負傷した足を引きずりながらキャンパスに戻った日、夜瑠は盛大なプロポーズの現場に出くわした。校門から学生寮へと続く道には白薔薇が敷き詰められ、中央に敷かれたエメラルドブルーのカーペットは、湖面の波光を散りばめたかのように碧く眩い光を放っている。白鳥雪乃(しらとり ゆきの)は純白のワンピースに身を包み、カーペットの終点で優雅な白鳥のように佇んでいた。そして片膝をついている男は、海外へ出張に行くと言っていたはずの晏臣だった。マスク姿の夜瑠は人混みに紛れ、二人が口づけを交わすのを見つめていた。まるで懐に氷の塊を抱え込んだように、骨の髄まで凍りつくほど冷たかった。昨夜も彼女と肌を重ね合い、「お前の胸の中で死んでしまいたい」と甘く囁いていた人が、今は真剣な面持ちで別の女性が頷くのを祈り求めている。ここで初めて彼女は悟った。晏臣は最初から、自分を日の当たる場所に出すつもりなどなかったのだと。二人の逢瀬はいつも深夜で、その関係が公にされたことは一度もなかった。3年前、彼女は一度彼の元を去ったことがある。桐生家や二人の関係を知る周囲の人間は皆、大学にも行っていない天涯孤独の女など、海市の桐生家の御曹司には不釣り合いだと言い放った。それでも晏臣はあらゆる人脈を駆使し、7日間不眠不休で探し回り、ついに彼女を連れ戻した。あの時の彼の姿を、彼女は今でも覚えている。死に絶えたような静寂の中に苦痛を滲ませ、震える声でこう言った。「夜瑠、俺を捨てて、どこへ逃げるつもりだったんだ?」彼は部下に命じて自分自身を99回も鞭で打たせ、彼女を見つめる瞳に光を宿して言った。「夜瑠、お前を不安にさせた俺が悪い。罰を受けるべきだ」夜瑠は血まみれになった彼の背中を見て、胸を痛めてボロボロと涙をこぼした。晏臣が彼女にW国の永住権とプライベートジェットの搭乗証を渡したのは、まさにその時だった。「夜瑠、俺はW国への入国を生涯禁じられている。もし俺がお前を裏切ったら、永遠にお前に会えない罰を受けてやる」夜瑠がそれを受け取ると、彼は骨の髄まで溶け合わせるかのように彼女を強く抱き寄せた。「夜瑠、一生これらを使う日は来させない」だが今、裏切りは残酷なほど明白に目の前に突きつけられている。ずっと馬鹿を見ていたのは自分だったのだ。夜瑠はふらふらとした足取
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