主寝室のキングサイズのベッドは、私と陽菜が二人で寝てもまだ半分以上余るほどの広さがあった。 シーツからは、微かに玲司の匂いがする。 私は陽菜をベッドに寝かしつけ、掛け布団を首元まで引き上げた。 間接照明だけを残し、私はベッドの端に腰を下ろす。 怒涛のような一日だった。 勤務先で玲司に見つかり、仕事の正体を暴かれ、陽菜の存在を疑われ、挙句の果てに自宅が荒らされ、彼のベッドに座っている。 逃げようとしたのに、結局、彼の手の中に収まってしまった。 バッグの中に入れたままの、彼がサインしたメモ用紙。 あれはただの紙切れだ。彼がその気になれば、いつでも破り捨てることができる。 不安と緊張で神経が昂り、私はまったく眠りにつけそうになかった。 数時間が経っただろうか。 深夜の静寂の中、不意に隣でシーツが擦れる音がした。「……ママ」 陽菜が目をこすりながら起き上がってくる。「どうしたの? トイレ?」「うん」 私は陽菜を抱き上げ、主寝室の中にある広々とした大理石のバスルームへと連れて行った。 用を済ませた陽菜の手を洗わせていると、陽菜がふと、少し開いたままになっていた主寝室の扉の隙間から、リビングの方を覗き込んだ。 そして、私のスカートの裾を軽く引いた。「……ママ」「なに?」「玲司さん、あそこにいるよ」 私はハッとして、陽菜の視線を追った。 真っ暗なリビング。 月明かりだけが差し込む窓際の、黒い革張りのソファ。 そこに、玲司が横たわっていた。 書斎で寝ると言っていたのに、なぜリビングに。 私は音を立てないように、少しだけ扉を開けて覗き込んだ。 玲司は上着を脱ぎ、シャツのボタンを少し開けただけの姿で、ソファに身を横たえていた。 彼の長身にはそのソファは明らかに短すぎた。長い脚を窮屈そうに曲げ、腕を胸の前で組んだまま、静かな寝息を立てている。 主寝室の扉から一番近い、つま
Dernière mise à jour : 2026-09-25 Read More