未来は眠りのなかにいたけれど、頭の上で響く低い振動と、耳元をくすぐる声を聞いたような気がした。その声が夢のように胸に刻まれると、未来は彼の肩に頬をもう少し深くうずめ、小さく微笑んだ。ジンヒも、重くなっていくまぶたには勝てなかった。未来の頭の上にそっと自分の頭を預けたまま、静かに目を閉じた。大きな木陰の下で、二人は互いに寄りかかり、春の日の夢を分かち合いながら眠りに落ちた。未来がまつげを震わせて目を開けた。最初に飛び込んできたのは広い男の肩、そして鼻先をかすめる石鹸の香りだった。「あっ……!」自分が彼の肩にもたれて深く眠り込んでいたことに気づいた瞬間、未来は勢いよく体を起こした。頬が破裂しそうなほど熱くなった。「すみません、先生! 私、寝ぼけてつい……肩、すごく痛いですよね?」ジンヒは、目を開けた瞬間からこらえていた優しい笑みを浮かべた。「全然。よく眠れましたか?」彼は未来の頭の上で少し傾いていた紙の帽子を、ちょんと整えてかぶせ直しながら付け加えた。「おかげで僕も、久しぶりに甘い夢を見ました」未来はすとんと視線を落とした。その甘い夢がどんなものだったのか、とても聞き返せないほど胸が高鳴っていた。「ちょっと待っていてください」ジンヒはコンビニへ駆けていった。しばらくして戻ってきた彼の片手には充電された携帯電話が、もう片方の手にはブラボーコーンが二つ握られていた。「次の機会が……思ったより早く来ましたね」「わあ、ブラボーコーンだ!」未来は両手で受け取り、子どものように笑った。ジンヒは携帯電話で車を呼び、画面を確かめた。「車が来るまで、十分くらいかかるそうです」紙の帽子をかぶったままベンチに座り、包み紙をむいてアイスクリームをかじる未来の姿は、まるで餌をついばむおとなしいひな鳥のようだった。ジンヒはその姿をじっと見つめた。もぐもぐと動く赤い唇があまりにもかわいくて、彼の目元が優しく細められた。そのとき、未来の下唇の端に、白いクリームがひとしずくついた。ジンヒが静かに上体をかがめて近づいてきた。ふわりと漂う石鹸の香りとともに、二人の距離が縮まった。このまま口づけされてしまいそうな、目のくらむような錯覚のなかで、未来は思わず息を止めた。けれどジンヒはごくゆっくりと手を伸ばし、親指で未来の下唇の端をそっとなぞった。
Last Updated : 2026-11-02 Read more