第11話 七年の空白は、思ったより重かった『やっと電話してきたのね』七年ぶりに聞いた高瀬啓子の声は、記憶の中とほとんど変わっていなかった。低く落ち着いていて、必要以上に愛想を振りまかない。それでいて、相手の言葉を途中で切るような冷たさもない。沙耶がホテルグループで働いていた頃、企画書を何度突き返されても最終的にはこの人の席へ持っていったのは、厳しさの向こうに理由があると分かっていたからだった。「……覚えていてくださったんですか」『忘れるほど昔じゃないでしょう。七年くらいで』「私には、かなり昔に感じます」『それはあなたが会社を離れていたからよ。こっちは毎年毎年、新人が入って、辞める人がいて、異動があって、その繰り返し。七年なんて振り返ればあっという間』沙耶はスマートフォンを持ち直した。由香の部屋の床には、古い企画書が広げたままになっている。表紙に書かれた「真壁沙耶」という名前が目に入り、自分が本当に七年前まで働いていたのだということが、ようやく現実味を持ち始めた。「高瀬さん、今も同じ会社に?」『いるわよ。ただ、あなたがいた頃の部署じゃない。今はホテル事業本部で、いくつかの案件を見る側』「そうなんですね」『それで?』昔と同じだった。近況を十分に聞いてから本題へ入る、というタイプではない。高瀬はいつも、必要な話へ最短距離で進む。『真壁さんが七年ぶりに電話してきた理由は何? 昔話がしたくなっただけなら、それはそれで付き合うけど』沙耶は息を吸った。昨日までなら、この一言で逃げていたかもしれない。「仕事に戻りたいと思っています」電話の向こうが静かになった。沙耶は続ける。「まだ離婚は成立していな
최신 업데이트 : 2026-10-10 더 보기