ユゴンの表情も、少しだけ和らいだ。「そう言いながら、連絡もしないくせに」「忙しかったの」「いつも忙しいって言うじゃん」「本当に忙しかったのよ。韓国に戻ってきてまだ一週間しか経ってないんだから」ユゴンがふっと笑った。母親はそんな息子をしばらく眺めていた。そしてテーブル越しに手を伸ばし、ユゴンの乱れた前髪を整えてやった。「ちょっと顔見せて」「何を見るんだよ」「痩せた?」「痩せてない」「ちゃんとご飯食べてる?」「うん」「大学は?」「ちゃんと行ってる」少し間を置いてから、彼女は何でもないことのように尋ねた。「付き合ってる人は?」ユゴンの眉が上がった。「なんで急に?」「気になるから」「いない」「本当に?」「うん」彼女が意味ありげに笑った。「つまらない生き方してるのね」「母さんにだけは言われたくないけど」「どうして?」「最近、母さんのほうがつまらなそうじゃん」ワイングラスを回していた手が、一瞬だけ止まった。「私が?」「うん」「そんなことないけど」「あるって」彼女は答える代わりに窓の外へ目を向けた。ガラス越しに、南山タワーの明かりがきらめいていた。やがて、何でもないことのように言った。「長いこと持ってたものを、一つ整理したからかしら」「よかったじゃん」ユゴンは大して気にも留めずに答えた。「いらないものは捨てたほうがいいよ」彼女はゆっくりと息子を見た。「……そうね」口元にはまだ笑みが残っていた。けれど不思議なことに、目だけは笑っていなかった。ユゴンは気づかなかった。そのとき、ウェイターが静かにテーブルのそばへ近づいてきた。「本日も、いつもの内容でご用意いたしましょうか?」彼女はメニューを開くこともなく顔を上げた。「ええ。そうしてください」「前菜はキャビア、メインは前回と同じラムでよろしいでしょうか?」「いいえ」彼女は少し考えてから、窓の外を見た。「今日は魚がいいわ。今日入ったもので、何がおすすめ?」「ドーバーソールが大変よろしいです」「じゃあ、それにしてください。バターは少なめで」「かしこまりました」ウェイターは自然にユゴンのほうへ目を向けた。「お坊ちゃまは、前回と同じくフィレでご用意いたしましょうか?」ユゴンはメニューを手に取りかけて、止まった。「俺のも覚えて
Last Updated : 2026-10-11 Read more