しているようだった。

倉庫で起きたすべて。

奏人の冷たい顔。

真帆の得意げな笑み。

全身を貫いた電流の痛み。

爪が剥がされる瞬間。

すべての映像と感覚が、鮮明に抽出され、一つの動画へまとめられていく。

【映像の生成が完了しました】

残り2秒。

紗良は目を開けた。

傷だらけの指で、奏人とのトーク画面を開く。

写真フォルダに現れたばかりの動画を選んだ。

そして送信した。

残り1秒。

画面に表示された「送信完了」の文字を見て、紗良は静かに笑った。

その表情には、もう何の未練もなかった。

【カウントダウン終了。離脱を開始します】

強い白い光が、紗良を包み込んだ。

体の感覚が、急速に薄れていく。

痛みも。冷たさも。疲れも。

すべてが遠ざかっていった。

紗良の体は少しずつ透き通り、砂のように空気の中へ消えていった。

最後に消えたのは、彼女の目だった。

かつて奏人だけで満たされていたその瞳には、今はもう、何も映っていなかった。

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