「悠人……?」 何が起こっているのか把握していないようだった。 俺は安心して、奏を手繰り寄せる。「遅くなって、ごめんなさい」 そう呟けば奏は首を振り、静かに涙を流すだけになった。「来ちゃったんだ……」 奏は俺を見て力なく笑う。 やっぱり来てほしくはなかったようだった。 でも、心は助けを求めていたよ。 だから黒いオーラが俺に見えて、居場所がわかったんだよ。 何度も噛まれたであろうボロボロの頸。そっと手で撫でれば奏はビクビクと震える。「父さんと母さんの和紙、ボロボロになっちゃったぁ……」 無理に引っ張られたのか、和紙はビリビリに引き裂かれてしまっていた。 奏の唯一の両親の形見だったのに。彼にはもう何も無くなってしまった。泣きたいのは奏の方なのに、俺の方が胸が苦しくなって目を閉じる。 どうして、こんな酷いことが出来るのか。「悠人と番に、なりたかったなあ……っ」 ポロ、ポロ。 綺麗に笑いながら、涙を溢していく。 俺もだよ。 そう言葉には出来ず、強く抱きしめる。「ひゅ……けほっ、ごほ……からだが、くるしい……っ」 熱に浮かされたようにぼんやりしている。奏から漂う甘い香り。「……ッ!」 俺はβなのに、赤裸々に露出された頸を噛みたくなってしまって、慌てて自身の腕を噛んで耐える。 何が、起こっている。 奏は本当にΩになってしまったのか。 薬で無理やりに。 Ωになってしまったら、今よりも不自由になってしまう。それだけは、阻止したかったのに。「奏さん、病院、行こう……」「……いやだ、こわい。あいつの番になんか、なりたくない……っ」 奏が俺に縋り付いて来る。 本当にそうなってしまったら。 他の人の番になってしまったら。 奏は、俺は
Last Updated : 2026-10-16 Read more