雅人はソファに崩れ落ち、何度も首を振った。「ありえない。俺はまだ許していないのに、勝手に死ぬなんて……」乾いた笑いが漏れた。雅人がまだ私を許していない。それが、私には死ぬことすら許されない理由だったらしい。雅人は床に落ちたスマホを拾い、花と二人で写った唯一の写真をもう一度開いた。見つめているうちに、肩が震え始めた。画面に二筋の涙が落ちた。雅人は突然立ち上がり、家を飛び出した。ハンドルを握る両手まで震えていた。雅人の車は再び、私と花が暮らしていた家の前に止まった。何年も寄りつかなかったのに、この数日だけで何度も足を運んでいる。泣けばいいのか、笑えばいいのか分からなかった。今度は門を開けると、迷わず玄関まで進んだ。扉の前にしばらく立ち尽くしたあと、5年間閉ざされたままだった扉を押し開けた。扉が軋み、湿気とカビ臭さを含んだ熱気が外へ流れ出した。部屋は、私が死んだときのまま整っていた。ただ、ダイニングテーブルとローテーブルの上だけが少し散らかっていた。私が死んだあと、花が一人で過ごすうちに散らかしたのだ。リビングの奥の床には、現場検証で二人が倒れていた位置につけられた、大小二つの白い印が残っていた。大きいほうが私で、小さいほうが花だった。私は洗面所から寝室へ戻る途中で意識を失い、床に倒れた。花は私の胸に伏せたまま、静かに息を引き取った。雅人は二つの白い印を凝視した。顔から血の気が引き、体が震え始めた。張りつめていた表情もみるみる崩れ、ついには完全に取り乱した。雅人は足を引きずるようにして、一部屋ずつ見て回った。初めに入ったのは花の部屋だった。ベッドの上には、雅人が会社のイベントでもらい、何気なく持ち帰った子豚のぬいぐるみが置かれていた。父親が花に与えた、たった一つのプレゼントだった。枕元には、私が撮った雅人と花の写真が飾られていた。そのそばには、花が描いた家族の絵もあった。パパとママ、そして自分を描いたものだった。雅人が両手で絵を持つと、涙が紙の上に落ちた。慌ててティッシュを取り出し、濡れた部分を丁寧に拭いてから、そっと元の場所へ戻した。隣は私の部屋だった。数着の服と本があるだけの、簡素な部屋だった。雅人はクローゼットから私の服を取
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