黄色いリボンは、朝になっても皿の上にあった。 昨夜、ノエルが自分でほどき、小さく畳んで置いたものだ。 窓辺の光を受けて、卵色の布がやわらかく光っている。 派手ではない。 強くもない。 けれど、そこにあるだけで昨日の店の匂いが少し戻ってくる。 鈴の音。 棚に並んだたくさんの黄色。 知らない女の子の「きれい」。 セレスティアが笑って怖かったこと。 リュシアンが店ごと買わずに済んだこと。 未来を少し髪に結んだこと。 ノエルは寝間着のまま、皿の上のリボンを見ていた。 手は伸ばさない。 触りたいような、触りたくないような顔をしている。 セレスティアは扉の前で立ち止まった。 声をかける。「おはよう、ノエル」 ノエルは振り返った。「おはようございます」「よく眠れましたか」「途中で一回起きました」「うん」「でも、リボンが皿にありました」「ええ」「なくなっていませんでした」「ちゃんとありましたね」 ノエルは、また皿を見る。「でも、今日は結ぶか分かりません」「結ばなくてもいいですよ」 セレスティアが言うと、ノエルの眉が少し寄った。 その反応で、言葉が足りなかったと分かる。 ノエルは「いい」と言われただけでは足りない日がある。 どうしていいのか。 結ばないことが何を意味するのか。 そこまで確かめないと、不安が残る。「結ばないと」
Last Updated : 2026-10-14 Read more