トレーニングを始めて三日目の朝、橘家に隣接されたトレーニングルームで、蓮は足裏を合わせて膝を外へ落とす。骨盤を立てたまま呼吸を通すと、初日と前回に途中で触れていた引っかかりが手前で消え、そのまま関節が一段奥で収まって角度が揃う。 吐くたびに膝がわずかに沈む。だが、落ちる先はぶれない。 蓮は数呼吸そのまま保ち、ゆっくり戻してからもう一度同じ体勢に入る。今度は探る間がなく、最初から止まる位置が決まっている。 正面に立つ賢崇は何も言わず、膝の高さと骨盤の角度、それに呼吸の流れだけを追っていた。「……いいね。そのまま、もう一回入ってみようか」 蓮は短く頷き、同じ位置まで膝を落とす。吐き終わりでさらに数ミリ沈んでも、そこで形が崩れない。 賢崇が横へ回る。前回は膝の外へ手を添えて止まりやすい位置を探っていたが、今日は触れる前に動きが収まっていた。「……押さなくても入るね」 蓮は視線を落とし、自分の膝の位置を見る。「昨日より深くなってますかね?」「うん。しかも無理がない」 賢崇は軽く膝の外に手を置き、逃げる方向だけ塞ぐ。蓮はそのまま呼吸を続け、関節の奥に残っていた抵抗を探るようにわずかに沈むが、初日にあった詰まりは戻ってこない。「可動域が広がってきているだけじゃないね。止まる位置も揃ってる」 蓮は姿勢を戻し、そのまま股関節から折るように前へ倒れる。背中のラインを崩さずに角度を保つと、腿の内側に入る張りが途中で散らず、前より深いところで均一に伸びる。 賢崇が視線を向けると、壁際からフォームローラーが転がってくる。賢崇が示した位置に内ももを当て、蓮は体重を預ける。鈍い圧が一点に入るが、前回のように逃げるような硬さは続かず、数呼吸で奥の抵抗がほどけた。「そこ、抜けるの早いな」 蓮は返事をせず、角度だけを微調整する。圧が抜ける位置を探る動きに迷いがなく、乗せ直したあとも同じところへ戻る。 壁際では、椿がノートに視線を落としたままペンを走らせている。途中で一度だけ手を止め、蓮の膝の落ちる位置と呼吸の長さを見てから、また記録
Last Updated : 2026-08-17 Read more