自席に戻ると、今度は私が会議室に呼ばれた。瑛は、まだ戻っていない。なら、さっきの呼び出しは終わっていないのだ。ということは、この呼び出しの目的は、瑛と私に関わることだ。つまり、昨日の一件について、私たちは会社から何か確認される。本社ビルの一階にある営業所兼店舗。私たちの職場は、そこにある。けれど、呼ばれた会議室は店舗奥ではなく、上階の本社フロアだった。会議室のドアをノックする。返事を待ってから、「失礼します」と中へ入ると、神崎管理本部長を中心に、瑛と森田先生、八神先生が着席していた。神崎管理本部長が出てきた、ということは。この件は、単なる私事ではなく、危機管理・人事総務案件として扱われている。「朝比奈主任。氷室所長から、昨日の件について説明は受けていますか」神崎管理本部長は、穏やかに、けれど逃さない目で私に尋ねた。瑛が、わずかに目を伏せる。ああ。瑛、今朝よりさらに消耗している。「氷室所長は、昨日の件でかなりお疲れのようでした。直接、氷室所長からは聞いておりません。ただ、先ほど江崎副所長から、鷹野香世さんの件について教えていただきました」「どのように説明されましたか」「学生の頃からのお付き合いで、かつて婚約されていたと伺いました」神崎管理本部長は、瑛に視線を移した。「氷室所長。合っていますか」憔悴しきっていても、瑛は姿勢を崩さなかった。「はい。間違いありません。朝比奈主任には、私から説明するべきでした」「おふたりは現在婚約されている、という認識でよろしいですね」一拍、会議室の空気が止まった。瑛は、私を見なかった。けれど、逃げもしなかった。「はい。まだ公表していませんが、朝比奈主任と婚約しています」「朝比奈主任。鷹野香世さんと直接会ったことはありますか」「ありません」「昨日の騒ぎのときに、あなたは顔を出さなかった。ということでよろしいですか?」「はい。様子を見に行こうとしたのですが、うちの課の速水くんに止められました」瑛が、深いため息をついた。香世さんに私の顔を見られることを、瑛はきっと恐れていた。「発言してもよろしいですか?」「はい、八神先生」「森田法律事務所の八神です。朝比奈さんは鷹野さんに顔を見られていないとのこと。だからこそ今、情報を共有しておく必要があります」「情報というと?八神くん
Última actualización : 2026-10-09 Leer más