電話を切ったあと、私はテーブルの上に置かれた、すっかりふやけたパスタを、ただ黙って見つめていた。ソースはすっかり冷え、表面には白く固まった脂が浮いていた。その隣には、小さなイチゴのショートケーキが置かれていた。私はパスタの皿を持ってキッチンへ向かい、中身をそのままゴミ箱に捨てた。時計は夜の11時を回っていた。不意に、玄関で物音がした。葉一が入ってきた。そのすぐ後ろから、沙那がぴったりとくっつくようにして入ってきた。「亜沙美さーん、今日はどうして泣かないの?」彼女は葉一の背中からひょこっと顔を覗かせた。葉一の大きな黒いブルゾンを羽織っているせいか、いっそう小柄で無邪気な印象が際立っている。葉一は靴を脱ぎながら顔を上げ、ソファに座る私を一瞥すると、嘲るように口元を歪めた。そのままアイランドキッチンへ歩み寄り、コップに水を注ぎながら気のない調子で言った。「まだ起きてたのか。少しは考え直したか?今ここで素直に謝って、これからは俺の交友関係に口出ししないって約束するなら、買っておいた誕生日プレゼント、渡してやってもいいぞ」私は彼を見つめたまま、何も言わなかった。以前なら、喧嘩のたびに葉一が沙那を連れて現れると、私は決まって泣きわめき、彼を問い詰めていた。そして最後には、彼の冷たい視線に耐えきれず、私のほうが折れて、目を真っ赤にしながら彼に譲歩していたのだ。彼はこの一連の流れを知り尽くしていた。だからもう、私の機嫌を取る気すらなく、ただ高圧的に構えてこちらが折れるのを待っているだけだった。そのとき、部屋の隅から弱々しい鳴き声が聞こえた。7年前、ふたりで迎えたゴールデンレトリバーの「団子」だ。団子ももう年を取り、最近は重い病気を患い、立ち上がるのもやっとだった。それでも葉一の声を聞きつけると、後ろ脚を踏ん張って体を起こし、尻尾を振りながらよろよろと近づいていった。そして、葉一のズボンの裾に鼻先をすり寄せようとした。沙那が甲高い悲鳴を上げ、慌てて葉一の背中に隠れた。「きゃー!葉一くん、この犬、くさい!ノミとかついてるんじゃない?怖いよぉ!」葉一は不快そうに眉をひそめると、ためらうことなく足を振り上げた。「邪魔だ!」もともと弱っていた団子は、その容赦ない蹴りをまともに受け、床に転がった。痛
Mehr lesen