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All Chapters of 帰巣本能でαはΩへ還る: Chapter 51 - Chapter 60

91 Chapters

51こんな僕を知らないでいて

 ぐちぐちぐち。 嫌な音が耳に入ってくる。 僕の尻穴が溝口の指で犯されている音だ。 車は一度停まったのか、霧島も混ざって僕を押さえつけて行為をしやすいようにしている。「は、う、あ……」 ぐち、ぐち。 ぬちぬち。「ほらほら〜。前立腺を少し弄るだけでこんなにビクビク震えちゃって」「やめろ……っ」 溝口の指で反応してしまう体が嫌だ。 霧島も僕を押さえつけながら、勃起したものを口の中に入れようとてきて心底不快だ。「つーか、あれだな。溝口はこのαをΩにしたくて。で、俺はβになったアイツをΩにしたくて。アイツを呼び出せば纏めて犯せるんじゃね?」 霧島が言う。「あ? お前の番相手βになったの?」「そー。だから薬打ってΩに戻そうとしたらコイツに邪魔されたんだよ。あれ以来会えてねえけど、多分呼び出したらアイツ来ると思うぜ?」 やめろ。呼ぶな。 悠人を巻き込むな。 どうして僕たちの周りには頭のおかしい奴しかいない?「どうだろうな。αに犯されるαがいると知ったら幻滅するんじゃないか?」 溝口が笑う。ズキ、ズキと胸が痛む。「スマホ借りるぜ?」 霧島にスマホを奪われる。そしてカメラをこちらに向けられて。「溝口、犯せ。ビデオ通話ならすっ飛んでくるだろ」 霧島も笑って、スマホを操作して。 やめて。悠人。見ないで。『もしもし奏さん⁉︎ 今どこにいるの⁉︎』 繋がったと同時に、悠人の心配している声が聞こえてしまったら。もう駄目だった。ポロポロと涙がこぼれ落ちてしまう。まだ堪えられると思ったのに、悠人の声を聞いてしまうともう駄目だった。「ふ……う、……ゆうと……っ」『奏さん、奏さん!』「よお山橋。久しぶりだな〜。お前が大事にしているα、別の男に犯されちまうぜ〜?」 ズン、と衝撃。 指が引き抜かれ
last updateLast Updated : 2026-10-11
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52人格否定、再び

「あーあ。やっぱり芦屋は出来損ないのαだったなあ。大事にしたい相手を危険に晒すようなことをして」 犯しながら、溝口が言う。「山橋も可哀想に。好きな人の元へ行ったらΩにされて俺に抱かれるんだ」 霧島も笑いながら言う。「もしかしてあれか! その4Pは寝取られ、みたいな感じになるのか!」「そうそう。お互い好きな人が犯されてるのを見ながら、他の人の番にされる、みたいな」「うーわ地獄だな」 溝口と霧島が今後起こることを説明しては楽しみだと笑う。 何が楽しみだ。ふざけるな。最悪だよ。人の人生をめちゃくちゃにするようなことをしているのに。 悠人は本当に来てしまうのだろうか。 溝口たちの言っている通りに悠人も霧島に組み敷かれて、好き勝手にされてしまうのだろうか。 ……嫌だ。そんなの、僕は嫌だ。 でも僕1人ではどうしようもない。 心無いα2人に好き勝手されるだけだ。 どうして、こんなことに。 溝口はどうして僕にこんなに執着して、霧島も悠人に執着するのか。「早く堕ちた方が楽になるぜ? 俺の番になれ、芦屋」「痛……ッ!」 頸を噛まれる。 何がなんでも他人を自分のものにしようとしている。支配して、番になるまで執着は終わらない。 八方塞がりじゃないか。 こちらはそんなこと望んでいないのに。 αとしての本能なのか。僕は支配したいとは思わない。αとしての本能が薄いのか。 僕じゃ、悠人を守れないのか。 αなのに、大切な人を守れないのか……? ならどうして、僕はαになったのだろう。守るべきものがあるはずなのに、守れないαなんて。 ──存在価値は無いのではないか。「……ッ、く」「どうした芦屋? 少し大人しくなったな。自分自身が能無しだって、やっと気付けたか?」 僕は、能無し。 使えないα。 だか
last updateLast Updated : 2026-10-11
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53霧島と悠人

「まだ抵抗するのか? ……じゃあ、イけよ」「……ッ! あ、ぁぁああッ!」 僕の腰を掴んで、前立腺を抉る。 たちまち体は反応して、嫌なのに頭が真っ白になって絶頂した。射精はしていなかった。ただ体が、とても震えて。「ははっ、中イキしやがった……おら、もっとイけ。たくさんイけ。何も考えられないくらいにイきまくれ。それでさっさと堕ちろ」「堕……ちないッ! 堕ち、ない……」「……チッ」 ぶたれる。それでも睨み続ければ、小刻みに腰を動かして中を刺激してくる。「やめ……やめろ……く、ぅ」「そうだな……霧島、芦屋とヤれ」 溝口がとんでもないことを言う。霧島も「え、いいの?」と乗り気だった。「芦屋を徹底的に犯す。正直お前に回すのは気が乗らないが、心を折らせるためだ。だから霧島の相手も来たら、俺にヤらせろ」「しゃーねえな。わかったよ。よっし、じゃあ芦屋くん? まだへばらないでくれる?」 溝口が一度離れ、息を吐く間もなく霧島のモノが中に入ってくる。嫌だ。気持ち悪い。でも僕が幾ら拒否したところで意味は無い。泣き喚いたって変わらないなら、黙って耐えるしか無い。「……うぅっ」「あー……すっげ、気持ちいい……中がすんげえ熱くて……畝って……」 霧島は恍惚とした表情のまま微動だにせず、目を閉じている。「はは、思い出すわ。……山橋を抱いた時のこと」 ハッとする。そうだ。霧島は悠人を番にしたがっていた。Ωの薬を打とうとしていたαなら、当然。過去にも襲っていたのか。 悠人に、何をした。「あの時もこんな感じだったよ……山橋の中は熱くて気持ちよくて、俺は夢中で腰を振って……あの山橋がギャン泣きしてたの、興奮したんだよなあ……」 悠人。 悠人も、過去に怖い目に。 Ωだから、この霧島に狙われた。「ひどい……αのすることじゃない……」「ひどい? それはこっちのセリフだよ。責任取るって言ってやったのに、アイ
last updateLast Updated : 2026-10-12
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54痛みと恐怖と支配

 陵辱は延々と続いていく。 霧島にも何度も中に出され、そして休む間も無くまた溝口の相手をさせられる。 終わらない。 いつまで続くの。 もう、疲れた。 好きな相手ではないから尚更、心がしんどい。「言うことを聞け」 α2人分の威圧を浴びせられる。 僕もαだから。押し返そうとするけれど。「……っ」 どんどん怖くなって、萎縮して、次第に頭を抱えて「もうやめて」と弱々しく返すしかなくなる。 抵抗しないとなのに。 悠人のためにも、反抗しないといけないのに。薬を打たれても、溝口たちを睨まないといけないのに。 威圧されると、もう駄目だった。ガクガクと恐怖で体が震え「土下座しろ」と言われたら大人しく従うしかなかった。 僕、どうして土下座しているの。 こんなことしないと許してもらえないの。「やっと効いてきたか……散々反抗してくれたな。なんて言うんだ?」「……僕は出来損ないのΩです。ご奉仕するので許してください」「はは。ほら。奉仕しろ」 顔の前に勃起したものを突き出され……目を閉じて口で奉仕する。そんな僕を見て霧島は「すっげー。調教済みじゃん」と感心している。「俺も山橋を調教すればよかったー。アイツ、抵抗しまくってたんだよ。無理やり組み敷くのは興奮したけど」「じゃあこの後仕込めばいい。芦屋を手本にさせるよ」「楽しみだなー」 悠人が被害に遭ったことなんか聞きたくないのに。霧島は平気で僕の前で話していく。「泣き顔がよかった」とか「でも口はずっと悪かった」とか。 僕が知らない悠人だった。 いつも穏やかで、優しい姿しか知らなかったから。 でもそれは、僕に知らないでいてほしい姿だったと思う。だって僕も……こんな姿を見られたくないって思うから。 ……僕たち、随分不遇な思いをしてきている。 2人で静かに、幸せになることを望んでいただけなのに。どうして僕たちの邪魔をするのだろう。
last updateLast Updated : 2026-10-12
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55褒美という名の絶頂地獄

 口で必死に奉仕する。 その間も後ろは霧島が腰を振ってきている。体を揺さぶられながらの奉仕は体がキツい。 監禁されている時は何度もやり直しをされた挙句、射精まで導くことが出来なかった。今回も車の中で奉仕しているが「射精するまで終わらない」と言われ……顎が疲れてきて半泣きな中必死にぺろぺろと舐めていく。「芦屋……段々上手になってきたじゃないか……そろそろ出そうだ……口で受け止めろよ」「ふ、ん……んむ、」「……出る!」 ビュルルッ、と口の中で容赦なく射精される。喉奥を直撃し咳き込むも、溝口のモノが口から離れる気配はない。見上げれば「飲み込めよ」とさも当然のように言われ……飲みたくもない不味いものを、ゴクリと大きな音を立てて飲み込むしかなかった。「げほっ、ごほっ……」「口開けて中を見せろ……ほぉ、しっかり飲み込んだようだな」「……」「よし、ご褒美だ。またたくさん抱いてイかせてやる。もちろんΩになるように薬も打つ」 どのみち僕にとっては地獄でしかない。 また体を押し倒され溝口が中に入ってくる。パン、パン、と大きな音を立てて腰を打ちつけられ、苦しみに顔を歪める。 溝口は全体重をかけてのしかかって来るから、逃げ場がない。奴隷のように犯されるしかなかった。「どうだ……どうだ芦屋。種付けプレスは気持ちいいだろう? お前も遠慮なく絶頂すればいい」「う……ああっ! んんっ!」 苦しみに声を漏らしながら。それでも奥を突かれる不快感と、前立腺を抉られる刺激に否が応でも体は反応して狙った訳でもないのに何度も絶頂してしまう。 何度も、何度も。 もう反応したくないのに。 嫌なのに。 終わらない地獄だ。 苦しい、苦しい……。 僕を気遣う優しい動きじゃないから。 体は熱っているのに、心はどんどん冷え切っていく。(悠人。……本当にこんな僕を見ても幻滅しないでいてくれるの) どんどん自信がなくなっていく。
last updateLast Updated : 2026-10-13
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56おおきくなったら、たすけにいく

 火事になった。両親は死んだ。 僕の手元にあるのは一枚の和紙だけ。 もうすぐこの地元を離れて遠くへ行かなければならない。 何度も夢に見たシーンだ。 大人に連れられて行く時、1人の男の子が泣きながら近づいてくる。「どうして遠くへいっちゃうの」 火事になってしまったから。みんな生きることに必死だから。君もお父さんに目一杯愛してもらってね。「ここにいてよ」 ごめんね。僕を育てられる余裕はこの町には無いみたいだ。「いやだ! 行かないで! ひとりにしないで!」 わがまま言わないの。 泣いてる男の子をそうやって諭す小さい頃の僕がいる。 実際、そうやって僕と悠人は離れ離れになったのだろう。幼かった悠人の記憶には残っていないものだ。僕も……最近の夢で思い出した記憶だ。「大きくなったら、会える?」 それは、わからないよ。「また、会いにきてくれる?」 約束は出来ないよ。だって僕……悠人のこと、何も知らないのに。「ぼくが次はたすけにいく。ぜったいにたすけにいく。だから……大きくなったら、まっていて」 小さい頃の悠人。 僕にそう言ってくれた。 大人になって再会してから、十分助けられているよ。 助けてほしいのは山々だけど。 今は来なくていいよ。 きっと悠人も傷ついてしまうから。 だから、そのまま僕のことを忘れて。 大きくなってね。 小さい悠人に別れを告げ、大人と歩いて行く。「たすけにいく」 小さい悠人が僕の背中に向かって叫ぶ。「だから、助けてって叫んで。ぜったい……ぜったいぜったい、たすけにいく」 子供の僕に対してじゃなくて、大人になって襲われてる僕に言ってくれているような。 これは気絶した僕が見た束の間の夢だ。都合よく小さな悠人が現れただけなはずなのに。
last updateLast Updated : 2026-10-13
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57親父の思い(悠人目線)

「芦屋くんが捕まっていたΩを助けに行ってしまった」と工房に連絡が入ったのは、奏が俺に連絡をくれた直後のことだった。『霧島。マンション。人質』 これだけでも最悪な条件が揃ってしまった。しかし霧島が何故奏に関わってくるのかはわからなかった。霧島は俺を番にしたがっていたから。 奏は過去にαに襲われたことがあるにしろ、安易と捕まるはずがない。仮にもαだ。生身で捕まってしまうのは、やはりその場にいたΩを解放させるための条件だったのだろう。 どうにも俺からは動けずにいたら奏からビデオ通話が来た。……奏がαに襲われている映像だった。『芦屋って奴がΩになるのを見ながら、山橋もΩになるんだよ。そして、それぞれ俺たちの番になる。傑作だろ?』 奏を監禁していたαと、霧島が手を組んで俺たちを陥れようとしている。どうしてそんなことを思いつくのか。 霧島には今いる場所を告げられ『警察にも親父さんにも言うなよ?』と釘を刺されながら『1人で来い』と言われた。 その場に行ったら、もれなく俺は……。 それでも〝行かない〟という選択にはならなかった。どんな地獄が待っていようと、そこに奏がいるのなら。 会いに行きたい、と思ってしまった。 スマホと財布だけを持って工房を飛び出そうとすれば親父に腕を取られる。強い力で工房の中に押し戻され「座っていなさい」と言う。 何。 今それどころじゃないんだ。 奏さんが。 親父も大家から連絡が入ったから状況は知っているはずなのに。「向かうという事は居場所は知ってるんだね? 警察に任せて、悠人は座っていなさい」「……警察には言うなと指示された。もし俺が向かわずに警察が来たと分かったら……奏さんに何があるか……っ」「悠人。警察に任せるんだ」「駄目だよ! 行かないと」 立ちあがろうとすれば親父の強い力で押さえ込まれる。どうして。行ってはいけないの。奏さんがどんな目に遭っているか知ってるよね。「親父! どうして──」「悠人
last updateLast Updated : 2026-10-14
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58電車に揺られて(悠人目線)

霧島に言われた場所は電車を何本か乗り継いで辿り着く都内だった。 俺は今までΩだったこともあって運転が出来ないから電車を使って目的地まで向かう。 最寄りの駅から乗り換えるまではひたすら一本しかない電車で都内へ向かって行く。 乗客が少ない車両の中から遠くなっていく山を見つめる。 (奏さんは、いつもこの電車に乗って会いに来てくれていたんだ) 都内中心までは約50分。長い間電車に揺られることになる。奏は、いつもこの山を眺めていたのだろうか。 (もっと尋ねてみてもよかった。どんな街に住んでいて、山は見えるのかとか。住んでたアパートからは何が見えるのかとか。再会してから、ずっと触れていなかった) 変に話しかけて、嫌な記憶を思い出させてもよくないと思ったから。 というのは、結局建前だ。 (奏さんと一緒になりたいという気持ちの方が強すぎて、過去のことは割とどうでもいいと思っていたな……) 俺はβなのに。 将来Ωと番になって、奏はその相手を守り抜くべき人でもあったのに、俺の恋人になってくれた。 βになってしまったから、一度は諦めようとしたのに。 監禁されていた場所から逃げてきた奏と再会した時、やっぱり手離したくないと思ってしまった。 あの時の奏は本当に弱々しくて、正直心の中で「こんな彼がΩを守ることが出来るのだろうか」と思ってしまっていた。 奏はαだ。実際俺も助けられていた。 でも、それ以降の奏はαにはとても見えなかった。 αなのに。抱いてほしいとせがんできたり。頸を噛んでと頼んだり。 上書きしてほしいのだろうと思っていたけど。 俺には奏が可愛くて可愛くて仕方がなかった。 俺自身もβなのに本能のよう
last updateLast Updated : 2026-10-14
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59ズキズキと痛む頭(悠人目線)

夢を見た。 辺りは真っ赤でとても熱くて、俺の手を引いてる男の子が俺が火傷しないように避難させている、何度も見てきた夢。 小さかった俺は辺り一面が火事になっていてもそこまで恐怖心はなかった。でも俺の手を繋いでいる年上の男の子──奏は、逃げ惑う人々を見つめながら「父さん、母さん」と呟いている。 「父さん、母さん、どこ……っ?」 その声は泣いていた。俺は何が起きているのかもよくわからずに、小さな奏が泣いているのが悲しくて、勝手に涙が溢れてきた。勘違いした奏はハッとして、俺の手を強く握って微笑む。 「心配しないで、大丈夫だよ。お父さんすぐ迎えに来てくれるよ」 奏の両親が見つからなくて心細いだろうに、俺を励ましてくれる。 どうしてそんなに優しいの。奏自身も今とても怖くて傷ついているはずなのに。俺は隣にいることしか出来なかった。 奏の両親が帰って来ることはなかった。若い親父が奏を抱きしめている。「息子を助けてくれてありがとう」と何度も感謝して。 奏は、迎えにきた大人とどこかへ行ってしまうようだった。追いかけて「どこへいくの」と尋ねれば「わからない」と弱々しく返ってる。 「大きくなったら、会える?」 わからない、と返ってきた。 「また、会いにきてくれる?」 わからない、と返ってきた。 弱々しい姿が、監禁された場所から逃げてきた奏の姿と重なる。 「もう、僕のことなんて忘れて」 ふわりと微笑む。 言葉の通り、俺は忘れてしまったから。大人になって夢を見るまで思い出すことがなかった。 忘れちゃだめだと、思った。 俺を助けてくれた人。自分よりも他人を優先してしまう優しい人。 また、自分を犠牲に
last updateLast Updated : 2026-10-15
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60威圧(悠人目線)

 慣れない都会。 一度は上京を考えたこともあったけど、人の波に圧倒されてついていけないことを思い出した。大勢が行き交うホームを少し眺めただけで目眩がし、何とか出口に辿り着く。 ここからは徒歩で奏がいる場所に向かって行く。 α専用のマンションの住所だった。近くになったらまた連絡しろと言われていた。(この大きなマンション、だよな……) セキュリティが高そう。 そもそも俺はちゃんと奏に会えるだろうか。霧島に連絡したところで、霧島だけに会って奏に会えずじまいだったら本末転倒だ。(俺は奏さんを助けに来たんだ。……奏さんは、どこに) マンションを見上げ、睨む。 バチッと、視界がチカチカした。 目を凝らすと、微かに黒く澱んだオーラが見える。……何なのかはわからなかった。でもわからないなりに、あのオーラの元は奏だと思った。今考えているのは奏だけだったから。 マンションの部屋ではない、その付近の駐車場だ。 一目散に駆けつける。 バチバチと、視界がまたチカチカする。何だ。こんな時に体調がおかしいのか。 近づけば近づくほどそのオーラは奏だった。居場所を特定出来る。でもどうして。そんな能力俺にはない。 感じ取るオーラから微かにフェロモンを感じ取る……α、ではない。 焦りと恐怖と絶望の……発情期を起こしたΩのフェロモンだ。 Ωの薬を打たれているのだろうか。 奏は負けない。きっと負けない。 心がそう思っていても、体は限界なのだろうか。 俺はβなのに、心臓がドクドクと脈立ち激しい呼吸になっていく。 まるでΩの発情期に当てられたαのような反応だった。 ……奏は。 Ωになってしまったのだろうか。わからない。焦りが募る。 走って、走って、フェロモンがある場所に辿り着いて。とある車が不自然に動いているのを見つける。(……いる!) 車の中に奏がいる。
last updateLast Updated : 2026-10-15
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