高瀬から連絡が来たのは、午後六時を少し過ぎた頃だった。「分かったことがある」 電話越しの声は、いつもより低かった。「地下駐車場に入った車の所有者。五年前の事件当時、俺が一度だけ事情を聞いている」 美咲は思わず姿勢を正した。「どんな人なんですか?」「名前は、黒崎グループの元社員。榊原修一」 聞き慣れない名前だった。「元社員……?」「ああ。事件の少し前に退職している。部署は総務部。黒崎社長とは仕事上の接点があった」 高瀬はそこで一度言葉を切った。「ただ、五年前の捜査では重要人物として扱われなかった」「どうしてですか?」「本人が、事件当日は会社に行っていないと言ったからだ」 美咲の胸に、嫌な感覚が広がった。 事件当日の午後七時五十八分。 黒崎グループ本社の地下駐車場へ入った車。 その車の所有者が、当時の事情聴取で「会社には行っていない」と話していた。「高瀬さん、その人の車だと分かっているんですよね?」「車種とナンバーが一致している。五年前の記録にも残っていた」「じゃあ……嘘をついていたってことですか?」「まだ断定はできない」 高瀬は慎重だった。「車を誰かに貸していた可能性もある。それに、駐車場へ入ったからといって、その人物が殺人に関わっ
آخر تحديث : 2026-10-03 اقرأ المزيد