All Chapters of じじばばにゃんこと異世界奇譚: Chapter 81 - Chapter 90

182 Chapters

海割る拳…

ガルディア上空。裂けた空が、さらに広がっていた。黒雨。侵食霧。崩壊音。街全体が、悲鳴を上げている。巨大な“目”は、裂け目の奥からこちらを見下ろしていた。それだけで、空気が重い。息苦しい。ユキが、小さく震える。「動けない……」足が重い。身体が、押し潰されそうだった。黒衣男達ですら、膝をつき始めている。「あれは……」「マズい……!」⸻その時。裂け目の奥から、“腕”が完全に出て来た。巨大。黒い。空そのものを掴むみたいな腕。しかも。その周囲だけ、空間が崩れている。ミーコの顔色が変わる。「下がって!!」次の瞬間。黒腕が、ゆっくり振り下ろされた。ズ ォ ォ ォ ……遅い。だが。デカ過ぎる。避けようが無い。渓谷都市ガルディアへ、空そのものが落ちて来る。⸻フィルニアが、歯を剥く。「ふざけんなよ……!!」竜人魔力全開。赤熱魔力が、身体から吹き出す。タマも、短剣を握り直した。「止めるしかねぇ!!」黒衣男達が、結界術式を展開。ミーコも、巨大水流陣を起動する。ユキも、震える手で防壁を重ねた。全員、総力。だが。分かっていた。止まらない。規模が違う。⸻黒腕落下。直前。トシオが前へ出た。ミツコが、小さく目を見開く。「トシオ……」トシオは、空を見上げていた。裂けた空。黒い腕。侵食。全部を見た後。小さく息を吐く。そして。拳を握った。ギリ……筋肉が軋む。その瞬間。空気が変わった。⸻ゴォォォォ……周囲の空気が、渦を巻き始める。風。いや。潮の匂いだった。ガルディアは渓谷都市。本来、海の匂いなんかしない。なのに。潮風が吹いた。タマが、目を見開く。「……は?」フィルニアも、顔を強張らせる。空気が重い。だが。恐怖じゃない。圧。巨大な自然そのものみたいな圧力。黒雨が、一瞬止まった。⸻トシオが、ゆっくり踏み込む。その瞬間。ゴ ッ ッ ッ ッ ッ !!!!!地面が沈んだ。橋が軋む。周囲の瓦礫が、吹き飛ぶ。黒衣男達が、息を呑む。「なんだ……あの魔力……」違う。魔力じゃない。もっと原始的だった。嵐。海鳴り。荒波。災害そのもの。⸻黒腕が落ちる。街を潰す一撃。
last updateLast Updated : 2026-09-22
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山へ続く鉄路…

山岳列車は、夜通し走り続けていた。ゴォォ……重低音が、車内床から響いている。窓外は、真っ暗だった。時折。巨大岩壁だけが、列車灯に照らされて流れていく。ユキは、窓際へ座っていた。ガルディアを出て、もう半日以上。景色は、変わっていた。雪原も無い。渓谷都市も無い。代わりに。岩。山。断崖。世界そのものが、硬くなったみたいだった。⸻車内では、フィルニアが突っ伏していた。「ケツ痛ぇ……」タマが、呆れた顔になる。「だから暴れるからだろ」「座席硬いんだよ!」「お前昨日橋持ち上げてたろ」「それとこれとは別!!」ユキが、少し笑う。昨日、空が割れていたとは思えないくらいだった。⸻トシオは、窓側で魚干物を炙っていた。普通に。車掌が、三度見している。「……車内ですよ?」トシオが、少し考える。「換気してる」「そういう問題じゃないんです」ミツコが、慌てて止めた。「ごめんなぁ」⸻昼前。列車が、巨大高架橋へ差し掛かった。その瞬間。フィルニアが、窓へ張り付く。「でっっっか!!!」全員、外を見る。絶景だった。山。山。さらに山。雲より高い岩峰が、延々と続いている。しかも。山肌へ、巨大建造物が見えた。橋。塔。掘削跡。ユキが、目を見開く。「山に街がある……」車掌が、少し誇らしげに言った。「グランディル山岳圏ですよ」「巨人族の領域です」⸻さらに進む。すると。とんでもない物が見えた。巨大石像。山そのものへ、掘られている。高さ数百メートル級。しかも。まだ先にもある。フィルニアが、固まる。「いや待て待て待て」「デカ過ぎるだろ!!」タマも、流石に引いていた。「何人用だアレ……」車掌が笑う。「昔の王像ですよ」「今の巨人族でも、あんな大きくありません」ミーコが、静かに聞く。「古代文明?」「そう言われています」⸻列車は、徐々に高度を上げていく。空気が冷たい。だが。雪国の寒さとは違う。乾いていた。岩と鉄の匂いがする。遠くでは。巨大煙突群から、白煙が噴き上がっていた。タマが、目を細める。「鍛冶都市か」「山全部工場みたいだな」その通りだった。グランディルは、鍛造国家。七種族最高峰の鉱石
last updateLast Updated : 2026-09-22
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鉄と岩の都…

グランディル中央駅。山そのものを削って造られた、超巨大岩窟駅だった。列車が停まった瞬間。重厚な蒸気音が、空間全体へ響く。ゴォォォ……頭上には、何本もの巨大鉄骨橋。さらに上層では、鉱石搬送用ゴンドラが走っている。火花。鉄音。蒸気。熱気。今までの都市とは、まるで違った。⸻フィルニアが、ホームへ降りた瞬間に叫ぶ。「暑っ!!」タマも、首元を引っ張る。「山なのに暑いのかよ」ドグランが、笑った。「炉が山ほどあるからな!」実際。空気が熱い。外は山岳地帯なのに、都市内部は鍛冶熱で暖かかった。しかも。匂いが独特だった。鉄。油。石炭。焼けた鉱石。ユキが、少し周囲を見る。「……工房の匂い」⸻ホームを進む途中。別種族の姿が増え始めた。小柄。だが、異様に筋肉質。長い髭。太い腕。大きな工具。フィルニアが、目を輝かせる。「おぉ!?」タマが、少し驚く。「ドワーフか」ドグランが、頷いた。「グランディルは共同国家だ」「巨人族だけじゃ、細かい鍛冶は無理だからな」ドワーフ達は、忙しそうに走り回っていた。しかも。全員声がデカい。「炉止めるなぁ!!」「搬入急げ!!」「誰だ酒樽空にしたの!!」最後だけちょっと違った。⸻その時。突然。横から小柄な影が飛び出した。「邪魔じゃボケぇ!!」ドゴッ!!フィルニアへ激突。フィルニア、吹き飛びかける。「ぬおっ!?」ぶつかった相手は、ドワーフ少女だった。赤茶髪。ゴーグル。煤だらけ。工具ベルト装備。しかも。背中に、巨大ハンマー背負っている。タマが、目を瞬かせた。「女子?」少女が、即座に睨む。「なんじゃその顔は!!」「ドワーフ女が珍しいか!!」「いや元気だなって」「当たり前じゃ!!」フィルニアが、ちょっと嬉しそうになる。「なんかお前、ノリ近いな!」「嬉しくねぇ!!」⸻少女の名前は、ベルガ。鍛冶工房所属。しかも。かなり腕が良いらしい。ドグランが、苦笑しながら紹介する。「こいつ、若手最優秀鍛冶師だ」ベルガが、鼻を鳴らす。「当然じゃ」「ワシは天才じゃからな!」フィルニアが、完全に気に入った。「お前面白ぇな!!」「そっちこそ声デカ過ぎるわ!!」タマが、
last updateLast Updated : 2026-09-22
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山に眠る鐘と巨人の王…

 夜明け前の山岳地帯は、空気そのものが鋭かった。 グランディル山岳王国――。 世界最高峰の連山に囲まれた巨人族の国家は、他種族が容易に踏み入れることを許さない閉ざされた領域として知られている。 切り立った断崖。 雲を突き抜ける岩峰。 谷底から吹き上がる白い霧。 そして、山そのものが生きているような重苦しい振動。 レヴァナスタシア大陸でも最古の文明の一つとされる巨人族は、長い歴史の中でほとんど外交を行わなかった。 そのため外界では、『巨人は滅びた』『いや、地下で暮らしている』『神々と契約した民だ』 など様々な噂が飛び交っている。 だが実際にこの地へ足を踏み入れた者は、極端に少ない。 そして――。 帰って来た者は、さらに少なかった。 吹雪混じりの山道を、数頭の大型獣が進んでいた。 荷を運ぶ山岳用獣竜。 その背に乗るのは、トシオ達一行である。「……さっむ……」 フィルニアが鼻を赤くしながら呟く。 白い吐息が風に散った。「竜人のくせに寒さ苦手なのかよ」 タマが笑う。「うるさい! 竜人だからって全員暑いの好きだと思うな!」「でもお前、火とか吐けそうじゃん」「吐かん!」「ちょっと見たい」「見せん!!」 ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人を見ながら、ミツコは小さく笑った。「仲良しねぇ」「仲良くない!」「仲良くねぇ!」 綺麗に声が重なる。 ユキがくすりと肩を震わせた。 その一方で、ミーコだけは黙って前方を見つめていた。 視線の先。 霧の向こう。 巨大な影が、山肌に浮かび上がっている。「……あれ……」 ミーコが低く呟く。 次の瞬間。 霧が裂けた。 現れたのは――。 山そのものを削って作られた超巨大建造物だった。 高さ数百メートルはある石壁。 その表面には古代文字が無数に刻まれている。 崖と一体化した門。 山腹を貫く巨大な柱。 まるで神話時代の遺跡。 いや。 人の尺度では測れない、“文明そのもの”だった。「……でっけぇ……」 タマが呆然と漏らす。 フィルニアも言葉を失っている。「これが……グランディル……」 ユキの瞳に緊張が宿る。 すると、先導していた山岳ガイドの老人が静かに口を開いた。「……気を付けなされ」 低い声。「ここから先は、“山に許された者”しか通れん」「許されない
last updateLast Updated : 2026-09-22
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星喰らいの炉心…

 山は、生きていた。 轟音。 崩落。 吹雪。 巨大な亀裂が空を走る度、グランディル山岳王国そのものが軋んでいる。 空気が重い。 肺へ入るだけで身体が鈍るような圧迫感。 侵食。 “閉じる者”の気配が、山脈全域へ広がっていた。 その中を、ミーコ達は巨人王の後を追って進んでいた。 巨大通路。 壁面に並ぶ古代の灯火。 数千年は経っているはずなのに、青白い炎が未だ消えていない。 通路幅だけで普通の街道並み。 天井は遥か上方。 まるで山の内部を丸ごと削り取った地下世界だった。「……すげぇ……」 タマが思わず見上げる。 壁には巨大な彫刻が並んでいた。 戦う巨人達。 空を覆う黒い何か。 そして――。 星。 大量の星が描かれている。 ミーコが眉を寄せた。「これ……」「古き時代の記録だ」 前を歩く巨人王が低く言う。「我らがまだ、“天”と戦っていた頃のな」 フィルニアが怪訝そうな顔をした。「天と戦うってなんだよ」「空の上から来た災厄だ」 王は振り返らない。「星を喰らい、文明を滅ぼし、世界を閉ざすもの」 ミーコ達の空気が変わる。 閉じる者。 その言葉に繋がる。「……じゃあ、“閉じる者”って」 ユキが呟く。 巨人王は静かに答えた。「奴らは単体ではない」 一同が足を止める。「え?」「“閉じる者”とは概念ではない」 王の声が重く響く。「遥か外宇宙より飛来した侵食群体。その中でも特に強大な核存在を、我らはそう呼んだ」 空気が凍った。 タマが顔を引き攣らせる。「……群体?」「一匹じゃねぇのかよ……」「一体だけで世界を滅ぼせる」 王が言う。「だが、奴らは増える」 沈黙。 山の奥から、低い振動音が響いてくる。 ドクン。 ドクン。 まるで巨大な心臓。 ミツコが胸元を押さえた。「……近付いてる……」 すると王がゆっくり彼女を見る。「命紡ぎの力か」「え?」「その力は本来、世界樹の巫女にのみ宿るはずだった」 ミツコは困ったように笑った。「私はそんな立派なものじゃないですよ」「いや」 王が静かに否定する。「お前は既に、“世界に選ばれている”」 トシオが少し眉を寄せた。「……どういう意味だ」 王は答えない。 ただ前を見据えたまま歩き続ける。 やがて一行は巨大空洞へ辿り着
last updateLast Updated : 2026-09-22
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灰雪の王都と、沈黙する巨兵…

 グランディル山岳王国の夜は長い。 吹雪は弱まっていた。 だが空を覆う灰色の雲は消えず、山々の稜線には未だ不穏な黒い裂け目が残っている。 崩壊した封印炉心。 停止した侵食。 それによって大規模暴走こそ食い止められたものの、山脈全域へ広がっていた歪みが完全に消えたわけではなかった。 むしろ――。 眠っていた古代遺構の一部が動き始めていた。「……つまり?」 タマが焚き火の前で首を傾げる。「状況はまだ最悪寄りって事か?」「簡単に言えばそうだ」 巨人王が頷く。 超巨大洞窟。 そこは山岳内部に存在する避難都市だった。 段々状に築かれた石造居住区。 岩壁へ埋め込まれた青白い灯晶。 巨大水路。 そして遥か上空に広がる人工天井。 まるで地下文明。 ミーコ達は現在、巨人族の避難民と共にこの場所へ滞在していた。 炉心暴走による被害は深刻だった。 侵食された巨人達は各地で暴れ、多数の通路が崩壊。 都市機能もかなり損傷している。 だが最悪の事態――山脈全体の封印崩壊だけは防がれた。 その理由の一つが、ミツコに救われた幼い巨人族だった。 現在、その子供は医療区画で眠っている。「名前は分かったの?」 ユキが尋ねる。 巨人王は静かに答えた。「エルガ」 短い名前。「我が一族の王家血統だ」 フィルニアが驚く。「王族!?」「本来は次代の封印継承者だった」 その言葉に空気が重くなる。 封印継承。 つまり。 代々誰かが犠牲になっていたという事だ。 ミツコがそっと目を伏せた。「まだ……子供なのに……」 王は深く息を吐く。「だからこそ、適合率が高かった」 誰も言葉を返せなかった。 重い沈黙。 焚き火の音だけが響く。 すると。「……でもよ」 タマが口を開く。「なんでガキ一人にそんな役目押し付けてんだ?」 巨人王は怒らなかった。 むしろ少し寂しそうに笑った。「我らも最初から望んだ訳ではない」 低い声。「だが、封印炉心は“魂”を必要とした」 ミーコが眉を寄せる。「魂?」「星喰らいは外側から壊せぬ」 王が続ける。「故に内側から抑え込む楔が必要だった」 つまり。 生贄。 しかも永続的な。 フィルニアが舌打ちした。「最悪なシステムだな」「その通りだ」 王は否定しない。「だが数千年、これ
last updateLast Updated : 2026-09-22
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山を砕く海神

 グランディル山岳王国、最深層。 山脈内部そのものが脈動していた。 ズ……ン……。 ズズズズズ……。 巨大過ぎる何かが蠢く度、岩盤が軋み、都市全域へ振動が走る。 避難民達の悲鳴。 崩落。 警鐘。 赤く染まる古代灯火。 終末のような光景だった。 その中心で。 “目”がこちらを見ている。 山より巨大な赤黒い瞳。 それだけで空気が濁る。 精神を圧迫するような威圧。 生物としての格が違う。 ミーコは全身へ冷たい汗を流していた。「……なんなのよ……あれ……」 獣王家の本能が理解してしまっている。 勝てる相手ではない。 生き物の尺度から外れている。 ユキも青ざめていた。「空間そのものが歪んでます……」 フィルニアが奥歯を噛む。「冗談抜きで国崩し級だぞ……」 タマですら笑えなかった。「……デカいとかそういう問題じゃねぇ……」 その時。 巨人王が低く呟く。「完全覚醒まで時間が無い」「どうすりゃ止まる?」 トシオが問う。 王は険しい顔で答えた。「本来なら不可能だ」 短い沈黙。「主核は山脈そのものと融合している。破壊すればグランディル全域が崩落する」「じゃあ放置したら?」「大陸北部が消える」 タマが顔を引き攣らせた。「規模おかしいだろ……」 その時だった。 ミツコがふらりと前へ出る。 彼女の耳には、まだ聞こえていた。 助けを求める声が。『……たすけて……』 幼い。 震えている。 苦しみに擦り切れた声。「……まだ生きてる……」 ミツコが呟く。「この中に……誰かいる……」 巨人王が目を見開いた。「封印核内部の意識体か……?」 すると。 山脈全体へ、再び巨大な振動が走った。 次の瞬間。 岩壁が内側から弾け飛ぶ。 轟音。 崩落。 そして――。 “腕”が現れた。 山を掴めるほど巨大な黒腕。 空間が軋む。 指先が動くだけで岩盤が崩壊していく。「来るぞ!!」 巨人王の怒声。 黒腕が振り下ろされた。 避難都市へ。 直撃すれば数万人規模で終わる。 ミーコ達が動こうとした、その瞬間。 前へ出たのは。 トシオだった。「じーちゃん!?」 ミーコが叫ぶ。 だがトシオは振り返らない。 ゆっくり。 一歩前へ出る。 その背中から、異様な圧力が溢れ始めていた。 空
last updateLast Updated : 2026-09-22
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山に昇る朝日…

 グランディル山岳王国へ、静かな雪が降っていた。 あれほど荒れ狂っていた吹雪は消え、空には淡い青が戻り始めている。 山脈を覆っていた侵食も、ほぼ消滅していた。 崩壊した岩壁。 砕けた古代通路。 焼け焦げた防壁。 戦いの爪痕は深い。 だが――。 山は生きていた。 そして人々も。「おーい! そっち支えろー!!」「岩動かすぞ!!」「医療班こっちだ!」 避難都市では、朝から復旧作業が続いていた。 巨人族達が巨大な岩材を運び、崩れた通路を修復している。 古代巨兵も一部は停止状態のまま回収され、都市外周へ並べられていた。 侵食を受けた者達も、ミツコの浄化と炉心崩壊によって徐々に回復し始めている。 まだ犠牲は大きい。 だが滅びは避けられた。 それだけで奇跡だった。「……平和だなぁ」 タマが伸びをする。 巨大広場の階段へ寝転がりながら、のんびり空を見上げていた。「昨日まで世界終わりそうだったのにな」「アンタ寝てただけでしょ」 ミーコが呆れた顔をする。「ちゃんと戦ったわ!」「途中で岩に埋まってたじゃない」「不可抗力だ!!」 ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人。 ユキが小さく笑った。 その隣では、フィルニアが腕を組みながら難しい顔をしている。「……なぁ」「ん?」「おっさん、どこ行った?」 その言葉で全員が辺りを見回した。 確かに居ない。「じーちゃん?」 ミーコが首を傾げる。 その時だった。 広場の奥から巨大な歓声が響いた。『おおおおおおおおおっ!!』「……?」 一行が顔を見合わせる。 そして音の方へ向かうと――。「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」「すげぇぇぇぇぇぇ!!」「もう一回だ!!」 巨人族達が大騒ぎしていた。 広場中央。 そこでは――。 トシオが巨大岩を持ち上げていた。「……何やってんのあの人」 フィルニアが真顔になる。 トシオは二十メートル級の岩塊を肩へ担ぎながら、「これどこ置きゃいい?」 普通に聞いていた。 周囲の巨人達が大興奮している。「こっちだ兄弟!!」「いやぁ助かる!!」「そのサイズ一人で運べるのか!!」 完全に馴染んでいた。 タマが吹き出す。「なんで巨人族と仲良くなってんだよ!!」 すると。 トシオがこちらへ気付いた。「おう、お前ら起きたか」「起きたかじ
last updateLast Updated : 2026-09-22
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カルド砦の再会騒ぎ…

 グランディル山岳王国を出て二日。 一行は山岳街道の中継拠点、《カルド砦》へ辿り着いていた。 巨大岩盤を削って築かれた山岳要塞。 灰色の石壁。 高い見張り塔。 吊橋。 行き交う商隊。 険しい山道の途中にあるとは思えないほど賑わっている。「うわぁ……」 ユキが目を丸くする。「すごい人ですね……」 砦内部には様々な種族が居た。 獣人。 竜人。 森精族。 鳥人族。 旅人に商隊、傭兵まで入り混じっている。 山岳国家グランディルが閉ざされていた影響で、最近になって交易路が再び活性化したらしい。 そのせいか、以前よりかなり混雑しているようだった。「なんか久々に“街”って感じするわね」 ミーコが周囲を見回す。 グランディルは巨大だったが、閉鎖的だった。 こういう雑多な活気は久しぶりだった。 すると。「肉!!」 タマが即座に屋台へ突撃した。「早っ!?」「鼻が反応した」「犬かアンタは!!」 フィルニアが吹き出す。「いや分かるぞ」「お前もか」 二人揃って屋台へ消えようとする。 ミーコが額を押さえた。「待ちなさい!! まず宿探すのが先!!」「腹減った」「同時進行に決まってんだろ」「なんで食う前提なのよ!!」 いつもの騒ぎだった。 その横で。 トシオが干し肉を見ながら呟く。「高ぇな」「山越え物流やからねぇ」 ミツコが苦笑する。「でも美味しそうやよ?」「む……」 地味に悩むトシオ。 すると店主がニヤリと笑った。「兄さん達、グランディル帰りか?」「ん?」「最近多いんだよ。山開いたって話でな」 どうやら既に噂は広がっているらしい。 タマが串焼きを頬張りながら聞く。「そんな変わったの?」「そりゃあな」 店主が豪快に笑う。「前は“死の山”扱いだったからよ」 ミーコ達は顔を見合わせた。 確かに。 侵食。 封印。 閉鎖。 外から見れば、かなり不気味な土地だったのだろう。 その時だった。 上空から飛竜の鳴き声が響く。 グォォォォォッ!! 砦内が少しざわついた。「帝国竜だ」「軍用か?」 人々が空を見上げる。 三騎の飛竜が砦上空を旋回していた。 漆黒の装甲。 赤い紋章。 ヴォルグラード帝国の正規竜騎兵。 フィルニアが顔をしかめる。「……あ」「知り合い?」 
last updateLast Updated : 2026-09-22
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竜人式歓迎会…

 カルド砦の夜は、思った以上に騒がしかった。 山岳交易路の中継地点というだけあり、夜になっても人の流れが止まらない。 酒場。 露店。 飛竜用厩舎。 鍛冶場。 様々な音が混ざり合い、砦全体がひとつの街みたいになっていた。 その中心で。「飲めぇぇぇぇ!!」「おぉぉぉぉ!!」 タマが既に騒いでいた。「早いのよテンションが!!」 ミーコが怒鳴る。 現在、一行は砦内酒場《黒角亭》へ来ていた。 元々は軽く夕食だけの予定だった。 ……はずだった。「トシオ殿!! もう一勝負だ!!」「おう」 なぜかトシオが巨漢傭兵達と腕相撲大会を始めていた。 ドゴォン!! 机が揺れる。「ぐあぁぁぁ!?」 傭兵が吹っ飛んだ。 周囲から歓声が上がる。「また勝った!!」「何者だあの兄ちゃん!!」「腕どうなってんだ!!」 タマが腹を抱えて笑っている。「じーちゃんまたやってる!!」「アンタ煽るからでしょ!!」 ミーコがツッコむ。 一方。 フィルニアは酒場中央で豪快に肉を焼いていた。「焼けたぞー!!」「なんでお前店側みたいになってんだ」 グランヴェルが呆れる。「こういうのは勢いだ」「意味が分からん」 だが周囲の竜人傭兵達は大盛り上がりだった。「姐さん手際いいな!!」「竜人族だからな!!」「便利な言葉だなそれ」 グランヴェルが苦笑する。 その横では。 ミツコが買い物籠をごそごそ漁っていた。 そして。「はい、追加のお漬物やよ」 普通に大皿を出した。 沈黙。 周囲の客達が止まる。「……え?」「今どっから出した?」「籠の中じゃね?」「いや入る量じゃなかったぞ」 ミーコが苦笑する。「またやってる……」 ユキも小さく笑っていた。 もう慣れた。 だが初見勢は違う。 レオネが真顔で籠を見ていた。「……魔導収納?」「ただの買い物籠やよ?」「絶対違いますよね?」 セレスも静かに籠を見ている。「……以前より増えていませんか」「気のせいやよぉ」「そうは思えません」 その時。 タマが籠を覗き込もうとした。「なぁなぁ、中どうなって――」 ゴッ。「痛ぁ!?」 ミーコの拳が落ちた。「人の鞄覗くんじゃないわよ」「いや気になるだろ!!」「俺も気になる」 グランヴェルまで言い出す。 すると。 
last updateLast Updated : 2026-09-22
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