女子会がざわつく。赤ちゃんはすやすや眠ってるのに、大人だけが祭り。「ねえ、りお、誰?誰がつけたの?」「しかもその位置、わざとじゃない?」「“見せる場所”じゃん」「やっば、りお、ついに幸せ掴んだ?」赤ちゃんを落とさないように慎重に抱いたまま、静かに言った。「……ストール、ずれただけ」「そんなずれ方ある?」「ある。あるってば」すると、まどかが嬉しそうに目を細める。「りお、ねえ。ほんとのこと言って」「なに」「その人、ちゃんと“いい人”?」りおは一拍、黙った。いつものノリなら笑って誤魔化せる。でも、今は──「……うん」それだけ言ったら、全員が一斉に「えー!!!」と声を上げた。「うわ、りおが認めた!」「やば、ガチじゃん!」「これは事件!」まどかが、赤ちゃんの頭を撫でながら、ぽつりと呟く。「……よかった」「え?」「りおが幸せそうで、よかった」その言葉が、胸の奥に落ちる。赤ちゃんの頬に指先を触れて、そっと笑った。……婚約したって話も、してしまおうか。今日は赤ちゃんがいるから、指輪は外してきたけれど。「あの、ね」全員の視線が集中する。うわ、プレッシャー。「私ね、結婚するの」……沈黙。数秒の間。「えええええ‼︎」「りおが?結婚⁈」「きゃあ!やだ!おめでとう!」大人、祭り。赤ちゃんはすやすや眠ってるのに、その場の空気だけが一気に騒がしくなる。玄関を開けた瞬間、部屋の奥から気配がした。「おかえり」低い声。リビングに、瑛がいる。ソファに座って、資料を見ている。なのに、顔を上げるタイミングが完璧すぎて腹が立つ。「……なんでいるの」「ここはお前の家だろ」「そうだけど」「帰ってくるのが分かってるのに、いない理由がない」理屈が全部“正しい顔”をしてる。ずるい。ストールを外す。「ねえ、女子会でバレた」「何が」「キスマ」「……そうか」一瞬、瑛の目が細くなる。“反省”じゃない。“確認”の目。「……謝る?」「謝らない」「え?」「消えると思ったのか」「……いや、消えると思うじゃん普通」「俺は、消したくない」静かに言い切って、瑛は立ち上がった。距離が詰まる。逃げ道がなくなる。でも、怖くない。小声で言ってやる。「……まどかに、“いい人?”って聞かれた」「なんて言った」
Última atualização : 2026-09-29 Ler mais