蓮と別れたあと、美咲はすぐには家に帰れなかった。駅前のベンチに座ったまま、何度もスマートフォンの画面を見る。最後に蓮から届いたメッセージは、短かった。『明日の夜、時間をもらえますか』その下には、待ち合わせ場所が書かれていた。美咲が以前、蓮と初めて食事をした店だった。そこまで見て、美咲は小さく息を吐いた。あの店では、何も知らなかった。ただ、一緒にいることが嬉しかった。蓮が話す言葉を聞いているだけで、なぜか安心できた。それなのに今は、その記憶さえも少し違って見える。「……神谷蓮じゃなくて、桐谷蓮」口にすると、胸の奥が痛んだ。名前を偽っていた。五年前の事件に関わっていた。そして、事件のあとに何かを隠した。そこまでは分かっている。でも、それ以上は何も分からない。黒崎誠一を殺したのか。殺していないのか。蓮は否定した。けれど、それだけでは安心できなかった。美咲はスマートフォンを握りしめた。「明日、ちゃんと聞こう」誰かに教えてもらうのではなく、自分で聞く。そう決めた。翌日の夜。美咲が店に入ると、蓮はすでに来ていた。
آخر تحديث : 2026-09-23 اقرأ المزيد