この配信騒動の影響はあまりに大きく、昭子がどれだけ手を尽くしても、完全にもみ消すことはできなかった。捜査、起訴、裁判、判決と、すべてが早送りされたかのような速さで進んだ。浩輔は学術不正が認定され、さらに文書偽造や贈賄など複数の罪に問われ、拘禁刑5年の判決を受けた。紗和のほうも、次々と不正が明るみに出た。学部時代の卒業論文の剽窃に加え、元夫と結託した恐喝事件への関与も発覚し、複数の罪に問われた。そして、浩輔よりも重い刑が言い渡された。刑務所での日々は、単調で灰色な、息が詰まるほど規則正しいものだった。けれど、浩輔の体は驚くほどの速さで蝕まれていった。長年の胃潰瘍が悪化し、深夜になると激痛が彼を襲い、体を限界まで丸めさせた。外部で療養することも拒み、ほとんど外部と連絡を取らないまま服役を続けていた。刑務官だけが知っていた。痛みの引いた合間に、彼がよく高い小窓から射し込むひと筋の光を見上げ、小さな声である名を呼んでいたことを。その名は、千夜子だった。服役3年目の、ある冬の夜。何の前触れもなく、これまでのどれより激しい痛みが襲ってきた。浩輔は寝台から床へ転がり落ちた。冷や汗がたちまち囚人服を濡らす。胃を必死に押さえ、歯をがちがちと鳴らしながら、まともな叫び声さえ上げられない。刑務官が発見したとき、彼の意識はすでに朦朧としていた。浩輔はすぐに外部の医療機関へ救急搬送され、そのまま緊急手術を受けることになった。手術室の灯りは、ひと晩じゅう消えなかった。明け方、ようやく灯が消えた。出てきた医師は、待っていた刑務官に向かって静かに首を横に振った。「急性胃穿孔による大量出血で、多臓器不全を起こしました……手遅れでした」彼を看取った刑務官によれば、彼は息を引き取る間際、意識も朦朧としたまま、ある名前を何度も繰り返しつぶやいていたという。呼吸が完全に絶えるまで、ずっと。その名は、千夜子だった。その知らせが大学に届いたとき、千夜子は研究室のミーティングを進行していた。同僚が言葉を選んで伝え終えると、会議室は水を打ったように静まり返り、全員の視線が彼女に集まった。千夜子は落ち着いた表情で手元の資料を閉じ、小さくうなずいた。「わかりました」そして助手のほうを見る。「先ほど話し合っ
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