その言葉に、碧斗は表情をピクリと強張らせ、琴葉を真っ直ぐに見た。「お前……まさか、お母さんに何か余計なことを言ったんじゃないだろうな?」「ご心配なく。私は約束を守る主義よ。言ってはいけないことは口にしてないわ」碧斗は彼女の隣に腰を下ろした。「なら、お母さんは今日何をしに来たんだ?」「招待状を届けに」琴葉はテーブルの上の招待状を指差した。「明後日、藤堂家当主の銀婚式のパーティーにあなたを出席させるためよ」碧斗は招待状を手に取って中を確認し、隣の女に視線を向けた。「お母さんは、俺たち2人で出席しろと言ったはずだが?」「そう言っていたわね。でも、私は行かないわ」琴葉は彼を見据えた。「私があなたに約束したのは、離婚の事実を公にしないことだけよ。外の人や家族の前であなたの妻を演じてあげるなんて、一言も約束していないわ。それに、あなたなら同伴する女性に困ることなんてないでしょうし」「藤堂社長の銀婚式だぞ。妻以外の女を同伴できるわけがないだろう」碧斗は彼女を見つめ、誘うような口調で言った。「だから……琴葉。ここは一つ友情に免じて、俺に付き合ってくれないか?」琴葉はすげなく一蹴した。「お断りよ」「なぜだ?」「だって、私たちに友情なんてないもの」碧斗は食い下がった。「なら、有償での依頼ならどうだ?」「いくら積まれたって、私……」「1億円だ」出かかっていた拒絶の言葉をピタリと止め、琴葉は聞き返した。「……いくらですって?」澄んだ魅力的なその瞳を見つめながら、碧斗は思わずごくりと喉仏を動かした。「1億円の報酬を払う。一緒に来てくれないか?」――パーティーに一度顔を出すだけで、1億円も稼げるの?そんな割のいい仕事、他を探したってあるわけないじゃない。琴葉の心がぐらりと揺れた。まとまった額のへそくりはあるとはいえ、子供を育てるには湯水のようにお金がかかるという。お腹の赤ちゃんのために、自分の能力の範囲内で稼げるうちに稼いでおくに越したことはない。「……まぁ、いいでしょう」琴葉は眉を上げた。「うちの子のミルク代を稼いだってことで、引き受けてあげるわ」碧斗の口角がわずかに上がり、彼はスマホを取り出して数回タップした。数秒後、琴葉のスマホがピコンと鳴った。画面に目を落とすと、口座にきっちり1億円が振り込まれ
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