聡介は慌てて言葉を継ぎ、深い後悔を滲ませた。「朔間さんが取締役会を追われて、九条家からの援助も止まった。茉莉は貧しい暮らしに耐えられず、家の中で毎日物に当たってる。それどころか……母さんが贈った宝石のブレスレットまで、勝手に質に入れたんだ!澪、俺たちは本当に間違ってた。血のつながった家族じゃないか。神谷家が潰れるのを、黙って見ていられるのか?」家族。今になって、その言葉を持ち出すのか。「聡介。結婚式の控室で、茉莉を受け入れろと言ったときは、私たちが家族だと思わなかったの?」彼の甘い期待を容赦なく打ち砕いた。「神谷家が破綻するのは、あなたに経営能力がなかったから。闇金に手を出したのも、自分の欲を抑えられなかったからよ。自分で選んだ道なんだから、結果も自分で引き受けて。もう電話しないで。次にかけてきたら、取り立て屋にあなたの今の居場所を教える」電話を切り、その番号も着信拒否にした。夕方になると、細かな雨が降り始めた。地下駐車場から車を出した直後、暗がりから人影が飛び出し、車の前に膝をついた。慌ててブレーキを踏むと、濡れた路面でタイヤが鋭い音を立てた。ヘッドライトが、その人物を照らし出した。朔間だった。全身ずぶ濡れで、乱れた髪が額に張りついていた。以前なら隙なく着こなしていたスーツも、今は皺だらけで泥に汚れていた。手には書類封筒を握りしめ、雨の中で膝をついたまま、絶望に満ちた目をこちらに向けていた。クラクションを鳴らし、どくよう促した。それでも朔間は膝をついたまま、にじり寄るように運転席の窓まで来て、激しくガラスを叩いた。「澪!頼む、窓を開けてくれ。少しだけでいい!」冷たい目を向けたまま、窓をわずかに下げた。「死にたいなら、私の車の前はやめて」朔間は隙間から書類封筒を押し込み、聞き取るのも難しいほど掠れた声で言った。「澪、これは俺に残った九条グループの株式5%分だ。全部お前に譲る。金はいらない」目を赤くし、青ざめた頬を雨水に濡らしながら続けた。「茉莉とは離婚した。胎児の心拍が止まっていて……もう処置も終わった。俺にはもう何もない。毎晩、昔のお前と俺の夢を見る。本当に後悔してる……頼む。もう一度だけ、やり直す機会をくれないか?」雨に濡れた封筒を見つめると、たまらなく皮肉に思え
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