白い花に、返事を書くべきか。 ノエルは朝から、そのことで悩んでいた。 白い花そのものは、もう小部屋にはない。 薬師が調べ、監査官が記録し、今は証拠保管庫にしまわれている。 ノエルの部屋にも、食卓にも、廊下にもない。 それでも、花というものは不思議だった。 そこになくても、匂いだけが残るような気がする。 実際には匂わない。 けれど、頭の中で白い花が咲いている。 そういう顔を、ノエルはしていた。 朝食の卵は、三分の一だけ食べた。 スープはよく飲んだ。 硬いパンは、今日はスープに入れない。 机の下では、犬のパンが丸くなっている。 昨日、リナに貸し出されなかったことを知っているのか知らないのか、相変わらずのんきな顔だ。「白い花は、ありがとうって言いますか」 ノエルが突然言った。 スプーンを置き、皿の横の硬いパンを見ながら。 セレスティアはすぐに答えなかった。 リュシアンも紅茶を持つ手を止めた。「おばあさまが、花をくれました」 ノエルは続けた。「花をもらったら、ありがとうって言います」「そう教わりましたか」「はい」「誰に?」「マルタと、お母さまと、おばあさまです」 最後の一つで、声が少し小さくなった。「贈り物をもらったら、ありがとうって言いなさいって」「礼儀としては、そう教わることが多いわね」 セレスティアは言った。「礼儀」「ええ。人と人が、角を立てずにやり取りするための形です」「形」
Last Updated : 2026-09-15 Read more