青い封筒の話は、一晩眠っても薄くならなかった。 むしろ、朝になってからのほうが濃くなった。 ノエルは朝食の席で、スプーンを持ったまま黄色い花を見つめていた。 食卓の中央に置かれた小さな花。 昨日より少しだけ花びらが開いている。 その下には、まだノエルの紙が置かれている。『今日は、黄色です』 その紙は、白い花を見ないと決めた日のものだ。 けれど今朝のノエルは、黄色を見てもすぐには笑わなかった。 膝の上には布兎。 本物の青いリボンは、耳に結ばれている。 犬のパンは机の下にいたが、ノエルの足に顎を乗せている。 たぶん慰めているのではない。 ちょうどよい高さだから乗せているだけだ。 それでも、今朝はその重みが少し役に立っているようだった。「青い封筒は」 ノエルが言った。 スープには手をつけていない。「セレスティアさまのお名前でした」「ええ」「ティアって」「ええ」「それは、セレスティアさまの古い名前ですか」「古い呼び方ね」「お母さまだけ?」 セレスティアは、少しだけ胸の奥が痛んだ。「昔は、ミレイユがそう呼んでいました」「わたしは呼びません」「もちろん」「呼んだほうがいいですか」「いいえ」「呼びません」 ノエルは少し強く言った。 怒っている。 名前に怒っているのではない。 その名前で、母がセレスティアへまた何かを渡したことに怒っている。
Last Updated : 2026-09-25 Read more