潤也は苦笑した。「恋愛したくないわけじゃないんです。ただ、根本的に交際まで発展しないと言いますか」「交際まで発展しないとは?」「以前、お見合いで感じのいい女の子と2人ほどお会いしたんです。どちらも好印象で、お付き合いしてみようかと思ったんですが……結局、私が忙しすぎて一緒に過ごす時間がないと呆れられ、最後はうやむやになって終わりました」それを聞き、碧斗の表情がわずかに強張った。長い沈黙のあと、どこか申し訳なさそうに口を開いた。「俺のそばにいるせいで、苦労をかけるな」仕事に明け暮れるあまり、自分の妻に愛想を尽かされたばかりか、特別補佐の縁談まで潰してしまっていたとは。潤也はあっけに取られ、思いがけない気遣いに恐縮しながら慌てて首を振った。「社長、そんな!あなたのおそばで働き、学ばせていただけるのは私の誇りです。苦労だなんて少しも思っていません」「だが、俺がお前に恋愛をさせていない」潤也はきっぱりと言った。「私は今、一番仕事を頑張るべき時期です。家庭を持つのは身を立ててからです。社長も常々仰っているではありませんか。男は仕事を第一とし、一番いい時期に自分の足場を固めるべきだと」仕事を頑張るべき時期。仕事第一。普段、自分が部下を鼓舞するために口にしていた言葉が、今となってはどうしようもなく滑稽に思えた。仕事に打ち込むのは正しい。だが、家庭を犠牲にしてまでやることなのか?この2年間、彼は死に物狂いで働き、結城グループをさらなる高みへと押し上げ、時価総額を何倍にも跳ね上げた。世間は彼の卓越した手腕をもてはやし、先代をも凌駕する、名実ともに結城家を背負って立つ当主だと絶賛した。だが、そんな眩いばかりの功績も、琴葉から離婚を突きつけられた瞬間、何ひとつ意味をなさなくなってしまった。彼女は言った。あなたの頭の中には仕事しかない。いつも家を空けてばかりだ、と。彼女はこの2年間ずっと耐え忍び、そしてついに限界を迎えた。自分の子供を身ごもってなお、これ以上の妥協を拒み、頑なに離婚を求めてきた。世間は「若くして成功を収めた」と持てはやすが、笑い話にもならない。自分はたったひとつの家庭すら守れなかったのだ。自分が家庭を大切にできなかったばかりか、手塩にかけてきた部下の考え方まで仕事人間に歪めてしまっていた。「
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