大河内親子の逮捕から三日が経過しても、本社ビルの重苦しい空気は晴れなかった。外商部を牛耳っていた根津、そして会社の資金繰りを一身に担っていた大河内。二つの巨大な柱を立て続けに失った打撃は、経営陣の足元を激しく揺さぶっていた。社長室の重厚なマホガニーのデスクの前で、三島宗一は冷え切った紅茶のカップを握りつぶさんばかりの力で握りしめていた。「大河内まで失脚するとは……誰だ。一体誰が裏で糸を引いている」宗一の低い唸り声が、静まり返った執務室に響く。根津の横領、大河内の裏金ルート流出。あまりにも手際が良く、社内の急所だけを正確に抉り取っていく手口。偶然の不祥事などではない、明確な悪意と計算に基づいた内部崩壊の兆候だった。「これ以上の資金流出と信用失墜は、メインバンクの離反を招く。……悠長に内部調査をしている時間はない」宗一は手元のインターホンを押した。「秘書室か。白川財閥の会長へ連絡を入れろ。……絢人と結衣お嬢様の婚約の件、予定を前倒しして今月中に正式発表するとお伝えしろ」東城デパートの筆頭株主である白川グループ。その強大な資本と後ろ盾さえ手に入れば、銀行への牽制にもなり、揺らぐ経営基盤を一気に盤石なものへ立て直すことができる。息子を駒として差し出し、己の権力を守る——宗一にとって、それは迷う余地のない一手だった。◇その日の昼過ぎ。社内ポータルサイトに掲載された一本の緊急通知が、全館を駆け巡った。『三島絢人氏と白川グループご令嬢・白川結衣様の婚約内定について』外商部のフロアは、一気に色めき立った。「三島さん、おめでとうございます!」「さすが御曹司、白川グループのお嬢様とだなんて完璧なお似合いですね」同僚たちが口々に絢人のデスクを取り囲み、祝福の言葉を浴びせる。だが、輪の中心にいる絢人は、上等なスーツに身を包んだまま、冷淡な表情を崩さなかった。愛想笑いすら浮かべず、ただ儀礼的に軽く会釈を返すだけだ。その澄んだ瞳は、祝福の言葉を述べる社員たちの間をすり抜け、フロアの片隅へ向けられていた。そこには、黒縁眼鏡をかけ、淡々と伝票整理を続ける私の姿があった。周囲の喧騒など自分には無関係だと言わんばかりに、私はキーボードを叩く指を止めない。視線すら上げず、ただ冷徹に業務をこなしている。(三島宗一め……追い詰められて、なりふり構わず白川財閥の
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-08-25 อ่านเพิ่มเติม