All Chapters of じじばばにゃんこと異世界奇譚: Chapter 161 - Chapter 170

182 Chapters

北街道の出会い…

 王都を出発して三日。 一行は北街道を順調に進んでいた。 空は青く晴れ渡り、風も心地良い。 旅をするには申し分ない天気だった。 御者席ではトシオが手綱を握っている。 隣にはタマ。 馬車の中ではミツコ達がのんびりしていた。「平和だなぁ」 タマが空を見上げながら呟く。「そうだな」 トシオも頷いた。 王都へ来てから色々あった。 記憶の回復。 離宮での生活。 両親の痕跡。 気付けば慌ただしい日々が続いていた。 だからこそ。 こうして街道を進む時間が妙に心地良い。 その時だった。 後ろからフィルニアの声が聞こえる。「退屈だ、まだ着かないのか?」「知らねぇよ」 タマが即座に返した。「旅ってのは移動時間も含めて旅なんだ」「だが退屈だ」「我慢しろ」「たまに体を動かさないとな!」「だから知らねぇって」 馬車の中から笑い声が聞こえた。 ミツコも苦笑している。「元気だねぇ」「ほんとだよねぇ」 ユキも呆れる。 そんな穏やかな時間。 突然だった。「助けてくれぇぇぇ!!」 遠くから悲鳴が聞こえた。 全員の表情が変わる。 トシオが手綱を引く。 馬車が止まった。「今のは」「あっちだ!」 タマが立ち上がる。 街道の少し先。 荷馬車が見えた。 数人の村人達が慌てている。 その周囲を暴れ回っている巨大な影。「魔獣か」 トシオが目を細める。 巨大な角猪だった。 通常種より一回り大きい。 興奮状態なのか荷馬車へ何度も突進している。 ドガァン!! 荷馬車が大きく揺れた。「来た!」 フィルニアが勢いよく飛び降りる。「お前嬉しそうだな!?」 タマも続いた。「久しぶりだからな!」「理由になってねぇ!」 二人は一気に駆け出した。 ミーコ達は村人達の方へ向かう。『こっち!』「こちらへ!」 ユキが村人達を安全な場所へ誘導する。 ミツコも怪我人を確認していた。「大丈夫?」「は、はい!」「怪我はないです!」 角猪がフィルニアへ向かって突進する。 ドドドドドドッ!! 地面を揺らしながら一直線。 だが。 フィルニアは笑っていた。「おらぁぁぁっ!!」 ズガァァァァンッ!!! 拳が真正面から炸裂する。 角猪の巨体が宙を舞った。「えぇっ!?」「飛んだぞ!?」 村人達が悲鳴を上
last updateLast Updated : 2026-09-22
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ノルンの朝…

 翌朝。 ノルン村は朝早くから賑やかだった。 鳥のさえずり。 家畜の鳴き声。 薪を割る音。 どこか懐かしい空気が村全体に流れている。 ミーコが目を覚ました時には、すでに外は明るくなっていた。『ん……』 窓から差し込む朝日が心地良い。 王都とは違う。 静かで穏やかな朝だった。 隣ではユキも起きていた。「おはよう」『おはよう』 二人は顔を見合わせて笑う。 昨夜は久しぶりにぐっすり眠れた気がした。 階下へ降りると、すでに良い匂いが漂っていた。「おはようございます」 宿の女将が笑顔で迎えてくれる。「よく眠れたかい?」『うん』「はい」 朝食は焼きたてのパンとスープだった。 素朴だが温かい。 ミーコは思わず頬を緩めた。 しばらくすると全員が集まってくる。 タマ。 フィルニア。 トシオ。 ミツコ。「おはよう」 トシオが席につく。「おはようございます」 ユキが答えた。 その直後。 勢いよく椅子へ座る人物がいた。 フィルニアである。「腹減った!」「朝から元気だな」 タマが呆れる。「昨日あれだけ食っただろ」「それは昨日だ」「意味が分からん」 いつものやり取りだった。 女将も笑っている。「いっぱい食べなさいな」「うむ!」 元気よく返事をするフィルニア。 いつもの調子だった。 朝食を終える頃には、宿の外もさらに賑やかになっていた。 広場では村人達が働いている。 子供達も走り回っている。 そんな中。 フィルニアを見つけた子供達が叫んだ。「あっ!」「角のお姉ちゃんだ!」「いた!」 フィルニアが振り返る。「む?」 嫌な予感がした。 次の瞬間。 子供達が突撃してきた。「遊ぼう!」「昨日の続き!」「勝負だ!」 フィルニアは満面の笑みになる。「受けて立つ!」「お前も乗るな」 タマが呆れる。 だが。 トシオは笑っていた。「まあ少しくらいならいいだろ」「だな!」 フィルニアが即答した。「お前が言うな」 広場にはすぐに笑い声が広がる。 気付けば子供達との遊びが始まっていた。 かけっこ。 木の実集め。 荷物運び競争。 フィルニアはなぜか全部本気だった。「負けん!」「大人げない!」 タマの突っ込みが響く。 周囲は大笑いだった。 一方。 ミツ
last updateLast Updated : 2026-09-22
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白銀の森の入り口

 ノルン村を後にした馬車は、緩やかな街道を進んでいた。 空は高く澄み渡っている。 吹き抜ける風は心地良く、草原の緑が波のように揺れていた。 御者台ではトシオが手綱を握っている。 隣にはタマ。「良い天気だな」「ああ」 トシオが頷いた。「しばらく崩れそうにねぇな」 旅をするにはありがたい空模様だった。 馬車の中ではミツコがお茶を淹れている。「みんな飲む?」「飲む!」 真っ先に返事をしたのはフィルニアだった。 ミツコがお茶を配る。 優しい香りが馬車の中へ広がった。「ほっとするねぇ」「うむ」 フィルニアも満足そうに頷く。 向かい側ではミーコとユキが窓の外を見ていた。 遠く。 地平線の向こうに巨大な森が見えている。 白銀の森。 昨日よりも確実に近付いていた。『大きいね』「うん」 ユキも見入る。 遠くからでも異質だった。 森全体が淡い光をまとっているように見える。 普通の森とは明らかに違う。 その時。 ミツコがミーコの手元を見た。「まだ持ってるのね」『うん』 ミーコは木札を見せる。 ノルン村の村長から渡された古い木札だった。 長い年月を経ているはずなのに、不思議なくらい状態が良い。「気になるのか?」 トシオが尋ねる。『なんとなく』 ミーコは木札を見つめた。『初めて見るはずなのに懐かしい感じがする』 ユキも頷く。「私も少し分かる気がする」 フィルニアが木札を受け取った。「ふむ」 裏返す。 横にする。 もう一度裏返す。「分からん」「だろうな…」 タマが笑う。「だがただの木じゃない」「それは俺も思う」 トシオが言った。「村で代々受け継がれてきたんだろ」「何か意味はあるはずだ」 ミーコは再び木札を握る。 不思議な感覚は消えなかった。 まるで何かが呼んでいるような。 そんな気がした。 ――― 昼過ぎ。 一行は小川のほとりで休憩を取ることにした。 澄んだ水が流れている。 近くには大きな木もあり、日差しを遮ってくれていた。「ここで昼飯にするか」 トシオが馬車を止める。「賛成!」 フィルニアが勢いよく立ち上がった。「お前は食事の時だけ反応速度がおかしいな」「重要だからな」 真顔だった。 タマが吹き出す。「否定しないんだな」 荷物を下ろし、昼食の
last updateLast Updated : 2026-09-22
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銀葉の道…

 翌朝。 白銀の森の入口は、朝霧に包まれていた。 夜露をまとった草が朝日に照らされ、小さな宝石のように輝いている。 ミーコは目を覚ますと、最初に森を見た。『……』 静かだった。 不思議なほど静かだった。 森は目の前にある。 それなのに威圧感はない。 むしろ穏やかで、優しく迎え入れてくれるような空気さえ感じる。「起きてたの?」 隣からユキの声がした。『うん』「私も」 二人は並んで森を見つめた。 白銀の葉が風に揺れる。 さらさらという音が耳に心地良い。 その時。「おはよう」 ミツコが朝食の準備をしながら声を掛けた。「よく眠れた?」『うん』「ぐっすりねむれたよ」 ユキが答える。 昨夜は森の近くだというのに不思議と安心感があった。 警戒していたはずなのに、誰も嫌な夢を見ていない。  やがて全員が起き揃う。 トシオ。 タマ。 フィルニア。 いつもの顔ぶれだった。「腹減った」 起きて最初の言葉がそれだった。「もう?」 タマが苦笑する。「重要なことだからな」「そうなんだろうけどさ…」 フィルニアは全く気にしていなかった。 朝食を終える頃には霧も晴れ始めていた。 森の入口がはっきり見える。 白銀の幹。 淡く輝く葉。 木々の間には自然に出来た一本道が続いている。「行くか」 トシオが立ち上がった。 皆も頷く。 ついに白銀の森へ入る時が来た。 ――― 一歩。 また一歩。 森の中へ進む。 するとすぐに変化へ気付いた。『あれ?』 ミーコが辺りを見回す。「どうしたの?」『明るい』 確かにそうだった。 森の中なのに暗くない。 枝葉が空を覆っているはずなのに光が差し込んでいる。 柔らかな銀色の光だった。「葉っぱ自体が光ってる?」 ユキが見上げる。 白銀の葉は微かに発光していた。 強い光ではない。 だが森全体を照らすには十分だった。「面白いな」 トシオも感心する。「こんな森は初めて見た」「俺もだ」 タマも周囲を観察していた。 道は歩きやすい。 地面は柔らかい。 不思議なことに倒木や障害物も少なかった。 まるで導かれているかのように しばらく進んだ頃。 フィルニアが立ち止まった。「聞こえるか?」「ん?」 タマが耳を澄ませる。 微かだった。 
last updateLast Updated : 2026-09-22
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森の中の神殿…

 白銀の森の奥深く。 一行はついに目的の場所へ辿り着いていた。 森が大きく開けた先。 そこには巨大な神殿が静かに佇んでいる。 白銀色の石で造られた古い建物。 長い年月を経ているはずなのに崩れた様子はない。 まるで時だけが止まっているようだった。『これが……』 ミーコは思わず呟く。 胸の奥が不思議とざわつく。 その時。 手にしていた木札が淡く光った。『あっ』 同時に神殿入口へ刻まれた紋様も輝き始める。 ゴゴゴゴゴ…… 重々しい音が響く。 閉ざされていた巨大な扉がゆっくりと開いていった。「開いたな」 トシオが目を細める。「行ってみよう」 一行は神殿の中へ足を踏み入れた。 内部は静寂に包まれていた。 高い天井。 白銀の柱。 壁を埋める古い彫刻。 どこにも埃は積もっていない。 まるで今も誰かが手入れを続けているかのようだった。 その時。 ふわり。 小さな光が現れる。 一つ。 二つ。 三つ。 次々と増えていく。「なんだ?」 フィルニアが眉をひそめた。 光はゆっくりと姿を変えていく。 羽を持つ少女。 水色の髪をした少年。 葉を纏う女性。 様々な姿をした存在達だった。『ようこそ』 柔らかな声が響く。『白銀の神殿へ』「精霊か」 タマが呟いた。 少女の精霊が微笑む。『久しぶりのお客様です』 精霊達の視線がミーコ達へ向く。 そして。 一斉に目を見開いた。『まあ……』『本当に……』 驚きの声が広がる。 やがて奥から老人の姿をした精霊が現れた。 白い髭を蓄えた穏やかな精霊だった。『ようこそお越しくださいました』 老人の精霊は静かに頭を下げる。 「この神殿の管理をしております   ノアードともうします」『アクアリア様』 ミーコが目を見開く。『そしてフェンリスの子らよ』 ユキとタマも驚いていた。『私達を知ってるの?』『存じております』 ノアードは頷く。『我らは長くこの神殿を守っておりますので』 ミーコは一歩前へ出た。『お父様達のことも知ってる?』『はい』 その一言で空気が変わった。『最後にここを訪れた王族のお二人でした』 ミーコ達は息を呑む。『お父様達は何をしていたの?』『資料を探しておられました』 ノアードは答えた。『数日間この神殿に滞在
last updateLast Updated : 2026-09-22
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親と子再会へ…

 白銀の神殿を後にした一行は、馬車を北西へ走らせていた。 目指す先は旧監視砦跡地。 反王族派の男が吐いた場所だった。 御者台で手綱を握るトシオは無言のまま前を見据えている。 隣にはタマ。 周囲を警戒しながら進んでいた。 荷台ではミーコが落ち着かない様子で窓の外を見つめている。 ユキも静かだった。 神殿で聞いた話が頭から離れない。 レイアード。 アリアル。 二人は最後まで娘を守るために動いていた。 そして今。 その二人に繋がる手掛かりが見つかっている。 馬車は休むことなく進み続けた。 昼を過ぎた頃。 丘陵地帯へ入る。 荒れた岩場。 草木に埋もれた古い石造物。 人の手が入らなくなって久しい場所だった。 やがて。 目的地が見えてくる。 崩れた外壁。 半壊した見張り塔。 風雨に晒された石造りの建物。 旧監視砦跡地だった。 トシオが馬車を止める。「ここだな」 全員が降りた。 周囲は静かだった。 だが。「人がいる」 タマが呟く。 確かな気配。 複数。 しかも少なくない。 ミーコの表情が引き締まった。 一行は砦へ近付く。 崩れた壁沿いに進み。 物陰を利用しながら内部を探る。 すると。 建物の奥から声が聞こえてきた。「まだ生きているとはな」「大した執念だ」 男達の笑い声。 ミーコの耳がぴくりと動いた。 タマが先に様子を確認する。 壁の隙間から中を覗き込み。 そして固まった。「……いた」 低い声だった。 ユキが息を呑む。「本当に?」 タマは頷く。「ああ」 一行も中を覗いた。 薄暗い広間。 その奥。 拘束された人々の姿があった。 最初に目へ入ったのは金色の髪を持つ男性。 痩せてはいる。 だがその瞳に宿る威厳は消えていない。 レイアードだった。 その隣にはアリアル。 そして。 白銀の髪を持つ女性。 ユキとタマによく似た面影。 穏やかな顔立ち。 ティルエットだった。『お父様……』 ミーコの声が震えた。 レイアードが顔を上げる。 そして目を見開いた。『アクアリア……?』 アリアルも息を呑む。『えっ!?」 ティルエットも視線を向ける。「はっ!?」『セレフィーナ……?』『グラディオ……?』 ユキの瞳が潤む。『お母様……』 タマも拳を
last updateLast Updated : 2026-09-22
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激突の砦…

「全員消してしまえっ!!」 ギルロードの低い声が広間へ響いた。 その瞬間だった。 武器を構えた男達が一斉に動き出す。 剣が抜かれる。 槍が向けられる。 殺意が押し寄せる。 だが。 誰よりも早く飛び出した影があった。 タマだった。 白銀の双剣が抜き放たれる。 怒りに満ちた咆哮。 床を蹴った。 バ ァ ン !! 石床が砕け散る。 一瞬で敵の目前へ迫った。 「なっ――」 反応する暇などない。 双剣が交差する。 ギ ャ ギ ィ ィ ィ ィ ン !! 男の剣が弾き飛ばされた。 さらに踏み込む。 銀の軌跡。 ザ シ ュ ッ!! 槍の柄が真っ二つになる。 『どけぇぇぇぇぇ!!』 タマは止まらない。 左右の剣が荒れ狂う。 ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ッ!! 怒涛の連撃。 火花が飛び散る。 男達が次々と吹き飛んだ。 一方。 フィルニアも駆け出していた。 「邪魔だぁぁぁぁ!!」 竜槍を振り抜く。 ブ ォ ン ッ!! 空気が唸る。 直後。 ド ガ ァ ァ ァ ァ ァ ン !! 男達がまとめて宙を舞った。 壁へ激突する。 ガ ラ ガ ラ ガ ラ ッ!! 石壁が崩れ落ちた。 「ぐああああっ!!」 「ば、化け物!」 「次だ!!」 フィルニアは止まらない。 竜槍を突き出す。 ド ゴ ォ ッ!! 腹へ直撃。 男が砲弾のように吹き飛んだ。 ミーコも両手を掲げる。 『水よ!!』 青い魔力が広がる。 無数の水刃が生まれた。 そして。 シュバババババッ!! 水刃が地面を走る。 「うわぁぁぁっ!」 「足が!」 男達が次々と転倒した。 ユキは後方から精霊術を発動する。 『風の精霊達』 柔らかな光。 追い風が仲間達を包む。 身体が軽くなる。 視界が冴える。 ミツコも命紡ぎを展開した。 温かな輝き。 仲間達を優しく支える。 そして。 トシオが歩き出した。 男が剣を振り上げる。 「死ねぇぇぇ!!」 剣が振り下ろされた。 しかし。 トシオは身体を少し傾けるだけだった。 剣先が空を切る。 「え?」 次の瞬
last updateLast Updated : 2026-09-22
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帰還の鐘…

 ギルロードとの戦いを終えた一行は、レイアード達を伴い王都レイシスへ戻ってきていた。 王都の城壁が見えた時から、様子はいつもと違っていた。 門前には大勢の人々が集まっている。 知らせが届いていたのだ。 前国王レイアード。 前王妃アリアル。 そして行方不明となっていた王族派の人々が救出されたことを。『すごい人……』 ミーコが目を丸くする。 レイアードは少し困ったように笑った。 そこへ、門兵達が駆け寄ってくる。 そして。 レイアードの姿を見た瞬間。 全員の動きが止まった。「へ……」「陛下……?!」 一人が呟く。 次の瞬間だった。「陛下っ!!!!!」 大声が響いた。 歓声が爆発する。「レイアード陛下!!」「王妃様も!!」「生きておられた!!」 王都が揺れた。 人々が泣いている。 笑っている。 手を振っている。 その光景を見てアリアルが目元を押さえた。『こんなにも……』『皆が待っていたのです』 ユキが優しく答える。 門が大きく開かれた。 一行は王都へ入る。 通りの両脇には人が溢れていた。 商人。 職人。 子供達。 老人達。 誰もが歓声を送っている。「お帰りなさい!」「陛下ー!!」「王妃様ー!!」 ミーコは少し驚いていた。 レイアードが王として慕われていたことは知っていた。 だが。 ここまでとは思っていなかった。 隣でアリアルが娘の肩を抱く。『これがあなたのお父様ですよ』 ミーコは嬉しそうに笑った。『うん』         ◇ やがて王城が見えてくる。 巨大な門。 白い石壁。 見慣れた景色。 だが。 今日は違った。 正門前には使用人達が整列していた。 執事達。 侍女達。 騎士達。 皆が緊張した顔で待っている。 一行が近付く。 そして。 レイアードの姿が見えた瞬間だった。「陛下……」 年配の執事が震えた。「本当に……」 声が続かない。 レイアードが歩み寄る。『心配を掛けたな』 その一言。 執事の目から涙が溢れた。「お帰りなさいませ……」 深く頭を下げる。 周囲も続いた。「お帰りなさいませ!!」 大勢の声が重なる。 アリアルも目を潤ませていた。『ただいま』 静かな言葉だった。 だが。 その場にいた誰もが涙を流してい
last updateLast Updated : 2026-09-22
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家族みんなで…

 ギルロードとの戦いから数日。 王都レイシスには久しぶりに穏やかな空気が流れていた。 反王族派の摘発は続いている。 だが王都を覆っていた不安は確実に薄れつつあった。 レイアードとアリアルの帰還。 ティルエットの救出。 反王族派首領ギルロードの討伐。 それらは王国にとって大きな転機となっていた。 そして今夜。 王城では小さな晩餐会が開かれる予定だった。 大規模な祝宴ではない。 本当に近しい者達だけを招いた席である。         ◇ 夕暮れ。 ミーコは落ち着かない様子で部屋を歩き回っていた。『どうしよう……』 窓際へ行く。 戻る。 また歩く。『どうしよう……』 そんな娘を見ながらアリアルが笑う。『アクアリア』『うん?』『落ち着きませんか?』 ミーコが足を止める。『だって緊張するんだもん』 耳がぺたりと伏せられた。『今日はみんな集まるんだよ?』『ええ』『お父様とお母様がいて』『ええ』『じーちゃんとばーちゃんもいて』『ええ』『フィルニアのご両親も来るんだよ!?』 アリアルは優しく微笑んだ。『賑やかな夜になりそうですね』         ◇ 数日前。 レイアードは正式な招待状をヴォルグラード帝国へ送っていた。 フィルニアへの感謝。 そして王国と帝国の友好の証。 その結果。 今夜の席には竜王夫妻も出席することになっている。         ◇ 一方その頃。 王城の別棟。「やっぱり落ち着かんな」 トシオが難しい顔をしていた。 豪華な礼服。 磨かれた靴。 刺繍入りの上着。 どう考えても漁港には似合わない。 ミツコが笑う。「もう諦めてください」「無理だ」「着ていますよ?」「着せられた」「似合っています」「そうか?」「ええ」 トシオは首を傾げた。 どうにも慣れない。 やはり作業着の方が落ち着く。 そんなことを考えているうちに晩餐会の開始を告げる鐘が鳴った。         ◇ 晩餐会場。 大きな円卓が中央に置かれていた。 王族だけの席ではない。 家族と仲間達が同じ卓を囲むための席だった。 最初に現れたのはレイアードとアリアル。 その隣にミーコ。 続いてトシオとミツコ。 しばらくして。 会場の扉が再び開く。 空気が少し変わった。 長身
last updateLast Updated : 2026-09-22
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開いた門…

 王都レイシスへ平穏が戻ってから数日。 王城には久しぶりに穏やかな空気が流れていた。 中庭では兵士達の訓練が行われ。 庭師達は花壇の手入れをしている。 城下町からも活気ある声が聞こえていた。 反王族派との戦い。 ギルロードとの決戦。 王族救出。 様々な出来事を乗り越えた人々は、ようやく前を向き始めている。 そんな朝。 王城の食堂にはいつものように賑やかな声が響いていた。「その肉は俺様のだ!」『だから取らないって』 タマが呆れる。『フィルちゃんは相変わらず元気ねぇ』 ユキがクスクス笑った。「朝だから元気なんだ!」『意味が分からない』 ミーコが肩を落とす。 フィルニアは気にせず肉へかぶりついた。「うまい!」 その様子を見ながら。 エレミアが優雅にお茶を飲む。『朝から見事な食べっぷりですね』「褒めても何も出ないぞエレミアちゃん!」 エレミアはニコリと微笑む。『皮肉ですよ』 フィルニアが固まる。 周囲から笑い声が漏れた。 反対側では。 ティルエットがユキの髪を整えていた。『お母様』『なんですか?』『少しだけ不思議です』『何がですか?』『こうしてお母様とお話していることです』 ティルエットは優しく微笑んだ。『私もですよ』 娘の髪を撫でる。『もう二度と会えないかもしれないと思っていましたから』 ユキも小さく頷いた。 一方。 タマは黙々と食事を続けていた。 だが。 視線は時折ティルエットとユキへ向いている。 それに気付いたフィルニアがニヤリと笑った。「ん?」 タマが顔を上げる。「母上とユキが気になるようだな?」『は?』 タマが眉をひそめる。『そんなんじゃねーよ』「本当か?」『本当だ』「ふーん」 そして。 ぽん。 タマの頭へ手を乗せる。 タマが固まった。『……何してる?』「代わりに撫でてやった」『意味が分からん』「喜べ」『喜ばん!!』 みるみる顔が赤くなる。 ユキがクスクス笑った。『フィルちゃん』「何だ?」『タマで遊ばないの』『遊ばれてない!!』「遊んでない」 ティルエットも思わず微笑む。『仲が良いですね』『違う!!』「仲良しだな!」『違う!!』 食堂は笑いに包まれた。 そんな様子を見ながら。 少し離れた席ではトシオが焼き魚を
last updateLast Updated : 2026-09-22
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