翌朝。 グレイヴェル中央水路区。 まだ日も高くなっていない時間だった。 にもかかわらず。「なぁんでこんな事になってんだよ……」 タマが呆然としていた。 目の前。 巨大鍋。 二つ。 さらに。 積み上がる食材。 燻製肉。 干し魚。 大量の根菜。 麦袋。 樽スープ。 香草束。 野菜箱。 完全に炊き出し会場だった。 フィルニアも固まっている。「いやデカすぎんだろ」 その横で。 トシオが黙々と即席かまどを組んでいた。 石材。 鉄板。 木材。 全部その辺で調達済み。 兵士達まで手伝わされている。「そこ押さえろ」「は、はい!」「煙抜き塞ぐな」「す、すみません!」 既に現場監督だった。 シェリスが静かに呟く。「馴染みすぎでは?」『今さらよ』 ミーコは諦めた顔だった。 その時。 ミツコが“買い物籠”から次々食材を出していく。 終わらない。 まだ出る。 まだ出る。 兵士の一人が真顔になる。「……その籠どうなってるんです?」「便利なんだよぉ」 ミツコはニコニコしていた。 絶対説明する気が無い。 ユキは静かに野菜を洗っている。 その手際が異様に速い。 フィルニアが覗き込んだ。「慣れてんな」「……ばーちゃん仕込み」 ミツコが嬉しそうに笑う。「ユキちゃん丁寧だからねぇ」 タマは肉を切っていた。 だが。 量が多すぎる。「終わらねぇ!!」 フィルニアも途中参戦する。「貸せ!!」「切り方雑!!」「食えればいいだろ!!」『ダメよ!!』 ミーコまで巻き込まれた。 完全に大騒ぎである。 その頃。 水路区住民達は遠巻きに見ていた。「あれ何やってんだ?」「炊き出しらしいぞ」「マジか?」「今どき?」 疑いの目もある。 当然だった。 今のレイシスで、見返り無しの施しは珍しい。 その時。 昨日の兵士が現れる。「あ……」 かなり驚いていた。 本当にやっている。 しかも規模がデカい。 トシオは薪を割りながら聞いた。「人集まりそうか」「え?」「腹減ってる奴いるんだろ」 兵士は慌てて頷く。「そりゃいますけど……」「呼べ」 即答だった。 兵士が戸惑う。「いやでも、そんな大量に――」 その瞬間。 ミツコがまた籠から麦袋を出した。 まだある。
Last Updated : 2026-09-22 Read more