ガルディア上空。裂けた空が、さらに広がっていた。黒雨。侵食霧。崩壊音。街全体が、悲鳴を上げている。巨大な“目”は、裂け目の奥からこちらを見下ろしていた。それだけで、空気が重い。息苦しい。ユキが、小さく震える。「動けない……」足が重い。身体が、押し潰されそうだった。黒衣男達ですら、膝をつき始めている。「あれは……」「マズい……!」⸻その時。裂け目の奥から、“腕”が完全に出て来た。巨大。黒い。空そのものを掴むみたいな腕。しかも。その周囲だけ、空間が崩れている。ミーコの顔色が変わる。「下がって!!」次の瞬間。黒腕が、ゆっくり振り下ろされた。ズ ォ ォ ォ ……遅い。だが。デカ過ぎる。避けようが無い。渓谷都市ガルディアへ、空そのものが落ちて来る。⸻フィルニアが、歯を剥く。「ふざけんなよ……!!」竜人魔力全開。赤熱魔力が、身体から吹き出す。タマも、短剣を握り直した。「止めるしかねぇ!!」黒衣男達が、結界術式を展開。ミーコも、巨大水流陣を起動する。ユキも、震える手で防壁を重ねた。全員、総力。だが。分かっていた。止まらない。規模が違う。⸻黒腕落下。直前。トシオが前へ出た。ミツコが、小さく目を見開く。「トシオ……」トシオは、空を見上げていた。裂けた空。黒い腕。侵食。全部を見た後。小さく息を吐く。そして。拳を握った。ギリ……筋肉が軋む。その瞬間。空気が変わった。⸻ゴォォォォ……周囲の空気が、渦を巻き始める。風。いや。潮の匂いだった。ガルディアは渓谷都市。本来、海の匂いなんかしない。なのに。潮風が吹いた。タマが、目を見開く。「……は?」フィルニアも、顔を強張らせる。空気が重い。だが。恐怖じゃない。圧。巨大な自然そのものみたいな圧力。黒雨が、一瞬止まった。⸻トシオが、ゆっくり踏み込む。その瞬間。ゴ ッ ッ ッ ッ ッ !!!!!地面が沈んだ。橋が軋む。周囲の瓦礫が、吹き飛ぶ。黒衣男達が、息を呑む。「なんだ……あの魔力……」違う。魔力じゃない。もっと原始的だった。嵐。海鳴り。荒波。災害そのもの。⸻黒腕が落ちる。街を潰す一撃。
Last Updated : 2026-09-22 Read more