あの頃の私は、まだ若すぎた。どうすればいいのかわからず、ただ、感覚がなくなりそうなほど胸が痛かった。また誤解されるのが怖くて、彼のカードには手をつけられなかった。結局、その1000万円は彼の友人が「貸して」くれた。一晩、酒に付き合うことが条件だった。会員制のクラブで、私は胃から出血するほど飲まされた。夜明け前に迎えに来た直哉の顔は、青ざめていた。帰り道、彼はひと言も話さなかった。家に着いてから、ようやく怒りをぶつけてきた。「俺がもう少し遅かったら、どうなっていたかわかってるのか?そんなに金が大事か。恥ずかしくないのかよ!」浴びせられた言葉に、身の置き場がなかった。胃が痛い。それ以上に、心が冷えきっていた。その日から、「金目当て」「男にたかる女」というレッテルが、私から剥がれることはなかった。友人たちがからかっても、彼は否定しない。時には、一緒になって笑っていた。その後、父は持ちこたえられずに亡くなった。あの日、泣き崩れながら直哉に電話をかけた。何を話しているのか、自分でもわからなかった。会議中だった彼は、電話を切った。それでも音声メッセージを何件も送った。事情を説明し、苦しさを訴えた。ずいぶんたってから、送金メッセージが届いた。【送金がありました】画面には、20,000円。手の震えが止まらず、顔から血の気が引いていった。それ以来、私たちは書類の上では夫婦でも、暮らしの中では他人になった。彼はもう、私のメッセージには何ひとつ答えない。ただお金を送りつけ、私は恥知らずな金目当ての女なのだと、何度も突きつけてきた。それなのに不思議なことに、一度も離婚を口にしなかった。……薬局で薬を受け取り、家に帰った。部屋は冷えきっていた。脚の痛みが激しくなっていく。骨の奥から突き上げ、肉を貫くような痛みだった。震える手で痛み止めを取り出し、睡眠薬も2錠飲んだ。薬はすぐに効き始めた。意識がかすむ中で顔を上げると、壁に掛かった大きな結婚写真が目に入った。直哉は心から楽しそうに笑っていた。その瞳に映っていたのは、陽の光と私。ふたりが一番愛し合っていた頃に撮った写真だ。私の頬を両手で包んで軽くキスをし、彼は笑って言った。「紗夜。一生、大切にするから」一生。なんて軽い嘘だったんだろう。震える指で、トーク画
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