「……お父さま?」美紗は、送られてきた写真を拡大した。間違いない。今よりずっと若いけれど、父だった。制服姿の香子の隣で、穏やかに笑っている。《この写真、いつのものですか?》《たぶん高校の入学式です!》《校門のところでみんな写真撮ってて》続けて、別の写真が届いた。今度は数人の生徒と、その家族らしい大人たちが一緒に写っている。その端にも、香子と父がいた。《お父さん若いですね笑》何気ない言葉だった。けれど、美紗は返事をする気になれなかった。写真の中の父は、香子の肩に手を添えている。ただ、それだけ。父親なら当たり前のことなのかもしれない。それでも、胸の奥がざわついた。美紗には、こんな写真はなかった。父と並んだ入学式の写真も。学校へ来てもらった記憶も。――どうして。また、香子ばかり。祖父母にも大切にされて。父にも大切にされて。十億円もの財産を残されて。今は、来栖勇樹にまで守られている。美紗は唇を噛んだ。《ほかにも、お父さまと写っている写真はありますか?》《あるかな? 探してみますね!》相手は相変わらず楽しそうだった。しばらくして、何枚か写真が届く。学校行事。校門。保護者が集まる体育館。その中に、父の姿が何度かあった。《香子さんのお父さん、結構学校来てましたよ》美紗の指が止まる。「……何よ、それ」自分は知らなかった。香子がどんな学校生活を送っていたのか。父が、香子のためにどれだけ学校へ足を運んでいたのか。何も。「ずるい……」低い声が漏れた。そのとき、部屋の外から久恵の声がした。「美紗? いるの?」美紗はスマートフォンを握ったまま、部屋を飛び出した。「お母さま」「何よ。朝から」「これ」リビングにいた久恵へ、スマートフォンを突きつける。久恵は面倒そうに画面を見た。「お父さま、お姉さまの学校にはこんなに行ってたの?」「昔のことでしょう」「私のときは来てくれなかったじゃない!」久恵の表情がわずかに強張った。「仕方ないでしょう。あの頃とは事情が違ったのよ」「何が違うの?」「あなたのお父さまは忙しかったの」「お姉さまのときだって忙しかったでしょ!」久恵は苛立ったように息を吐いた。「朝から大声を出さないでちょうだい」「だって!」「そんな昔の写真なんて、どうでもいい
Last Updated : 2026-09-26 Read more