翌朝。碧斗はダイニングテーブルについて30分も待っていたが、琴葉は一向に朝食に下りてこなかった。彼は腕時計に目をやり、心配になって幸子に声をかけた。「まだ下りてこないが、上で寝ているのか、それとも具合でも悪いのか見てきてくれないか?」幸子は答えた。「琴葉さんは今朝は朝食を召し上がらないそうです」「食べない?」碧斗は一瞬呆気にとられた。「どうしてだ?」幸子が口を開きかけた時、階段の方から物音がした。碧斗が振り向くと、ブルーのワンピースを着て、普段よりも少し大きめのバッグを肩にかけた琴葉が下りてくるところだった。一目で外出すると分かる身なりだ。彼女は歩み寄り、幸子に尋ねた。「鈴木さん、門はもう開けてある?」幸子は頷いた。「30分前に開けてございます」碧斗は不審そうに彼女を見た。「こんな朝早くから、どこへ行くんだ?」琴葉は答えた。「妊婦健診よ」その言葉に碧斗の表情が一変した。彼は弾かれたように立ち上がり、大股で彼女へ歩み寄った。「健診に行くなら、どうして前もって俺に言わなかったんだ?」琴葉は理解できないというように彼を見返した。「どうしてあなたに言う必要があるの?」子供は自分のお腹にいるのであって、彼のお腹にいるわけではない。「俺も一緒に行かなきゃ駄目だろう」「結構よ、来なくていいわ」琴葉は手を振って拒絶した。「毎日ご多忙を極めていらっしゃる結城社長に、私ごときのちっぽけな用事で手を煩わせるなんて滅相もないわ」「これがちっぽけな用事なわけがあるか!それに、俺は父親なんだから、当然……」碧斗が言いかけたところで、琴葉のスマートフォンが鳴った。「あ、帆夏?もう着いた?」琴葉は彼を無視して背を向け、玄関へ靴を履き替えに向かった。碧斗はその後を追いながら、スマートフォンを取り出して潤也にメッセージを送った。帆夏が言った。「私たち、今、家の前に着いたところよ」「『私たち』?」帆夏は答えた。「そうよ、私と琉馬よ」「ちょっと、あなたが付き添ってくれるだけでいいのに、どうして琉馬まで呼んだの?彼、ここ数日忙しかったんじゃないの?」帆夏は言った。「うちの可愛い赤ちゃんの初めての健診なんだから、親代わりになる私たちが付き添うのは当然でしょ」「まあいいけど。予行練習だと思ってついてこさせ
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