鋭い耳鳴りが、唐突に頭に響いた。医師の言葉が、また耳の奥で蘇る。「破片が神経を圧迫しています。記憶障害は、今後も進行していくでしょう」彼女は目を閉じ、込み上げる鋭い痛みをこらえ、冷酷な事実を飲み込んだ。その沈黙は、和久の目には無言の抵抗と映ったらしい。彼は吸い殻を揉み消し、苛立ちの滲んだ声で言う。「何度言わせるんだ。麗子とは何もない。あの晩、あいつは高熱を出して一人で寝込んでいた。だから、少しそばにいただけだ。そもそも、お前が我儘を言って飛び出さなければ、俺たちがあの連中に出くわすこともなかった。お前が撃たれることもなかったんだ」彼は立ち上がり、その影が江津子を覆い隠した。「近いうちに、麗子に謝っておけ」謝る?無数の氷の針を心臓に突き刺されたように、痺れるほど痛んだ。銃弾で死にかけた自分が、よりにもよってこの「事故」のきっかけを作った女に頭を下げろというのか。激しい頭痛が、江津子の言い返す最後の気力さえ奪い去っていく。残るのは、果てしない疲労だけだった。「……わかった」自分の声が、やけに空ろに聞こえた。和久は眉をひそめた。いつから、こんなに従順になったのだろう。まるで別人のようにさえ感じられた。考え込む間もなく、彼のそばに置かれた、麗子との連絡用にしている電話が鳴り響いた。麗子との連絡のためだけに使われているその電話は、静まり返った部屋の中でひときわ耳障りだった。彼は急いで受話器を取る。受話器の向こうの声は小さかったが、すぐそばに立っていた江津子の耳にははっきりと届いた。「和久さん、ひどくめまいがするの。また熱が上がってきたみたい」「行ってあげたら?」彼が口を開くより先に、江津子はもう背を向けていた。和久は一瞬固まり、何か言いかけたようだったが、彼女はすでに寝室へ入り、扉を閉めてしまっていた。扉越しにも、彼がすぐさま上着を羽織る気配と、これまで見せたことのないような焦りが伝わってきた。「今すぐ行く。腹減ってないか?食堂で何か食べやすいもの、買っていくよ」慌ただしい足音が、遠ざかっていく。和久が出ていってすぐ、家の電話がまた鳴った。同僚医師である高橋久美(たかはし くみ)の声は、心配を隠しきれていなかった。「江津子、西京市の大学病院の専門医による診察と手術の日程が決
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