都心の超高級ホテルのグランドボールルーム。眩いシャンデリアの光が注ぐ会場には、政財界の重鎮や大企業の幹部たちが集い、華やかな歓談の声が響き渡っていた。「鷹司副社長、お見えになりました」ドアマンの案内とともに葵が会場へ足を踏み入れると、一瞬で周囲の視線が集まった。完璧なタキシードを纏った葵の美貌と圧巻のオーラ。そして、その腕にそっと手を添える紬の姿に、会場からどよめきが起こる。仕立ての良いミッドナイトブルーのドレスに身を包み、メガネを外した紬は、誰もが息をのむほど洗練された美しさを放っていた。「あの方、鷹司副社長のお連れの方……?」「なんて綺麗な人……」ひそひそと交わされる感嘆の声。紬は緊張で身体をこわばらせていたが、葵がそっと彼女の手を強く握りしめた。「堂々としていろ。今夜のお前は、会場のどの女よりも美しい」「あ、葵さん……っ」耳元で囁かれた甘い言葉に、紬の頬がカッと熱くなる。葵は周囲に見せつけるように紬の腰へ手を回すと、エスコートしながら会場の奥へと進んだ。だが、その平穏は長くは続かなかった。「やあ、素晴らしい夜だね。……そして、想像以上の美しさだ、紬さん」グラスを片手に現れたのは、神楽蓮だった。漆黒のタキシードに身を包んだ蓮は、胸元を少し崩し、妖艶な笑みを浮かべている。蓮の視線が紬の素顔とドレス姿に注がれると、その瞳がギラリと危険な色に光った。「蓮。お前と交わす言葉はない」葵が即座に紬をかばうように前に出る。しかし、蓮は余裕の笑みを崩さず、葵の脇をすり抜けて紬へと一歩近づいた。「冷たいな、葵。僕は今夜、素晴らしいニュースを持ってきたんだよ」蓮はポケットから一枚の名刺を取り出し、紬の目の前に提示した。「紬さん。君が以前手掛けた国際財務プロジェクトの論文……拝見したよ。実に素晴らしい分析力だ。我が神楽グループでは、君のような本物の才能を求めている。葵の影に隠れているのは勿体ない。……僕の専属アドバイザーとして、僕の元に来ないか?」「え……っ!?」過去の功績を見抜かれていたことに、紬は息をのんだ。蓮の提案は引き抜きであり、同時に紬の隠された才能を正当に評価する言葉でもあった。「断る。彼女は俺の秘書だ」葵の低く殺気立った声が響く。葵の周囲の空気が凍りつき、周囲の歓談がピタリと止まった。だが、蓮はくすりと笑
Last Updated : 2026-09-17 Read more