テーブルに並べる。 形の悪いおにぎり。 焦げた目玉焼き。 しじみ汁。 朝比奈は、じっと見てから笑った。 「氷室所長、料理します?」 「最低限だ」 「好物は?」 少し考えてから、答える。 「……焼肉だ」 なぜか、朝比奈が笑った。 食事は静かに終わった。 車で送る。 助手席で、朝比奈は窓の外を見ていた。 「昨日……迷惑かけましたよね」 「記憶はあるのか」 「途中から曖昧です」 それでいい。 むしろ、その方がいい。 信号待ちの赤。 ハンドルを握る手に、無意識に力が入る。 似ている。 危うさが。 距離感が。 だからこそ、線を引く。 自宅の前で車を停める。 「今日は休め。土曜だろう」 「……はい」 ドアを開けて降りる前、朝比奈が小さく頭を下げた。 「ありがとうございました」 それに対して、俺はただ頷くだけにした。 それ以上は、何も言わない。 エンジンを切ったあと、しばらく動かなかった。 監視。 救出。 保護。 そして、非介入。 矛盾しているのは分かっている。 だが── 二度と、同じ失敗はしない。
Última atualização : 2026-10-14 Ler mais