全社朝礼での三島宗一の粛清宣言からわずか二時間後。 本館の正面エントランスに、黒塗りのワンボックスカーが三台横付けされた。降り立ったのは、揃いのチャコールグレーのスーツを纏った十数名の男女。胸元には無機質な銀のバッジが光っている。 民間危機管理コンサルタント「アイギス・リスクマネジメント」。 その先頭を歩く女性が、外商部フロアの自動ドアを音もなく押し開けた。 切りそろえられた黒髪のボブに、装飾のない銀縁眼鏡。怜悧な美貌には感情の起伏が一切なく、手にした薄型タブレットを淡々と操作しながらフロア中央へと歩み寄ってくる。 「本日付で、社長直属の特別内部監査を担当します。アイギスの神堂冴子です」 低く乾いた声が、静まり返るオフィスに響いた。 「これより、全端末の通信ログ、社内メール、私物ロッカーの抜き打ち検査を実施します。社内規定およびコンプライアンス遵守のため、全員その場を立たず、指示に従ってください」 冴子の合図とともに、部下の監査員たちが素早い手つきでフロア内のWi-Fiルーターに妨害機器を接続し、社員用PCのポートに解析ドングルを次々と差し込んでいく。 「な、なんだこれは! 我々外商部には顧客の最高機密情報があるんだぞ!」 ベテラン社員が抗議の声を上げたが、冴子は視線すら向けずに言い放った。 「その機密が外部へ漏洩している疑いがあるからこそ、監査を行っています。抵抗は業務妨害と見なします」 一切の妥協を許さない冷徹な圧力。 フロアの隅で伝票整理を続けていた私は、キーボードから手を離し、手元に視線を落としたまま状況を分析していた。 (外部の専門部隊……三島宗一、いよいよ警察も信用できず、金の力で私設の猟犬を飼い始めたのね) 足音が近づき、私のデスクの真横でぴたりと止まった。 顔を上げると、神堂冴子が無機質な瞳で私を見下ろしていた。 「あなたが佐倉志乃さんですね」 「はい。外商部事務の佐倉でございます」 私は控えめな笑みを作り、眼鏡の奥で視線を合わせた。 冴子は手元のタブレットに私の登録データを表示させ、細い指先でスクロールする。 「中途採用から三年。欠勤ゼロ、目立った社内トラブルなし。前職は地方の卸売会社……」 冴子は画面から視線を上げ、私の目を覗き込むようにじっと見つめた。
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-09-04 อ่านเพิ่มเติม