ジュリアは、もう動かなかった。目の前に置かれた写真から、視線を外すことができない。一度、見た。そして、もう一度。何度も見ていれば、いつか写真の中身が変わるのではないかと思った。けれど、何も変わらなかった。ロドリゲス。ダイアナ。そして、この指輪。自分の指輪。四年間もの長い間、身につけていた指輪だった。一人きりの夜、何度もそれを見つめた。ロドリゲスの態度に傷つきながらも、それでも自分は彼の妻になったのだと、自分自身に言い聞かせるために。唇が震えた。「……そんなはず、ない……」向かいに座る女性は、何も答えなかった。やがてジュリアは顔を上げた。「この写真は、いつ撮られたんですか?」「あなたたちの結婚式の三日前です」ジュリアの胸が締めつけられた。三日前。その頃のことは、今でも痛いほど鮮明に覚えている。ロドリゲスは仕事が忙しいと言っていた。帰宅するのも遅く、彼女と過ごす時間もほとんどなく、話しかけてもろくに返事をしてくれなかった。それでも、ジュリアは何も疑わなかった。結婚式の準備で忙しいだけだと思っていた。あの頃の彼女は幸せでいっぱいだった。だから、彼に何かを問いただそうなどとは、一度も考えなかった。ジュリアは写真へと視線を落とした。「どうして……今になって、こんなものを私に見せるんですか?」女性は別の封筒を取り出し、静かにテーブルの上へ滑らせた。「まだ、すべてを見ていないからです」ジュリアは封筒を見つめた。ここから立ち去りたい自分もいた。けれど、真実を知りたいという気持ちもあった。しばらく迷った末、彼女は封筒を開けた。中には、古い書類のコピーが入っていた。最初の数行に目を通した瞬間、ジュリアの顔から血の気が引いた。結婚契約書。そこには、確かに二人の署名があった。四年前、自分が書いた署名と同じもの。けれど、何かがおかしい。ジュリアは書類をさらに注意深く読み直し、ある条項のところで手を止めた。こんな条項、見たことがない。「……このコピーは偽物です」彼女が小さく呟くと、女性はゆっくりと首を横に振った。「いいえ」ジュリアが顔を上げる。「これは原本です」指先が一気に冷たくなった。「だったら、どうして私が持っている契約書には、この条項がなかったんですか?」女性は数秒黙ってから答えた。
Last Updated : 2026-09-07 Read more