大きな手続きが一段落するまで、10か月以上かかった。家庭裁判所は、親族関係の資料が虚偽であり、実の両親の存在が隠されていたことを確認した。養子縁組と戸籍に関する手続きが進み、悠真の記録は実際の親子関係に沿って訂正された。悠真が暮らす場所は、児童専門家の意見を踏まえ、誠一の家に決まった。誠一は、悠真の学校と病院から遠くない場所へ引っ越した。真っ先に子供部屋を整え、紗月が書いた服薬表を冷蔵庫に貼った。引っ越しの前日まで、紗月は悠真と一緒にいた。服を季節ごとに分け、病院の予約日と食物アレルギー、悪夢を見たときにつけておく常夜灯の明るさまで書き出した。最後の箱には、恐竜のおもちゃが入った。引っ越しの日、悠真は泣くまいとして、唇をぎゅっと結んでいた。「ティラノ、ママの家に置いていっちゃだめ?」「置いておきたい?」「うん。あとで、取りに来られるから」紗月は、緑色のティラノサウルスを1体、本棚の上に残した。「取りに来てもいい?」「先生とおじいちゃんと、相談して約束を決めようね」「ママも、約束して」2人は、小指を絡めた。車が走り出すと、悠真は後ろの窓に手のひらをつけた。紗月も同じように手を上げ、車が角を曲がって見えなくなるまで立っていた。玄関へ戻ると、悠真が脱いだ小さなスリッパの跡が床に残っていた。ずいぶん経ってから、ようやくドアを閉めた。刑事裁判の一審では、恭介と玲奈による文書偽造と、融資詐欺への関与が認められた。虚偽の養子縁組資料と、1億5,000万円の資金の流れも、判決文に記された。和代もまた、養子縁組と贈与の計画に関与した部分について、別途責任を問われた。離婚の判決も、確定した。婚姻関係が破綻した主な責任は、恭介にあるとされた。不倫だけではない。虚偽の不妊診断、実子の存在の隠蔽、偽りの養子縁組、名義を盗用した融資。そのすべてが、判断の根拠になった。1億5,000万円の融資については、紗月に債務が存在しないことを確認する判決が出た。銀行は根抵当権を抹消した。恭介の会社と玲奈へ流れた金は、回収の手続きに入った。紗月は、もう一度、登記事項証明書を取得した。母が遺したビルの権利部乙区から、あの見知らぬ記載が消えていた。【根抵当権抹消】個人信用情報からも、1億5,000万円の債務が消えた。偽の署名によって生じ
Zuletzt aktualisiert : 2026-09-17 Mehr lesen