私は差し出された手を長いこと見つめてから、握った。「きっかり1週間だから」「わかってる」「許可なくキスは禁止」「許可があれば可能?」「最後まで聞いて」律は笑い、私の手を1度強く握った。翌朝、スマホの振動で目が覚めた。[彼氏:起きろ、彼女][彼氏:初デートは10時][彼氏:10時5分までに出てこなければ、寝室開扉を請求する]連絡先の名前まで変わっていた。私はそのまま彼の部屋に突入した。律がシャツのボタンを留めかけて振り向く。「ノック」「私のスマホ、いじった?」「交際開始の記念措置」「不正アクセス」「暗証番号が俺の誕生日の人に言われてもな」ベッドの上の小さなノートを投げてよこす。表紙には『7日間の恋愛規約』とあった。1.1日1回、デートする。2.嫌なことは嫌と言う。3.『男友達』呼び禁止。4.ときめいても隠さない。「4条、誰が同意した?」「15年待った債権者」「恋愛を借金みたいに言わないで」「返済方法は協議可能」ノートを彼の胸に投げた。律は受け止め、ジャケットの内ポケットにしまう。「証拠保管」「連絡先、戻して」何度か画面を触って、渡された。名前は『15年片思い中』になっていた。結局、自分で『一ノ瀬律』に戻した。玄関を出る前、律はカップルの自撮りも1枚必要だとスマホを持ち上げた。私は正面を向き、彼は私を見た。出来上がった写真は、私の顔より、私を見つめる彼の横顔のほうがはっきりしている。「カメラを見なよ」「見たいものを見た」削除しようとして、指が止まった。結局、消す代わりに非公開フォルダへ入れた。初デートの場所は、おしゃれなレストランでも、ホテルのラウンジでもなかった。母校の近くにある、昔ながらの軽食屋。店主のおじさんは、私たちをひと目見て気づいた。「焼きそば1皿で、毎回2時間粘ってたカップルじゃないか」「あのころは付き合ってません」訂正すると、おじさんが律を見た。「片方だけカップルだったのかな」律は否定せず、おでんを2つ追加した。「ここ、まだあったんだ」「前のおばあさんの息子さんが、継いだんだって」律は私の好みどおり、焼きそばの紅生姜を自分のほうへ寄せ、コロッケはソースがかからないよう別皿にした。「こういうところ。あんたと付き合っても、つまらなそうって思ってた」「なんで?」
Zuletzt aktualisiert : 2026-09-17 Mehr lesen