All Chapters of 俺だけの献立 〜隣のスポーツ栄養士志望が俺の食事を管理するらしい〜: Chapter 181 - Chapter 190

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180食目

出発の朝は、思っていたよりずっと静かだった。 まだ空気の冷たい早朝、マンションの廊下にスーツケースの車輪の音だけが響く。 椿は歩きながら、何度もパスポートの入ったケースを確認していた。 「……大丈夫よね」 もう三回目だった。 隣で、自分の黒いキャリーを片手で引きながら、蓮が小さく息を吐く。 『大丈夫だ。パスポート、財布、スマホ。そこがあればなんとかなる』 『しょうがないじゃない。初めてなんだから』 まだぎこちないドイツ語で、椿が答える。 再三確認したパスポートを丁寧にしまい、ようやくいつもの歩調に戻った。 空港へ向かう電車の中でも、椿はどこか落ち着かない。 膝の上に置いたパスポートケースを何度も撫でる指先に、それがよく出ていた。 蓮は窓の外を見ながら、淡々と言う。 『だから、緊張しすぎだ』 椿が小さく睨む。 『するに決まってるでしょ。初めての海外。飛行機は初めてじゃないけど、こんな長距離は初めてだから』 『飛行機は座ってるだけだ』『だとしてもその長さの感覚がわからないのよ。乗り換えだって初めてだし』 蓮は少しだけ笑った。 『まあ、離陸したら諦めがつくか』 『ひどい励まし方ね』 それでも、そのやり取りで少しだけ肩の力が抜けた。 空港は朝から人で溢れていた。 大型モニターに並ぶ出発便。 スーツケースを引く人々。 日本語と英語が混ざるアナウンス。 椿は自然と歩幅が小さくなる。 『……すごい』
last updateLast Updated : 2026-09-06
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181食目

到着ロビーを抜けた瞬間、冷たい空気が肌を撫でた。 日本より少し乾いた空気。 鼻の奥に残る匂いまで、どこか違う。 スーツケースを引きながら、椿は思わず周囲を見回していた。 高い天井。飛び交うドイツ語。見慣れない案内表示。 本当に来たのだと、今さらみたいに実感が押し寄せる。 その少し前を歩いていた蓮が、ふと足を止めた。 『いた』 視線の先。 人混みの向こうで、長身の男が片手を上げていた。 整ったスーツ姿に、相変わらず隙のない立ち姿。 遠目でもすぐ分かる。 ハンスだった。 こちらへ歩いてくる姿に、椿は自然と背筋を伸ばす。 ハンスはまず蓮の前で立ち止まり、口元をわずかに上げた。 『おかえり、レン』 その一言が、思ったより自然だった。 蓮も肩の力を抜いたまま返す。 『ああ、ただいま』 それから、ハンスの視線が椿へ向く。 『……そして、ようこそ。ツバキくん』 『は、はい。よろしくお願いします』 少しだけ硬くなった返事に、ハンスは小さく笑った。 『緊張しなくていい。これから一週間、ちゃんと君の目で見ればいい ……それにしても、ドイツ語は上達しているようだね』 その言葉に、椿は小さく頷いた。 『ありがとうございます』
last updateLast Updated : 2026-09-06
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183食目

朝、先に目を覚ましたのは蓮だった。 薄いカーテンの隙間から差し込む光が、まだ柔らかい。 慣れない天井を数秒見上げて、ようやくここがドイツのホテルだと思い出す。 隣を見る。 椿はまだ眠っていた。 昨夜あれだけ緊張していたのだから、疲れていたのだろう。 起こさないように静かに身体を起こそうとして、 ふと、服の裾に小さな違和感があった。 「……?」 視線を落とす。 ゆっくり布団をどけてみると、自分の部屋着の裾をつまむ小さな手が伸びていた。 細い指が、ぎゅ、と軽く掴んでいる。 一瞬、蓮は何も言えなかった。 昨夜は、お互い離れて寝たはずだ。 だが確かに、小さな手がこちらに伸びてきている。 心なしかわずかにこっちに寄っているようにも見える。 その理由は、聞かなくてもなんとなく分かった。 小さく息を吐いて、 蓮はその手を起こさないよう、そっと外す。 指先にわずかに残る温度が、妙に意識に残った。 静かにベッドを降りる。 その気配で、椿もゆっくりと目を開けた。 「……ん……」 まだ半分眠ったままの声。 蓮は少しだけ振り返る。 『悪い、起こしたか?』 『ううん……大丈夫……』 ぼんやりしたまま返事をして、 椿は数秒そのま
last updateLast Updated : 2026-09-06
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184食目

朝から歩き続けていたおかげか、昼を過ぎる頃には椿の足もようやくこの街のリズムに慣れてきていた。 石畳の感触。 乾いた風。 どこを見ても視界の端にサッカーがある景色。 通り沿いにはクラブのグッズショップが当たり前みたいに並んでいた。 ユニフォーム。 マフラー。 スパイク。 子ども用の小さなボールまで、全部が生活の中に自然に溶け込んでいる。 『……すごいわね』 ショーウィンドウを覗き込みながら、椿が小さく呟く。 『本当に、街全体がサッカーなのね』 『まあ、そうだな』 『スーパーより多い気がする』 『それは言い過ぎだろう』 『でも、それくらいの感覚よ。日本とは全然違う……』 蓮は少しだけ笑った。 日本でも人気はある。 けれど、ここはもっと近い。 競技じゃなく、文化としてそこにある。 公園を通りかかると、小さな子どもたちがボールを蹴っていた。 きちんとしたゴールなんてない。 バッグを二つ置いただけの簡単なもの。 それでも全員、本気だった。 転んで、笑って、また追いかける。 椿はその様子をしばらく見ていた。 『こういうところから、始まるのね』 『だいたいはな』 『蓮くんも、始めたてはこんな感じだったの?』 『俺はまだここまでじゃなかったな。 でも、友だちと近所の公園でずっとサッカーしてたな』 『想像つくわ』 その返事に、蓮が少しだけ眉を上げる。 『褒めてはないわよ』 『だろうな』 昼は、通り沿いの小さなソーセージ屋で食べた。 立ったまま食べるような、簡素な店だった。 焼きたてのソーセージ。 香ばしいパン。 マスタードの匂い。 椿は一口食べて、目を丸くする。 『……美味しい』 『だろ』 『悔しいけど、これは美味しいわ』 『なんで悔しいんだ』 『栄養的には色々言いたいのに、美味しい』 『説得力あるな』 蓮も笑いながら、自分の分を口に運ぶ。 こういう味も、 この街では日常だった。 午後、最後に向かったのは大きなスーパーだった。 ここだけは、椿の歩く速度が明らかに変わった。 『……広い』 『さっきからそればっかりだな』 『だって、本当に広いのよ』 目が完全に仕事のそれだった。 野菜売り場。 乳製品。
last updateLast Updated : 2026-09-07
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185食目

まだ薄暗い部屋。 カーテンの隙間から差し込む朝の光が、ゆっくりと輪郭を作っていく。 椿は、ぼんやりした意識のまま、少しだけ身体を動かそうとして、 すぐに気づいた。 「……」 動けない。 というより、抜け出せない。 背中に回された腕。 近すぎる体温。 規則正しい呼吸。 完全に、蓮に包まれていた。 昨夜のことを思い出して、一気に目が覚める。 あのまま眠って、そのまま朝になって、結果がこれだった。 「……なんで、あんなこと」 小さく、誰にも聞こえない声で呟く。 無理に抜け出そうと思えばできる。 けれど、それをするとこうも気持ち良さそうに寝ている蓮を起こしてしまう気がして、椿は諦めたように小さく息を吐いた。 まだよく知らない国の朝。 全然慣れないホテルの部屋。 何より、蓮に包まれているという状況。 何一つとして普段どおりではない状況。 なのに今は、不思議なくらい落ち着いている。 胸の奥にある緊張が、この体温だけで少しずつほどけていく。 こんなふうに、安心できる相手になってしまったのだと、改めて思う。 しばらくして、眼の前の気配がわずかに動いた。 蓮が目を覚ましたらしい。 「……ん」 まだ眠そうな声。 椿は少しだけ口元を緩める。 『……遅い。おはよう』 数秒遅れて、ようやく蓮の意識が追いつく。 『ああ。おはよう』 低い声がすぐ近くで返る。 その距離に、今さらみたいに少しだけ心臓が跳ねた。 けれど、昨日ほどではない。 ちゃんと、慣れてきている。 『昨日は、よく眠れたか?』 『ええ。おかげさまで』 そう言って、ぎゅ、と身を寄せる。 今の浮かべている表情を見られたくなかった。 『椿?』 『……見ないで。寝起きの顔はまだ恥ずかしいの』 『……そうか? じゃあ、先に起きるな』 蓮の気配が洗面所に消えていったのを確認して、椿は一度大きく息を吐いた。 『切り替えなさい……わたし』 そう言って、かたわらのハンガーにかけてあったパーカーに着替える。 これを着ると、一気にスイッチが入る気がする。 『……よし』 そう独りごちて、椿も洗面所に向かった。 その後、お互いに準備を進めている最中、蓮が言った。 『今日の予定、確認し
last updateLast Updated : 2026-09-07
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186食目

クラブの練習場に足を踏み入れた瞬間、空気が違った。 静かだった。 騒がしさがないわけじゃない。 選手同士の会話もあるし、スタッフが行き来する音もある。 それでも、無駄な音がない。 全員が当たり前みたいに、自分のやるべきことを理解して動いている。 ハンスの少し後ろを歩きながら、蓮は自然と周囲を観察していた。 トップチームの選手たちが、ウォーミングアップの準備をしている。 近くで見ると、まず身体が違う。 肩幅。 脚の太さ。 立っているだけで分かる重心の低さ。 テレビ越しでは分からない密度が、そこにはあった。 『……でかいな』 思わず小さく漏れる。 ハンスが隣で笑った。 『今さらかい?』 『画面越しと実物は違う』 『だろうね。ここではそれが基準だ』 その輪の中に、自分が入る。 そう思った瞬間、はっきりと理解する。 まだ足りない。 高校では、体格差を技術で埋めてきた。 読みで勝ち、位置で勝ち、判断で勝ってきた。 だがここでは、その前提ごと押し潰される。 身体がある。 速さがある。 その上で、技術もある。 まだ、頼りない。 でも、不思議と焦りはなかった。 感情に呑まれた先に何もないことは、もう知っている。 怪我をした時。 戻れなくなりかけた時。 冷静じゃない状態で得たものは、簡単に崩れる。 いや、得ようとする前に崩れる。 必要なのは、積み上げることだけだ。 『レン』 ハンスに呼ばれ、前を向く。 『紹介しておこう』 簡単な挨拶。 トップの選手たちは思ったよりあっさりしていた。 軽く手を上げる者。 短く名前だけ返す者。 特別扱いなんてない。 それが逆に心地よかった。 『今日だけの練習参加だ。 ただし、手加減は期待しないことだね』 『そのつもりだ』 ハンスが満足そうに頷く。 『よろしい。なら始めよう』 練習が始まった。 最初の鳥かごから、すでに違った。 速い。 いつもの部活の倍近いテンポでボールが回る。 一つの判断が遅れれば終わる。 寄せも鋭い。 半歩遅いだけで、もう奪われる距離に入ってくる。 蓮は受ける。 見る。 散らす。 それだけで精一杯だった。 いつ
last updateLast Updated : 2026-09-07
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187食目

大学の正門で蓮と別れたあと、椿は小さく息を吐いた。 隣にいた体温がなくなるだけで、急に周囲の空気が広く感じる。 『緊張してる?』 隣を歩くディーターが、穏やかに笑いながら聞いた。 『……かなり』 正直に答えると、ディーターは小さく頷いた。 『それでいい。緊張しない方が珍しいよ。 君にとってここは、人生を変える場所だろうからね』 その言葉が、妙に胸に残った。 人生を変える場所。 それは大げさじゃない。 むしろ、その通りだった。 校舎へ入ると、そこに広がる光景に圧倒された。 高い天井。 広い廊下。 行き交う学生たち。 聞こえてくるドイツ語と英語。 掲示板には研究発表やインターンの案内が並び、クラブとの連携プログラムのポスターが当たり前のように貼られている。 椿は、歩きながらずっと視線を動かしていた。 全部を見逃したくなかった。 『まずは講義を見ようか』 『はい』 案内された教室では、すでに講義が始まっていた。 テーマは、試合期におけるコンディション管理。 試合前後の栄養設計。 リカバリーの速度。 睡眠と筋疲労の相関。 話している内容そのものは、理解できる。 知識として知らないわけじゃない。 けれど、その精度が違った。 前提として話されるレベルが高い。 日本の高校で学ぶそれとは、最初から立っている地面が違う。 ノートを取る手が、自然と速くなった。 次に見たのは、実習室だった。 測定機器。 身体組成の分析設備。 実際のクラブ帯同を想定したシミュレーション環境。 ここでは勉強が、そのまま現場に接続されていた。 『……すごい』 思わず漏れた言葉に、ディーターが笑う。 『すごい、で終わらせないことが大事だよ』 『はい』 その返事は、自分でも驚くほど真剣だった。 午後。 学生たちが自然に集まって話しているスペースで、 椿は少し離れた場所から、その会話に耳を傾けていた。 『この前、ブンデスの下部組織で帯同した時さ』 『ああ、あのクラブ?』 『試合期の炭水化物の調整がかなり独特だったんだよ』 『宗教圏が違うと、食事設計も変わるしね』 『女子チームの方は、また別で難しいよ』 会話の熱量が違う。 誰もが当た
last updateLast Updated : 2026-09-07
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188食目

ホテルの部屋へ戻った時には、外はすっかり夜になっていた。 カードキーを差し込み、静かに扉を開ける。 部屋の中は暖かく、シャワーを終えたばかりなのか、わずかに湯気の名残があった。 ソファに座った蓮が、タオルを首にかけたまま顔を上げる。 『おかえり』 その声音は、昼間別れた時と同じ温度だった。 『……ただいま』 返した声が、思っていたより柔らかい。 蓮はその一言で椿の疲れを察したのか、余計なことは聞かずにグラスを一つ押し出した。 『水、飲むか』 『うん。ありがとう』 喉が渇いていた。グラスを半分ほど空けてから、椿はようやくソファの反対側へ腰を下ろす。クッションに沈み込んだ瞬間、張り詰めていた身体が一気に重くなった。 『……疲れた顔してるな』 『疲れたもの』 『なんかあったのか?』 『え?』 『帰り、遅くなったの。なにかトラブルでもあったのかなって』 『ああ、それね。別にトラブルとかじゃないわ。 ちょっと、ディーターさんに頼みごとしてたの』 『頼みごと?』 『そう。でもまだ、内緒』 『そうか』 蓮はそれ以上追求してこなかった。 『……聞かないのね』 『ああ。椿なら言うべきときに言うだろ。 まだ内緒ってことは今じゃないんだろう?』 『うん。そうだけど……』 『なら、話せるタイミングになったらまた聞かせてくれ。 それで?今日はどうだったんだ?』 『……全然、足りなかった』 昼間から、ずっと胸の中に残っていた言葉だった。 『講義も、学生の会話も。 半分も聞き取れなかった』 フォークを持つ指先に、少しだけ力が入る。 『準備してきたつもりだったの。 ちゃんと勉強してきたし、覚悟もしてた』 小さく息を吐く。 『でも、全然足りなかった』 悔しい。 その感情を、今日は何度も飲み込んだ。 『話すなんて、もっと無理。 自分がまだ入口にも立ててないって、嫌になるくらい分かった』 口にすると、昼間の感覚がまた鮮明になる。 聞き取れない会話。 笑いながら飛び交うクラブ帯同の話。 回復設計や文化圏ごとの食事管理を、当たり前の実務として扱う空気。 『それで、どうしたいんだ?』 問いかけは、それだけだった。 慰めも、励ましもない。 でも、それでよかった。
last updateLast Updated : 2026-09-07
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189食目

 朝、目を覚ました時には、もう隣の体温が近いことに驚かなくなっていた。  薄いカーテンの隙間から差し込む光。  まだ少し冷たい空気。  そして、背中に回された腕。  椿は目を開けたまま、しばらくそのままでいた。  昨日までは、その距離にいちいち心臓が跳ねていたのに、今は不思議なくらい静かだった。  慣れたというより、ようやく受け入れたのかもしれない。  この人は、こうして当たり前みたいに隣にいる。  その事実を。 『……起きてる?』  小さく声を出すと、すぐ近くで低い声が返る。 『少し前から』 『なら先に言ってよ』 『椿が静かだったからな』  少しだけ呆れて、でも笑ってしまう。  蓮の腕が離れ、二人はゆっくりと身体を起こした。  顔を洗い、簡単に身支度をして、ホテルの朝食を取る。  窓際の席。  焼きたてのパンの匂い。  昨日までより、ずっと自然だった。 『今日もトップの練習?』 『ああ。昨日よりはちゃんと食らいつく』 『ちゃんと』 『昨日は本当に何もできなかったからな。  ……なにかひとつでも、昨日を超える』  そう言いながらも、蓮は少し楽しそうだった。  椿はコーヒーに口をつけて、小さく頷く。 『私は今日もディーターさんと行動するわ』 『例の、内緒のやつか』 『ええ』 『まだ教えてくれないんだな』 『……まだ、だめ。終わったらちゃんと話すわ』 『分かった』  蓮は疑わない。  急かさない。  そういうところに、いつも助けられている。  大学の近くで蓮と別れ、椿はディーターと合流した。  昨日よりも、足取りは軽い。  緊張はある。  でも、それ以上に、やることがはっきりしていた。 『おはよう、ツバキ』 『おはようございます』  ディーターは穏やかに笑った。 『昨日のお願い、ちゃんと伝えておいたよ。  先方も面白がっていた』 『……本当ですか?』 『もちろん。  普通、オープンスクールに来た高校生が「店を手伝わせてください」なんて言い出さないからね。  それも日本の高校生が、だ』  少しだけ恥ずかしくなって、椿は目を逸らした。 『でも、必要だと思ったんです』  昨日、大学で痛感した。  知識の前に、言葉が足りない。  講義を理解する以前に、日常の会話を自然に拾
last updateLast Updated : 2026-09-08
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