「僕をあなたの本当の『仕事』に付き合わせてもらえませんか?」早朝の外商部オフィスに、絢人の声が静かに響いていた。私は背筋に冷たい汗が伝うのを感じながら、眼鏡の奥で目を細めた。表情筋を総動員して感情を押し殺し、冷淡な声を作る。「……何の冗談かしら、三島さん」「冗談に見えますか?」絢人は一歩も退かず、澄んだ瞳で私を見据えていた。「七年前、僕が生きていられたのはあなたのおかげです。そして、僕がかつて心を救われた女性……東条華江さんの娘さん。東条志乃さん、それがあなたの本当の名前ですね」私の喉が小さく鳴った。隠し通してきた過去と正体。それが、父を殺した仇の息子によって、完璧に暴かれている。「知っていて、なぜ今まで黙っていたの? 私を警察に突き出すことだってできたはずよ」「突き出す理由がありません」絢人は穏やかに首を振った。「僕はこのデパートの腐敗も、父が過去に犯した罪も知っています。そして、あなたが復讐のためにここへ来たことも。……僕はあなたを止めるつもりはありません」「……信じられるわけがないでしょう」私は冷ややかに言い捨てた。「あなたは三島宗一の息子よ。いずれはこのデパートを継ぐ身。そんなあなたが、自分の家を壊そうとする私に協力するなんて、罠以外の何物でもないわ」「そう疑うのも無理はありません」絢人は上着の内ポケットに手を入れると、小さなシルバーのUSBメモリを取り出した。それを私のデスクの上に静かに置く。「これは?」「三島グループの機密金庫と、取締役会専用サーバーへのアクセスコードです。父が個人で管理している裏口座のリストも一部入っています」私は目を見開いた。「……これを私に渡して、どうするつもりなの」「使ってください。僕が本気である証拠です。これがあれば、父の側近たちの不正を暴くのはもっと容易になるはずです」デスクの上のUSBメモリを見つめる。これが本物なら、復讐の速度は跳ね上がる。だが、それと同時に、この男の底知れない闇に足を踏み入れることになる。「なぜそこまでするの。あなたにとって、何のメリットもないはずよ」「メリットならありますよ」絢人はわずかに口角を上げ、どこか哀しげに微笑んだ。「あなたが復讐を果たし、すべてが終わるその瞬間まで……僕があなたの隣にいられる」狂気すら孕んだその瞳に、私は息を呑んだ。こ
Terakhir Diperbarui : 2026-08-18 Baca selengkapnya