封筒の中身は、離婚届受理証明書の写しだった。和久は、役所の公印が押されたその書類を見つめたまま、丸1分、身動きひとつしなかった。やがて彼は書類を床に叩きつけ、掠れた声で叫んだ。「偽物だ。こんなもの、偽物に決まっている!」自分は離婚に同意していない。それなのに、彼女が一方的に離婚などできるはずがない。彼は身をかがめて書類を拾い上げ、震える手で内容を確かめた。届出人、須賀江津子。受理年月日、3日前。その文字を目にした瞬間、和久の呼吸が止まった。そこには、家庭裁判所での離婚調停が不成立となったあと、江津子が離婚訴訟を提起し、離婚を認める判決が確定したこと、その後、江津子から離婚の届出がなされたことが記されていた。「そんなはずは……」和久は呆然と呟いた。「俺は何も同意してない。どうして離婚が成立してるんだ」だが次の瞬間、以前から何度も届いていた家庭裁判所からの書類が脳裏をよぎった。江津子が離婚を申し立てたあとも、和久はまともに取り合わなかった。調停期日の通知が届いても、「どうせ本気じゃない」と目を通さず、出席もしなかった。調停が不成立となり、その後、訴訟に移ってからも同じだった。裁判所から送られてきた書類を、彼はろくに確認しようともしなかった。その結果、自分が無視している間にも、手続きは着々と進んでいたのだ。さらに、江津子の手元には、これまでの経緯を裏づける記録が揃っていた。彼が長年、妻を顧みず、家庭のことを放置してきたこと。麗子を優先し続け、江津子に不当な扱いを重ねてきたこと。そして、彼自身が署名した誓約書まで証拠として提出されていた。それらが、婚姻関係がすでに破綻していることを示す事情として積み重ねられていたのだ。彼女はとうの昔に、見切りをつけていた。自分が気づかなかっただけだ。「江津子……ハ……ハハ」和久は椅子にくずおれ、やりきれない笑いを漏らした。「お前も容赦のない女だな」ふと、ひとつの考えが頭をよぎった。まさか、この5年間の従順さも、献身も、自分のために銃弾の前へ飛び出したことさえも、すべてこの日のためだったのか。自分が十分な「過ち」を重ね、彼女が何もかも捨てて堂々と去っていける、そのときを待っていたというのか。離婚届受理証明書の写しを引き裂こうとし
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